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いわきFCの育成革命(後編)。中学生年代は体育からやり直し、地域の社会的問題解決も視野に【いわきFCの果てなき夢】

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Editorial Staff

「人間はまったく必要のないものを捨てて退化していく生き物」

 スタート当初から大盛況となったISAAは、転んでも痛くはない人工芝のフィールドで、子どもたちが走る、投げる、捕る、つかむといったスポーツの基本的な動きに笑顔を浮かべ、歓声をあげながら取り組んでいる。若年層の段階でさまざまな運動体験を積むことが、スポーツ万能な子どもを育てるうえでの最も重要なノウハウとなる。もちろん、これも小俣氏のアイデアだ。

「子どものころにいろいろな体験をすると、そのたびに神経のネットワークが作られていきます。神経ネットワークとは体を動かすことによって体の中に作られ、張られていくものです。神経ネットワークをそのまま持って大人になれば、さまざまな種類のネットワークをいろいろと使い回しながら、いろいろな運動ができる。

 結局、いまは子どものころの体験そのものが少なくなっている。人間はまったく必要のないものを捨てて退化していく生き物です。いまの子どもたちは運動もせずにいつもスマートフォンばかりいじっていますけど、必要ないと判断されればどんどん捨てられていくので」

 同じアプローチをアカデミーの子どもたちにも導入した。サッカークラブのアカデミーを謳いながら、発足からしばらくは、週に2回はボールをいっさい使わないプログラムを組んだ。

「サッカーの育成カテゴリーですので、将来的にはプロのサッカー選手になってほしい、というのが前提です。ただ、中学生年代に関しては体育からのやり直しをさせています。実は体力テストを応用した育成診断テストを実施してみたら、全員が全国平均よりも低かったんですよ。なので、サッカーとはまったく関係なく、まずは体を自在に動かすための体力運動能力の養成から取り組んできました」

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