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Jリーグ 5年前

あの夜、齊藤未月が涙したわけ。湘南・曹監督が導いた真の姿。U-20W杯へ、主将の覚悟

text by 藤江直人 photo by Getty Images

自分自身を取り戻した齋藤がどのような活躍を見せるか

齊藤未月
23日にポーランドで開幕するU-20W杯。齊藤はU-20日本代表を主将として牽引し、チームをより高い場所へと導けるか【写真:Getty Images】

 背番号は「10」を託された。キャプテンで、なおかつエースナンバー。それでも、一度どん底を味わったホープが浮き足立つことはない。憧れるフランス代表のボールハンター、エンゴロ・カンテ(チェルシー)の名前をあげながら「カンテが10番をつけてプレーしている、と思って見てくれたら嬉しい」と人懐こい笑顔を浮かべた。

「日本代表の新しい10番のプレーを見せたい。安部ちゃんがいれば彼の背番号だったと思うし、だからこそ違う10番像を見せたいと思っています」

 安部ちゃんとは、鹿島アントラーズでも今シーズンから「10番」を背負うMF安部裕葵。GK大迫敬介(サンフレッチェ広島)、そしてMF久保建英(FC東京)ともに選外となり、コパ・アメリカに臨むフル代表に抜擢されることが濃厚となった盟友たちへ届けとばかりに、U-20日本代表は自分が背中で引っ張っていくと前を見すえた。

「U-20代表から選手が抜かれたとか、いろいろと言われていますけど、選ばれた21人がベストメンバーだと僕は思っているので」

 代表チームはすでに14日に開催国ポーランドに入り、17日には最終調整としてU-20コロンビア代表と対戦。自由交代制で数多くのメンバーが起用されたなかで1-2の逆転負けを喫したが、開始7分に先制ゴールを豪快に叩き込んだのは齊藤だった。

「それほど上手い選手じゃないけど、あの年齢でチームの結果に対する責任を背負いながら走る、競り合う、ボールを奪うといったプレーを高いレベルで実践できる選手は上手さに匹敵するし、それ以上にいま現在のサッカーで求められる選手でもあると思う。違った特徴をもっているあいつが、肉体的な特徴をもつ外国勢とあたったときにどうなるのか。必ず自分のなかへ入ってくるものがあると思う」

 日本時間24日未明に行われるU-20エクアドル代表とのグループリーグ初戦へ向けて、すでにチームとともに会場のビドゴシュチュ入りしている齊藤へ曹監督はエールを送る。

 同26日のU-20メキシコ代表との第2戦、同30日のU-20イタリア代表との第3戦、さらにその先に続く戦いへ。アンタルヤの夜に流した涙とともに自分自身を取り戻した齊藤は、前だけを見すえて世界へと挑む。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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