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Jリーグ 4年前

マリノス、強さの根幹はどこにあるのか。敵将も認めるその力、貫き続けるポステコグルー監督の信念【週刊Jリーグ通信】

明治安田生命J1リーグ第31節、横浜F・マリノス対北海道コンサドーレ札幌が9日に行われ、ホームの横浜FMが4-2で快勝して4連勝。首位に勝ち点差1の2位に浮上した。前半2分にFWエリキが高い位置からの守備で相手GKからボールを奪い先制すると、その後も攻撃の手を緩めず自分たちのサッカーを貫き通した。自軍の選手も信頼を寄せ、敵将・ペトロヴィッチ監督や相手チームの選手も称賛をするマリノスのサッカーと、それを築いたアンジェ・ポステコグルー監督の一貫した姿勢に迫る。(取材・文:下河原基弘)

シリーズ:週刊Jリーグ通信 text by 下河原基弘 photo by Getty Images

「やはりマリノスはチームとしても強い」(ペトロヴィッチ監督)

横浜F・マリノス
横浜F・マリノスは9日、ホームで北海道コンサドーレ札幌と対戦し、4-2で勝利している【写真:Getty Images】

「やはりマリノスはチームとしても強いですし、個の能力も非常に高い選手がそろっている。その選手たちがやはり非常にすばらしい活躍をした。今日のゲームはマリノスが勝利に値するゲームができていたと思っています」

 そう横浜F・マリノスを絶賛したのは北海道コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督。サッカーの質、そして内容を重視する敵将をうならせるだけのものを、マリノスが見せていることの証明だろう。

 札幌FWジェイも、「マリノスは非常に強いチームだし、きれいな攻撃的なサッカーをやっているので対戦するのも面白いし、見るのも面白い」と相手チームを称賛。

 さらに自軍の名将も引き合いに「それは監督のおかげだと思います。ミシャもマリノスの監督も、まずはすごくいい男たちだし、すごくいいコーチだと思います。うちも(攻撃的な)ミシャサッカーをやっているので、マリノス対札幌はいつも面白い試合だと思います」と語った。長年欧州で戦ってきた元イングランド代表から見ても、やはりマリノスのサッカー、そしてアンジェ・ポステコグルー監督は、魅力的に映っているようだ。

 その攻守にアグレッシブなマリノスが、開始早々から試合を動かした。前半2分、高い位置でボール回しに参加した札幌GKク・ソンユンに、猛然とプレッシャーをかけたFWエリキがボールを奪うと、丁寧にゴールに流し込んで先制。その2分後にはFW仲川輝人からのクロスを、またもブラジル人ストライカーが頭で決めて追加点を挙げた。

 そこでギアを緩めないのがマリノス。2-0から、さらに得点を奪いに行くといういつも通りの超攻撃的な選択をし、同8分に失点を許してしまった。チームの矜持を感じずにはいられない戦いぶりだったが、その後2点を追加するなどして4-2で勝利した。

ポステコグルー監督の信念

アンジェ・ポステコグルー
横浜F・マリノスを率いるアンジェ・ポステコグルー監督【写真:Getty Images】

 この戦いぶりにエリキは「最初から最後まで我々のサッカー、最初から最後までプレッシャーをかけつつ、ゴールを狙っていました。そこで勝利をできて非常にうれしいです」と胸を張った。

 ぶれない姿勢。これこそがマリノスの強さを象徴するものだと改めて感じさせられたゲームだった。そして試合後の指揮官の言葉からも、改めて強い覚悟がにじみ出た。仮に最終節の(現在首位の)FC東京戦で、1点リードしていても今日と同じようにどんどん行けというのか、という質問が飛んだ時だった。

「自分が来日して初日から自分はこのサッカーをやっていこう、このサッカーをやっていくんだと選手に言ってきました。ここで変えてしまいますと信用を失ってしまうのかなと思いますし、自分は一度決めたことはすごく大事にしますし、やり続けることを心がけています」と言い切った。

 続けて「アグレッシブに、そして前方向に行くんだというのは自分たちのサッカーですし、決して1-0とかで安パイに守り切るのではなく、やはり攻め続ける。今日も2点目が取れた、3点目が取れた、そして4点目が取れた。5点目、6点目と取りに行くことが自分たちのサッカーですから、それを貫いてやっていこうと思います。これが自分たちのサッカーです」と、優勝が狙える位置で最終盤を迎え、改めて決意表明をするように語った。

 どの指揮官にも目指すべき戦い方はあるだろうし、できればそれを貫き通したいという思いはあるはず。だがチームの勝敗や試合状況など様々な理由で、貫徹できないことはある。その中でポステコグルー監督は結果の出なかった昨年や、今季苦しんだ時期でも戦い方を変えなかった。

ぶれない姿勢が強さの根幹に

 第29節の湘南ベルマレーレ戦の後、GK朴一圭は「(監督は)気を抜くなとは常に言っていますね。3-0になっても俺たちは4点目、5点目を取りにいくんだと言っていますし。そういう面ではずっとぶれないし、自分のサッカーを持っているのでやりやすいというか、いいですよね。まったくぶれない、貫き通してくれるので。そこはすごく選手はやりやすいですね」と話していた。

 また、この試合の後にはFWマルコス・ジュニオールが「自分たちのサッカーは日々の練習からやっているんですけど、前からプレッシャーをかけてしっかり得点を狙いに行く。それが0-0であろうと、何点入っていようが3-0だろうが変わらない」と語っていた。違う試合、違う選手を取材していても、同じような言葉が出てくるのが、今のマリノスということなのだろう。いかにぶれずに、戦ってきたかが伝わってきた。

 監督の言行一致、それこそが選手たちから信頼を寄せられる理由だろうし、魅力的なサッカーの根幹になっているのだろう。「(ポステコグルー監督の)サッカーをチーム全員が信じて、やれていることが勝てている要因だと思う」と仲川が話していたが、信じるに値するだけの言動を指揮官が続けてきたことで、マリノスは15年ぶりの優勝を狙える位置まで来ている。

 クラブは11日、オーストラリア人指揮官と来季の契約を更新したことを発表した。これでチーム全体が、目の前の試合に集中して臨める体制が整った。ここ8試合7勝1分けで23得点7失点。勝った7試合はすべて複数得点を挙げるなど、破竹の勢いで勝ち点と得点を積み重ねて、2位まで浮上してきている。

「残り3試合、自分は変わることなくやり続けます。選手たちもやっていくと思いますし、そしてエキサイティングなゲームを続けていくことが、このマリノスのサッカーだと思います」とポステコグルー監督。磨き上げてきた自分たちのサッカーで、頂点を目指す。

(取材・文:下河原基弘)

【了】

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