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日本代表 5年前

乾貴士が生かすべきロシアW杯での財産。堂安、南野を立てながら…、ベテランが持つ意識

text by 元川悦子 photo by Getty Images

有効活用すべきは過去の財産

 乾が陣取るポジションはこれまで通りの左サイド。その場合、ロシア同様に原口が右に回るケースも出てくるだろうが、基本的には堂安・南野という森保ジャパン攻撃陣の中核メンバーと組む可能性が大。短い準備期間で彼らとベストな関係性を見出すことは、今の乾に課せられた最重要テーマだ。

 同じセレッソ大阪出身の南野も「乾君とは練習で一緒にやったことはありますけど、代表で一緒にやるのは初めて」と語っていて、絡みがほとんどない。堂安に至ってはほぼ初対面だ。

 知らない選手といきなりコンビを構築するのは極めて難易度の高いことだが、本人は「感覚としては合うメンバーだと思ってますし、そういうメンバーを森保さんも集めてやっている。時間がどうこうというのはあまり関係ない」と語気を強めていた。

 長年コンビを組んできた香川真司と共演するようなわけにはいかないだろうが、何とかお互いのよさを引き出し合えるように、乾自身がリードしていくことが肝要だ。そこはテクニックと創造性溢れるクレバーな男に期待するしかない。

 ヨコの関係は未知数な部分も確かにあるが、タテの関係は長友佑都と確固たるものが築けている。それは大きな強みと言っていい。ロシアでも乾が中に絞って、長友が外を駆け上がってチャンスメークする場面が何度も見られ、実際にセネガル戦のゴールにもつながっている。その感覚は2人の間にしっかりと残っているに違いない。

 そういった過去の財産を有効活用することが、短期決戦を制する重要ポイントだ。森保監督がこの緊急事態であえて乾を呼んだ意味はそういうところにもある。

 これまで10年間で岡田武史、アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチ、西野朗という5人の指揮官の下で断続的にプレーしてきた適応力と柔軟性を、森保体制でも示すこと。それが新生ジャパン攻撃陣の化学変化に必ずつながるはずだ。

(取材・文:元川悦子【UAE】)

【了】

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