久保建英にはなぜボールも人も集まるのか? 代表デビュー戦で見せたカリスマ性と3年の取材で見た確かな成長

日本代表は9日、国際親善試合でエルサルバドル代表に2-0の勝利を収めた。この試合では、久保建英が史上2番目の若さで日本代表デビューを飾った。大きな注目を浴びていた若き至宝の存在感はすでに別格。驚異の18歳が初めての代表戦で見せたプレーには、その場にふさわしい巧さと賢さ、そして華やかさがあった。(取材・文:舩木渉)

2019年06月10日(Mon)12時57分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
Tags: , , , , , ,

大歓声に包まれて迎えた日本代表デビュー

久保建英
久保建英が史上2番目の若さで日本代表デビューを飾った【写真:Getty Images】

 ウォーミングアップを切り上げてベンチに戻るだけでスタジアムが大歓声に包まれる。テレビ中継では“専用カメラ”が用意され、ピッチに立つとJリーグでおなじみになった応援歌が鳴り響く。10代の選手の日本代表デビューとして、これだけのステージが用意されたことは過去にどれほどあっただろうか。

「アップの時とか、ベンチばかりカメラがあってちょっと気まずかったですけど、結果的にデビューできたのでよかったです」

 ひとめぼれスタジアム宮城での試合を終えてすぐのフラッシュインタビュー。緊張の糸が緩んだのか、久保建英の第一声には彼なりのジョークも挟む余裕があった。18歳と5日での日本代表デビューは史上2番目の若さだった。

 5日のトリニダード・トバゴ戦はベンチ外となって出番なし。その時、日本代表の森保一監督は「彼は18歳になったばかりで、シーズン通してチームをけん引するようなプレーを続けてきて、そして今、移籍報道等いろいろなプレッシャーがかかってきている中、少し緊張の糸を緩めながら先に進んでいったほうがいいのかなという思いは持って、彼を呼んでいます」と久保への期待を感じながらも、起用には慎重な姿勢を見せていた。

 ところが9日のエルサルバドル戦を前にした記者会見では、「これまでの彼の練習、昨日の練習を見る限り、調子も間違いなくいいですし、このグループの中に入っても間違いなく力を発揮できることを見せてくれていますので、何が起こるかわからないので断言はできませんが、メンバーには間違いなく入って、プレーする機会もあるかと思っています」と実力を高く評価した上でベンチ入りを示唆。A代表デビューが大きく近づいた。

 そうして迎えた67分、ついにその時がやってきた。試合開始時は3バックだった布陣は、59分に3人の交代によって4バックに変わっており、久保が入ったポジションはトップ下。大迫勇也のすぐ後ろに、南野拓実との交代で入ることとなった。

「ピッチに送り出す時の指示は、ポジションのことを、トップ下に入るよと言っただけで。攻撃で起点になること、2-0でリードしている状況で入ったので、守備の部分も前線から頑張って走るということは伝えました。よく覚えていないですけど、思い切ってプレーして欲しいなという思いはありました」

賢さが光った攻守にわたる貢献

 久保を送り出す際、森保監督の指示はシンプルだったという。とはいえコーチ陣と何やら細かく確認し、久保もギリギリまで後ろを振り返りながら身振り手振りを交えてベンチと会話している姿を、試合後に確認した中継映像で見ることができた。

 ピッチに立った久保は、とても初めての日本代表戦とは思えない落ち着きで、これまでもずっとチームにいたかのような貫禄を醸し出していた。トップ下で周囲と絶妙な距離感を保ちながらボールに絡んでいく。大迫との関係性も良く、常に首を振って状況を把握しながら守備にも全力で走る。18歳のプレーヤーが25分ほどの出場時間の中で確かな存在感を発揮した。

 ここで印象的だった久保のプレーをいくつか振り返ってみたい。基本的には「何でもできるというか、ボールを収められるし、前も向けるしということで、あんな選手が横にいたらやりやすいというのが素直な気持ち」と実感した大迫のやや右斜め後ろ、4-1-4-1で構える相手のアンカー脇のスペースにポジションを取った久保は、そのギャップを有効活用していた。

 例えば68分4秒、大迫が下がって立ち位置を入れ替え、前述したスペースで小林祐希からの縦パスを引き出し、左足のワンタッチで堂安律にはたく。そのまま自分は一気にディフェンスラインの背後のウペースを狙った。ここではすぐにボールが相手に奪われてしまったが、久保のプレーの連続性と崩しのビジョンは卓越していた。

 攻撃時、中央ならできるだけシンプルに少ないタッチで、サイなまら大胆にドリブルを織り交ぜながらボールとともに前進する。どこでボールを失ったら危険なのか、あるいは相手のどこに隙があるのかを的確に判断していた。

 ハイライトは72分31秒の場面。久保は味方のクリアボールを収めた大迫が前を向いた瞬間に走り出し、前に出てきた左センターバックの背後を突いて裏のスペースへ。そこでスルーパスを引き出し、右サイドをドリブルで運ぶ。カバーに来た左サイドバックと右センターバックの動きのベクトルを利用して2人間に左足アウトサイドで触ってボールを流し、ペナルティエリア右角から左足で低く鋭いシュートを放つ。GKが正面でこぼすほどの強烈な一発。そのまま守備に切り替えて逆サイドの選手にプレスをかけてカウンター阻止までして見せた。

上々の25分間。A代表レベルを証明

久保建英
久保建英は相手を引きずる力強いドリブルも見せた【写真:Getty Images】

 83分7秒には右サイドでボールを受け、左足の裏でコントロールして一瞬ためてオーバーラップした室屋の前にスルーパス。奪われそうになると久保はすぐにポジションを取り直して、相手の前に立ってクリアボールをカットしている。このように状況や立ち位置に応じてプレーの判断を変え、ゴールへのイメージを描きながらも、ボールを失った場合のリスクも考慮した賢さは18歳の選手とは思えないほどだった。

