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なぜ、マンCはまたも敗れたのか? 狂わせたトッテナムの“自殺行為”。激戦の戦術を紐解く

text by 内藤秀明 photo by Getty Images

何故、ポチェッティーノ監督は“自殺行為”を?

フェルナンド・ジョレンテ
マウリシオ・ポチェッティーノ監督(右)は強気な采配でトッテナムを導いた【写真:Getty Images】

 それでもポチェッティーノ監督がこのシステムを採用したのは、クリスティアン・エリクセン、ルーカス・モウラ、ソン・フンミンの3人を高い位置に残すことができるからだろう。彼らは3人だけで十分カウンターを完結できるクオリティを持っている。

 では何故そこまでしてリスクを冒したのかというと、スパーズとしてはロースコアゲームを避けたかったのだろう。

 スパーズはある程度スペースを埋めている相手を崩すことは得意ではなく、スペースがあって輝くカウンター型のチームだ。実際にプレミアリーグBIG6の中ではカウンターからのゴールの割合が最も高いスタッツも出ている。しかもこの日の中盤には展開力のあるハリー・ウィンクスが負傷でおらず、守備的なビクター・ワニャマを起用している。パスワークで崩し切る可能性は普段以上に低い。

 一方、普通に試合が進めばシティはアウェイゴールを許さないように前がかりになり過ぎず、ポゼッションしながらゴールを目指す可能性が高かった。今のシティなら自分たちのリズムで進めれば、前線に人数をかけすぎずとも、個の優位性だけでも得点をとる力もある。

 1点差を守り抜く力がないのであれば、スローな展開はスパーズにとって不利だ。

 であるならいっそ、「1点とられてもまだ同点」というリスクを犯せる状況を生かし、リスキーな戦術でアウェイゴールをとりにいったのだろう。

 結果、ポチェッティーノ監督はシティに先制されるという計算外はありつつも賭けに勝った。

 1点目も2点目もアイメリク・ラポルテのミスではあるのだが、前線に人数を集めるポチェッティーノのリスキーな采配があったからこそ生まれたゴールでもあった。こうして見事アウェイゴールを手にすることに成功した。

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