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Jリーグ 5年前

鳥栖が未来を賭けた「劇薬」と「伝説の夜」。社長の“ぶれない姿勢”がJ1残留の分岐点

text by 藤江直人 photo by Getty Images

何度も口にした「最善」の二文字

 森保ジャパンの発足とともに日本代表へ復帰した守護神・権田修一を中心に、守備陣は踏ん張っている。しかし、トーレスや金崎が加入した攻撃陣が機能しない。総得点は常にリーグのワースト1位。再び自動降格圏に沈んだ段階で、あえて3度目の開催を決めた理由はどこにあったのか。

 答えは国際Aマッチウイークに伴い、中断されていたJ1が2日後の10月20日から再開される点にあった。サガンはベガルタ仙台のホームに乗り込むが、実は横浜F・マリノスを下した3月10日の明治安田生命J1リーグ第3節以外、アウェイではひとつも勝ち星をあげていなかった。

 何かを変えなければいけない。残留へ向けて待ったなしの状況だったからこそ、サポーターミーティングを触媒として一体感を高めたかった。ミーティングのテーマを「一丸」ではなく、あえて「一岩」と記した意図がここにある。そして、竹原社長は冒頭から「最善」の二文字を何度も口にした。

「この順位で皆様に不安を与えたことについて、あらためてお詫び申し上げます。2011年から社長をさせていただいて、いつも最善を目指してきた中でこうなったことも皆様にお伝えしたい」

 登壇したフロントスタッフのなかで、竹原社長はただ一人、マイクを手にしていない。遠くまで通ると自負する素声で、通常はメディアルームやインタビュールームで使用する部屋のパーティションが取り払われて生まれた広大なスペースへ詰めかけた、約200人のファンやサポーターに思いの丈を伝えていく。

 たとえば日々の指導からは外れるとホームページ上で公表されながら、去就そのものは協議中とされていたフィッカデンティ監督の処遇。サポーターミーティングの前夜になって、再び指揮を執ってはどうか、と竹原社長が打診したことを含めて、紆余曲折があったと赤裸々に明かしている。

「もめていたのかと聞かれれば、そうじゃない。未来について毎日毎日考えて、毎日毎日議論をして、さまざまな人の意見を交えて出した結論だとお伝えしたい。だから時間がかかった。サガン鳥栖のこれからもそうあるべきだ。常に最善を尽くしていることが伝わらなければ、もっと最善で最高の結果を求めるように、私たちの努力を怠ってはいけないと思っています」

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