 淀みない動きと軽快な足さばき、判断の正確さが光ったプレーは他にもある。73分22秒、前線からすっと降りた久保は小林の左に寄り、ワンタッチパスで右の室屋成へ展開。FC東京でもチームメイトの右サイドバックからのクロスで大迫のヘディングシュートにつながった。

 こうした攻撃面での貢献のみならず、守備面での献身性も光った。攻守の切り替えがスムーズで、ポジショニングやプレッシングをかける角度も絶妙。何度か前線でボールも奪っている。最初に目立ったプレーは68分58秒、プレッシングの1人目として飛び出し、一気にスピードアップして相手右サイドバックのプレーの選択肢を奪った場面だった。ここではプレスをかける際の緩急が相手を驚かせただろう。

 75分41秒には相手のバックパスに対して、大迫が左センターバックの内側から寄せる。そこで相手は縦パスを入れるが、受け手がマークを背負っているのを見ると、久保は内側に立って次のパスコースをけん制する。そしてコントロールが乱れたところでボールを奪った。そこからのカウンター攻撃は、相手DFにゴールライン上でブロックされた大迫のシュートまでつながった。

 また、フィジカル面での成長も代表戦のレベルで十分に通用することを証明した。82分3秒、久保はバックパスを受けた相手選手の背後から一気にスプリントをかけてボールを奪い、ドリブル開始。すぐにファウルで止められたが、手をかけられても倒れず突き進もうとした姿はたくましかった。

 もちろん相手が多少レベルの落ちるエルサルバドルで、プレー強度の落ちていた後半途中からの出場、さらにクラブや世代別代表で一緒に戦った経験のある選手が周りに揃っていたことは考慮すべきだろう。だが、それでも久保の一連のプレーは18歳の代表デビュー戦としては上々と言っていい。

森保監督もデビュー戦に高評価

久保建英
久保建英の周りには自然と人が集まってくる【写真:Getty Images】

 森保監督は試合後に「のびのびと自分の特徴を生かしてプレーしてくれたのかなと思いますし、周りの選手とも試合の中でのプレー機会は初めてでしたが、スムーズに連係・連動できる彼の持っている技術や賢さという部分は出ていた」と久保のデビュー戦のプレーを高く評価した。

 とはいえ本人は「(堂安)律くんはU-20代表でやっていて、だいたいどういうプレーというのはわかりますし、それこそ(室屋)成くんは(FC東京の)同じサイドでコンビを組んでいるので、そういう特徴がよりわかりやすい選手と最初にボールを使ってコミュニケーションを取れたのはよかった」と、周りに理解者が多く、それが好プレーに繋がったことを冷静に認めている。

 今回の代表合宿では初招集ということもあって、A代表デビューに向けてメディアやファンから大きな注目を浴びた。彼にとって、これまでJリーグで浴びて来たスポットライトとはまた違ったプレッシャーを感じていたかもしれない。

 だが、今後は立派な1人の日本代表選手として期待やプレッシャーを背負って戦っていかなければならない。18歳で身体的に完成しておらず、精神面のバランスが崩れやすい年齢だとしても、実質プロ3年目の選手と考えれば特別扱いすべきではないのかもしれない。

将来の飛躍を確信するスター性

久保建英
久保建英の可能性は無限大だ【写真:Getty Images】

 日本代表の中心選手として輝いていくには、誇りを持って戦う一方でこれまでとは比べものにならない重圧と責任感を背負い、時に想像を絶する困難を乗り越えていかなければならないからだ。それはA代表デビューが早かろうと遅かろうと、誰もが直面する現実だ。

 久保自身も日本代表デビューについて「あんまり実感ないですけど、これから先、大きくなって、自慢できることの1つになるのかな」と18歳らしさも見せながらも、「最初はみんなも気を遣ってくれるというか、小林選手とか何度もいいパスをくれて、冨安選手もパスをくれて、気持ちよくプレーさせてくれる意図も感じました。そうやって助けてもらえるのはすごくいいことだと思いますけど、これからは試合に向けてやっているので、そういうことに甘えず、自分の力だけで良いプレーを出せるようにがんばるだけかなと思います」と語る。我々が心配せずとも、すでに覚悟は決まっているようだ。

 3年半ほど久保を取材してきて、毎日ずっと見ているわけではないが、それでも彼の確実な成長を感じる。それは身長が伸びただとか、顔が大人びただとか、そういった身体的なものだけではない。左足のテクニックやシュートはどんどん鋭さを増していくし、メンタル面でも大人の選手に負けないタフさと自信がみなぎるようになってきた。元チームメイトたちも、代表合宿で久々に再会した後輩の進化に目を見張っていた。

 すでにトップレベルの試合の中でも豊富なアイディアと正確な状況判断をプレーで表現できる久保の姿は本当に頼もしい。次世代の日本代表を背負う逸材には、18歳にしてそうなるにふさわしい驚異的なカリスマ性も垣間見え始めている。代表合宿中の練習では、周りにいつも海外組の中心選手たちがいた。久保の方から入り込んでいったのかもしれないが、ごく自然にその輪の中にいる。彼が人を惹きつける不思議な魅力のある選手なのは間違いない。

「今日は自分にチャンスがあったのに決めきれなかったので、コパ・アメリカではしっかりゴールを取りたいと思います」

 そう力強く宣言した久保。これから参戦するコパ・アメリカで、次は本気の南米を驚かせる「ゴール」に期待したい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

新着記事

↑top