大迫勇也【写真:Getty Images】
【日本 1-3 カタール AFCアジアカップ2019・決勝】】
日本代表は1日、AFCアジアカップ2019決勝でカタール代表と対戦。1-3で敗れ、2大会ぶり5度目の優勝を逃がした。
この大会では、大迫勇也の重要性が再確認された。
ロシアワールドカップでは日本のベスト16進出に大きく貢献した大迫は、森保一監督体制となってからも最前線で絶大な存在感を放ってきた。迎えた今大会初戦のトルクメニスタン戦。先制を許す展開となったが、後半に大迫が2ゴールを連取。貫禄のプレーで逆転勝利を呼び込んだ。
しかし、その後3試合を右でん部痛のため欠場することに。森保ジャパンは苦しみながら勝利を重ねたが、大迫不在の深刻さを痛感する3試合でもあった。セカンドトップ型の北川航也は相手を背負ってのプレーを強いられて埋没。武藤嘉紀はウズベキスタン戦で得点を挙げるなど光るパフォーマンスを見せたが、周囲も輝かせる大迫のような働きを示せたとは言い難い。
準々決勝のベトナム戦では後半途中から大迫が復帰。得点こそ生まれなかったが、背番号15が入ったことで攻撃の迫力は増した。スタメン出場したイランとの準決勝では、2得点を奪う活躍で『アジア最強』と言われる難敵を倒している。カタール戦では相手の徹底マークに遭うと、チームの攻撃もトーンダウン。勝っても負けても、大迫の重要性が色濃く映る大会となった。
『大迫依存』と言っていいだろう。依存というと印象が悪いかもしれないが、ポジティブな意味で捉えたい。一人のセンターフォワードの存在がチームに大きな影響を及ぼしたという点で、過去の日本代表であまり見られなかった現象だからだ。
日本サッカーが世界に進出した1990年代後半以降、代表チームは中田英寿、中村俊輔、本田圭佑といった選手たちが勝利の鍵を握ってきた。日本は中盤に優れた選手が多く生まれており、彼ら以外にも実力者がズラリと並ぶ。
もちろん、かつても高原直泰、久保竜彦、岡崎慎司など信頼できるストライカーはいた。だが、中盤の顔ぶれと比べると絶対的な存在といえるほどのインパクトはなく、「ストライカー不足」と嘆かれ続けた。
現代サッカーにおいて、いわゆるファンタジスタ、パサー型のトップ下というタイプは希少種。日本でも中盤でタクトを振るい、ワンプレーで局面を激変させ、大事なところで決定的な仕事を遂行するミッドフィルダーは減っている。
相手より多くのゴールを奪わなければ勝てない以上、ストライカーの重要度が高くなるのは当然。その意味でも、大迫勇也に依存する日本代表の現状は決して悲観すべきことではない。むしろこの事実は日本にとって収穫と言えるはずだ。
【了】