サンフレッチェ、青山敏弘の復帰が意味するもの。J屈指の司令塔が生む効果、その先に見える栄冠

明治安田生命J1リーグ第23節、FC東京対サンフレッチェ広島が17日に行われ、広島が1-0で勝利した。中盤の構成力で上回る広島はFC東京を自陣に押し込むと、後半12分から登場したMF青山敏弘が存在感を見せる。同16分のMF柏好文のゴールに絡むと、ロスタイムにも技ありのスルーパスを通すなど活躍した。上位進出、そして逆転優勝に向け、半年近くにも及ぶ、けがから復帰した司令塔がもたらす効果とは。(取材・文:下河原基弘)

2019年08月21日(Wed)11時25分配信

シリーズ:週刊Jリーグ通信
text by 下河原基弘 photo Getty Images
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青山投入で増した広島の勢い

青山敏弘
サンフレッチェ広島のMF青山敏弘【写真:Getty Images】

 途中出場から、わずか4分後の出来事だった。後半12分からピッチに立ったMF青山敏弘は、中盤の空いたスペースに顔を出してパスを受けると、左サイドに開いていたMF柏好文に鋭くボールを出す。受けた背番号18は、MF川辺駿が相手サイドバックの裏に走りこむのを見逃さずパスを出すと、そのまま一気にスピードアップしてペナルティーエリア内に侵入。リターンを受けると、タイミングをずらしてニアに打ち込み、決勝点をたたき出した。

「先にカードを切られた、あの時間帯を0でおさえれば、逆に今度ジャエルや三田を入れてチャンスが来るだろうなと。だから、あの時間帯を我慢してくれればという思いで見ていました」というFC東京・長谷川健太監督の狙いを許さなかったのは、今やサンフレッチェ広島のエースとも言える柏、そして青山だった。「コンディションは別に、まあいいすわ。勝つためにどんだけやるかですね」と、けがから帰ってきた司令塔は話した。

 試合は広島ペースで進んでいった。開始直後から途切れることなくパスをつなぎ続ける。「前半相手を疲弊させたことが、本当に怖いカウンターの最大の対策になると思いましたし、奪われた後の守備も含めて選手はよく集中してくれたと思います」と城福浩監督。高度な作戦を遂行し、ボールを握り続けて0-0で前半を終えた。

 後半も同じ展開が続く中、先にカードを切ったのは広島だった。入ってきたのは、Jを代表する司令塔・青山。ボランチだった川辺が一列上がり、空いた位置に入ると、チームの攻勢はさらに勢いを増した。

「あんまり何かを変えるということは考えなかったです」とピッチに入った時の思いを話した背番号6。いい流れの中、しっかりプレーすることを考えたという。そして試合展開を読みながらフリーの柏にパスを出すと、そこからゴールが生まれてサンフレッチェは1-0で勝利した。

「青さんの復帰というのはチームとして本当に大きい」

サンフレッチェ広島
城福監督は「彼の活躍と言うのは多くの選手の刺激になったと思う」と青山のプレーぶりについてこう話す【写真:Getty Images】

 青山が生むプレー面でのプラス。柏は「青さんの復帰というのはチームとして本当に大きいと思います。ゲームコントロール含めて、決定的なパスも今日の試合も出していましたし、みんなが信頼をして走れると思います。優勝するには非常に大きいかなと思います」と話す。

 さらに続けて後半ロスタイムに背番号6とのコンビで作り出した、あわや1点ものという鋭いカウンターにもふれ、「最後のシーンも走れば出てくると思って、相手よりスタートを早く切れました。右を見せておいて左に出せるような、青さんしか見えないような独特な感覚というのがあるので」と語った。

 城福監督も「彼の活躍と言うのは多くの選手の刺激になったと思うし、もちろん走れば(ボールが)出てくる選手が中盤に入れば、前の選手はもっと走るという構図が出た」と話すように、国内最高峰のパスの出し手がいることで、前線が活性化することに手ごたえを感じていた。

 さらにもう1つ、指揮官が期待している効果がある。「青山がずっといなかった中で我々は戦ってきて、その中で選手が競争してポジションを勝ち取ってきた。青山が戻ってきたことで、またさらにハイレベルな競争が始まったと言えるのでは」。

 すでにチームは川辺やMF森島司、MF松本泰志、MF東俊希など、若い才能が次々と頭角を現してきて選手層は分厚くなってきている。またリーグ戦でも6月1日の札幌戦で敗れてから、2か月以上負けなしと結果も出続けている。青山も「僕がいない間にここぞとばかりにがんばってくれたんで。そのがんばりが成績に結びついているのでは」と若手の成長に目を細める。

 背番号6がいない間に育ってきた戦力、積み上げてきた戦術。そこに森保ジャパンでも頼りとされる名手が加わることで、さらなる大きな化学変化が生まれるかも知れない。逆転優勝を目指すチームにとって、青山の復帰は大きな上積みになることは間違いない。

ここから逆転優勝へ

 だが忘れてはならないのは、けがの状態。1月に行われた日本代表のアジアカップ2019で右ひざを負傷し、帰国した時からの時間について「青山は本当に、苦しい苦しい半年を過ごしていました。直接見られてない方は分からないと思いますけど、彼は代表から帰ってきて歩くことすらできない状況からの帰還でした」と城福監督は語る。

 ようやくリーグ戦では、8月3日の札幌戦から復帰し途中出場を続けているが、指揮官は背番号6の苦難の時を見てきたからこそ「できるだけ多くの時間を使いたいけれど、ぶり返すことだけは。彼の苦労を見ていると、それだけは避けたい」と話すのだ。

 この試合でも、「中盤を制することができていたので、彼からの繰り出すパスというものが我々にチャンスをもたらすだろうとは思っていた。どのタイミングで青山を入れるかというのは、前半からゲームの展開を考えたら入れられる状況ではありました。ただ、今の彼の体の状況を考えたら、あそこまで伸ばさないといけないなと言う交代でした」と、我慢に我慢を重ねた上で、残り35分を切った場面で投入していた。

 青山は今後プレータイムを増やしていけるかと質問されると、「問題なければどんどん行かないといけないけど、問題があればこう。まあそこは監督に」と慎重な姿勢は崩さなかった。

「まだまだFC東京の背中が見えない状況ですけど、シーズン何が起こるか分からないというのは、我々は痛感していますので。可能性のある限り、トップトップを追い求めたいと思い臨みました。今日のFC東京戦の勝ちは我々が目指すサッカーの少しばかりの自信にもなりましたし、これから先、まだ10試合ちょっとありますけど、何もあきらめずに、1つ1つ成長を遂げて勝ち点を積み上げていきたいと思っています」と力を込めて語った城福監督。

 どん欲に上を、そして逆転優勝を目指す姿勢を明確にした指揮官の言葉に、背番号6も「ついていきます」と即座に応じた。これで9戦負けなしとなり、首位との勝ち点差は9に縮まった。この進撃が続けば、見えてくるものがあるはずだ。

(取材・文:下河原基弘)

【了】

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