あの夜、齊藤未月が涙したわけ。湘南・曹監督が導いた真の姿。U-20W杯へ、主将の覚悟

2019年05月22日(Wed)10時00分配信

text by 藤江直人 photo Getty Images
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自らの長所を磨くという意味

 そして、トルコキャンプがスタートしてすぐに、齊藤は勇気を振り絞って白石コーチに思いの丈を訴えた。20歳になったばかりのホープが抱える悩みは指揮官へ伝えられ、すぐに話し合いの場が設けられた。そして、曹監督は直球をど真ん中へ投げ込んできた。

「オフの間に『こういうプレーを覚えないと次のステージにはいけない』とか、いろいろなことを言われれば、若い選手には色気も出てくると思う。ただ、人間とは面白いもので、自分の一番得意なものをさらに極めようとすれば、苦手なもののレベルも自然と上がってくる。逆に苦手なことばかりを自分に課してよくしようとしても、脳の新皮質の部分に刺激を与えるだけで習慣にはならないので」

 齊藤に問いかけた「方向性、間違っていないか」の意味を、曹監督はこう説明してくれた。齊藤の最大のストロングポイントは、身長165cm体重61kgの小柄な体に搭載された、無尽蔵のスタミナを駆使して相手にプレッシャーをかけ続け、潰しまくり、ボールを刈り取る仕事となる。

 小学生年代のジュニアからベルマーレひと筋で心技体を鍛えながら、トップチームに宿り、試合を重ねるごとに激しい鼓動を奏でてきた「湘南スタイル」を間近で見てきた。ゆえに指揮を執って8シーズン目になる曹監督も、齊藤を「湘南のDNAが宿っている」と表現したことがある。

 指揮官をして「ヨーロッパにいっても十分に通用する」と目を細めさせたボール奪取術は、齊藤のアイデンティティーであり、目指している理想の選手像へ最短距離で近づくための手段でもあった。自らの存在価値を、齊藤は明確かつ力強い口調でこう表現したことがある。

「試合で他の味方が1回ボールを奪うところで、自分は3回でも4回でも奪わなければいけない。そこは誰にも負けたくないし、絶対にマストでやらなきゃいけないし、常に試合で出さなければピッチに立つ資格もない。あの選手がいるから勝てる、という存在も大事だと思う。それでも、あの選手がいるから頑張れる、という存在も必要だし、湘南のアカデミーはそういう選手を育成しているので」

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