日本代表主将・吉田麻也が語るベテランの役割。過酷なアウェー環境で考える「理想と現実」とは?

日本代表は10日にカタールワールドカップのアジア2次予選で初戦に挑む。久保建英、堂安律、冨安健洋など、20歳前後の選手が抜擢される中で、36歳の川島永嗣や、32歳の長友佑都、31歳の吉田麻也といった、過去のアジア予選を経験したベテランも選出されている。彼らがチームにもたらす影響力とはどういったものになるだろうか。(取材・文:元川悦子【ミャンマー】)

2019年09月09日(Mon)10時35分配信

text by 元川悦子 photo Getty Images
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「理想と現実」を考えながら

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日本代表の吉田麻也【写真:Getty Images】

 2022年カタールワールドカップへの新たな一歩となる2次予選初戦・ミャンマー戦が10日に迫ってきた。現地入りから2日が経過した日本代表は8日も試合会場となるトゥウンナ・スタジアム横のピッチでトレーニングを行う予定だったが、練習場所がスタジアムに急きょ変更。「昨日よりはだいぶいいし、十分プレーできる状態ではある」と柴崎岳が前向きに語るほど、プレー環境が少なからず改善された。

 気象条件の方も、終日雨が降り、練習中も激しいスコールに見舞われるなど難しさは相変わらずだが、選手たちは徐々に適応しつつある様子。冨安健洋も「普通の雨って感じでもないし、試合中も降ってくる可能性もあるから、集中を切らさずやれればいい。理想と現実を考えながら、現実的なサッカーをすることが必要」と本番モードへの切り替えを進めていた。

 とはいえ、5日の初戦・モンゴル戦を落としているミャンマーにしてみれば、ホームで日本から勝ち点を取ることは至上命題。そう簡単にはやらせてくれないだろう。ロシアワールドカップの2次予選を振り返っても、2015年6月の初戦・シンガポール戦でまさかのスコアレスドローを強いられたのを皮切りに、苦労した試合はいくつもあった。

 とりわけ、アウェー戦は、2015年10月のシリア戦と11月のカンボジア戦で続けざまに前半無得点と、なかなかゴールを奪えずに苦しんだ。最終的に前者は3-0、後者は2-0と勝利したものの、日本に食らいつこうという相手の泥臭さとタフさは特筆すべき点があった。

「東南アジアはサッカー人気が非常に高く、日本をリスペクトしてる分、『日本を叩きたい』って思いで戦ってくるので、その雰囲気の飲まれちゃうと難しくなる。そうなる前にやっぱり『日本強いな』って状態で試合を終わらせられるようにしたい」とキャプテン・吉田麻也も神妙な面持ちで語っていた。そういう相手の術中にはまらないように、90分間焦らず冷静に戦えるかどうかが極めて重要だ。

経験豊富なメンバーを抜擢した理由

 しかしながら、ロシアから1年間で大幅に若返った森保ジャパンは予選経験者が少ない。5日のパラグアイ戦のスタメンを見ても、過去にワールドカップ予選を最初から最後まで通しで戦ったことがあるのは、吉田、長友佑都、酒井宏樹の3人だけ。今や絶対的エースに君臨する大迫勇也でさえ、前回は初戦・シンガポール戦の後半から香川真司と交代出場した後、最終予選中盤の2016年11月のサウジアラビア戦まで長い空白期間があった。

 森保一監督に絶大な信頼を寄せられる中盤の要・柴崎にしても同様で、シンガポール戦は先発して長谷部誠と並んでボランチを形成したものの、そこから出番がなくなり、最終予選ラストの2017年9月のサウジアラビア戦までお呼びがかからなかった。

 約2年間に及ぶ長丁場の予選は目まぐるしく選手が入れ替わるため、安定したチーム状態を維持することは難しい。特に若い選手は好不調の波が大きく、環境の変化に左右されやすいため、コンスタントな活躍を求めるのは容易でない。そこでチームをしっかりコントロールすべきなのが、ベテラン勢なのだ。

 今回、指揮官が36歳の川島永嗣を抜擢し、長友と吉田という予選経験豊富な30代選手を軸に据えているのも「イザという時にチームを確実に引き締めてほしい」と思いがあるから。彼らはそれを理解したうえで、過酷な環境下での戦いに挑もうとしている。

「僕らベテランの役割はつねに落ち着いてプレーすることと、ピッチ内外でチームに落ち着きをもたらすこと。今は4年前とメンバーが全然違って経験の部分が少ないので、予選を通して沢山の選手が試合に絡んで経験値をレベルアップさせなきゃいけない」と吉田は自らに言い聞かせるように言う。

 一方の川島も「2次予選はピッチも違うし、ボールも違うし、普段と違う環境の中でやらないといけないんで、より集中力が求められる。逆にこういう(ドロドロになるような)環境は中学高校生だった頃を思い出す。自分たちの中にあるものを引き出して、勝利にこだわってやればいい」と原点に戻ってタフに粘り強く戦う重要性を説いていた。

難易度の高い2次予選初戦

 過去に代表として何度も予選とワールドカップを戦い、クラブレベルでも欧州で10年以上プレーしているベテラン勢がいることで、冨安や堂安律ら若い世代は間違いなく安心感を得られるはず。そのメンタル面の効果は計り知れないものがある。

 6月のコパ・アメリカ(南米選手権)でも、川島と岡崎慎司が入っただけにチーム全体が引き締まった。そんな前例もあるだけに、現在の日本代表はまだまだ若手だけに全てを任せられる状態とは言えない。20歳前後のプレーヤーの勢いを引き出すためにも、ベテランがどっしり構えて、難易度の高い2次予選初戦に平常心で挑んでいくことが肝要なのだ。

「ミャンマーは後方からビルドアップしようとしているチーム。前線の選手も小柄でテクニカルな選手が何人かいる」と映像を見た柴崎は分析していたが、現地の環境に慣れている相手に意表を突かれる場面もゼロではないだろう。そこで泰然自若とした状態を維持できれば、そこまで苦しまずに勝ち点3を確保できるはず。

 そのカギを握るのは、やはり吉田や長友ら年長者たちの一挙手一投足。今こそ、30代パワーを見せつけてほしいものだ。

(取材・文:元川悦子【ミャンマー】)

【了】

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