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日本代表 5年前

日本代表に足りない「対応力」。アジアカップ決勝で完敗…ベンチから見えていたその先の景色

text by 舩木渉 photo by Getty Images

乾貴士がベンチで見たもの

乾貴士
乾貴士はアジアカップ準優勝の悔しさを味わい、新たな決意を抱いて表彰台にのぼった【写真:Getty Images】

 特に毎日練習できるクラブとは違い、毎回異なるメンバーが短期間で集まって次の試合に向けた準備の時間も限られる代表チームでは、対戦相手のスカウティングが十分できていてもピッチ上に落とし込める情報量に限りがある。

 もちろんアジアカップやワールドカップのような大会は長期合宿を組むことができて、チームの幹になる部分を徐々に高められるのは間違いないが、毎試合の準備に追われて枝葉を繁らせるだけの時間を十分に取れないことに変わりはない。

 カタール戦でもベンチメンバーは修正すべき点がよく見えていた。乾貴士は「2トップが3バックを見ちゃっていたので、それだと絶対にハマらない。そうじゃなくて(原口)元気と(堂安)律がウィングにつくのではなく、もうちょっとセンターバックを見る。けん制するでもいいですし、べったりつく必要はないですけど、そこでFWを助けてあげないと、絶対ああいう感じになっちゃう」と指摘していた。

 もう1つ、「(アンカーの)23番を(南野)拓実が見る。センターバックの真ん中か、どっちかをサコ(大迫)が見る形を取らないと。そうなると相手も厳しくなって蹴ってくるので、後ろも狙いやすくなる。あそこまでフリーで後手後手に回った状態だとやっぱり技術もある相手なので、そういうところで、かなり厳しくなっちゃっていた」とも。

 だが「それは見ていて分かっていたんですけど、外から指示も出せなかった」のである。一部の選手に伝えて何かを変えさせても、それがチーム全体に共通認識として伝わっていなければ、今度はやり方を変えてズレを作ったその選手が危険なスペースを相手に与えることにもなってしまう。

 監督ではなくベンチメンバーから戦術変更を指示すれば、越権行為にもなりかねない。ゆえに乾はためらった。試合を終えて「もっと言うべきだったかなって。2失点目の前にもっと言っておけばよかった。ベンチメンバーも含め、そういうところが甘かったのかなという感じがする」と乾は話した。最終的にためらいは後悔に変わった。

 改めてサッカーの難しさを痛感させられた。戦術はカードの出し合いなので、手札が最初になくなった方が負ける。カタールが大会を通して複数のシステムを使い分けながら、試合の中でも可変式で戦えたのには、ユース年代から同じ哲学のもとでプレーしているが故のベースの確かさがある。次の試合までの準備にかけられる時間が短くても、基本となる部分に対戦相手に合わせた策を紐づけていきやすい。

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