「戦術・中島翔哉」とも言える存在感も…
彼がそういうプレーを具現化できたのも、周囲のサポートがあったから。3-4-2-1布陣の場合、前線のアタッカーが1枚減るため、どうしても攻めの枚数が足りない状況が起きがちだ。
その分、個の打開力がより一層求められるのだが、そこでカギになるのがウイングバックの気の利いた動き。左サイドに陣取った長友佑都は中島をフリーにさせることを第一に考え、4-5-1布陣で挑んできたトリニダード・トバゴの右サイドバックのマークを引き寄せる試みを繰り返す。それが奏功したことで、中島がフィニッシュに行ける回数が増えたのは確かだろう。
「翔哉に入った時にスイッチを入れるところだったり、無駄走りでもいいから走るところを意識した。それで翔哉が打開出来てシュートに持ち込めるんで、そういうシーンは何度か作れたんじゃないかなと。彼はクオリティ含めてトップクラスの実力があるんで、僕がタイミングよく走れたら使ってもらえるし、逆に自分をおとりに使いながら、マークをはがしてシュートまで持って行ける。そこは大きかった」と長友も手ごたえをつかんでいた。
こうして中島翔哉自体が1つの戦術になっていたと言えるほどの「違い」を示したわけだが、結果的にはノーゴール。チーム自体も不本意なスコアレスドローを余儀なくされた。
シュート数25対5、ボール支配率も60.7%対39.3%というデータの通り、相手を大きく上回ったにも関わらず、勝ち切れなかった。その一戦は、シュート数23対3本で0-0に終わった2015年6月のロシアワールドカップアジア2次予選・シンガポール戦を彷彿させるものがあった。
アジアの格下は自陣に引いて守って強固な守備ブロックを形成してくるケースが多く、9月から始まる2022年カタールワールドカップ予選でも似たような状況が出てくるだろう。