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アーセナルが依然改善されない3つの課題とは? 降格圏内の相手を前に無残な姿…いまも続く「無策」状態

プレミアリーグ第13節、アーセナル対サウサンプトンの一戦が現地時間23日に行われた。結果は2-2の引き分けに終わった。しかし内容はホームのアーセナルが何とか引き分けに持ち込んだ試合で、負けていてもおかしくはなかった。そして相変わらず指揮官は対策を練ることをせず、丸腰で挑んでいる。そしてこの試合で見えた3つの課題とは?(文:松井悠眞)

text by 松井悠眞 photo by Getty Images

2週間ぶりのリーグ戦も…

ウナイ・エメリ

アーセナルのウナイ・エメリ監督【写真:Getty Images】

 代表ウィークが明けて2周間ぶりのリーグ戦となった。今季のアーセナルは悲惨な試合内容から何かと話題になり、ウナイ・エメリ監督の批判も試合を増すごとに強くなっている。この2週間で指揮官はチームの問題点を洗いざらいもう一度確認をして、対策を練る時間があったはずだ。しかし何か有効な対策を練った様子はなく、いつも通りのアーセナルの試合となってしまった。

 一方のサウサンプトンもなかなか調子が上がらずに降格圏に沈んでいる。失点数は12節終了時点で29失点。この試合で2失点を喫してしまったため失点数は31となった。それでも試合を追うごとにチームの姿勢やプレーは改善されてきている。1987年11月以来、アーセナルのホームで勝てていないが、この試合は勝利まであと一歩のところまで迫った。

 両者、是が非でも勝ち点3が欲しいこのゲームは2-2の引き分けに終わった。アーセナルはホームの利を活かすことが出来ず、一度もリードをすることはなかった。むしろサウサンプトンの方が満足出来る試合内容だった。

一瞬のスキを突かれたアーセナル

 先制点は早い時間に生まれる。左サイドでサウサンプトのFWネイサン・レドモンドが倒されフリーキックを獲得すると、DFライアン・バートランドが素早いリスタートをして、フリーのFWダニー・イングスにスルーパス。これを自ら持ち運んでゴールネットを揺らした。開始からわずか7分のことである。

 このリスタート時に反応していたアーセナルの選手は逆サイドにいたDFキーラン・ティアニーとMFマテオ・ゲンドゥジだけで、ボールに近い選手のほとんどはボールを背にしていた。このシーンに限らず、サッカーは笛がなればプレーが止まり、ボールから目を離してしまう選手がほとんどだ。そこを上手く突いたサウサンプトンの集中力の高さ、切り替えの速さをあっぱれと褒めるべきだろうが、アーセナルにとっては実に勿体ない失点シーンとなってしまった。

 早い段階で追いつきたいアーセナルは17分に同点ゴールを決める。左サイドからティアニーがクロスをあげると、中でFWピエール=エメリク・オーバメヤンが合わせるも、シュートはDFにブロックされてしまう。しかしそのこぼれ球をFWアレクサンドル・ラカゼットが押し込んだ。

続く無策状態

 状況を打破したいアーセナルはハーフタイムにDFカラム・チェンバースに代わってFWニコラ・ペペを投入する。すると52分、55分と立て続けにペペが決定期を作るも得点には至らず、その後は特に目立った活躍をすることはなかった。

 状況を打破出来ないアーセナルはサウサンプトンに2点目を決められてしまう。PKを獲得すると一度はGKベルント・レノに弾かれてしまうも、キッカーだったMFジェームズ・ウォード=ブラウズがこぼれ球を落ち着いて沈めた。

 その後のアーセナルはなかなか攻める糸口を見つけられずに、決定期を作るどころか守備陣がズタズタで3点目を奪われかねないシーンを作ってしまう。そのような状況で迎えたアディショナルタイムにFWガブリエウ・マルチネッリのクロスにラカゼットが合わせて追加点を奪い、辛うじて引き分けた。

 この試合アーセナルはポゼッションを高めながらも、何もすることが出来なかった。ただボールを持っていた状態で、無策状態。逆にサウサンプトンの方が効率良く攻めて決定期を多く作った。相手のウィークポイントを確実に突いて決定期を作り、ロングボールを前線に供給する戦術もハマっていた。

 データサイト『Who Scored.com』によるとアーセナルのポゼッションは61.3%:38.7%、シュート本数は12本:21本、パス本数は490本:314本、これに対してキーパスは8本:15本、とスタッツを確認しても、サウサンプトンがいかに効率良く攻めたかが伺える。

改善されない3つの課題

 アーセナルの課題は依然として改善されることはなく、この試合でも顕著に現れた。

 まず1つ目の問題は後方からのビルドアップの不安定さだ。アーセナルはハイプレスをかけられてしまうとゴールキーパーを含めたDFラインでのパス回しが一気に不安定になる。パスの出しどころを探してボールをこねているとプレスに合いボールをロスト。それを回避するために前線に無理なロングボールを蹴るのがやっとという状況だ。

 そして、特に脆さが露呈してしまうのはCBのスクラティス・パパスタソプーロスがボールを持った時だ。この男がボールを持つとサウサンプトンは一斉にプレスを仕掛ける。これにより再三ボールをロストしてしまい、後半65分には自陣ボックス内でボールを奪われて、決定的となるシーンを作ってしまった。

 2つ目の問題は攻撃の単調さだ。縦パスを入れても2人目、3人目の動き出しがないためボールを収めても再び中盤に戻すしかない。選手間の距離が遠いためダイレクトパスで繋ぐシーンも極端に少ない。ヴェンゲル監督の時代のアーセナルを象徴とする華麗なパス回しは姿を消して、中央で崩す場面がほとんどなくなった。現在のガナーズはサイド攻撃かカウンターしか手段がない状況だ。

 相手が中央を閉めた時にどう崩すか。今季は常にその問題に悩まされている。それでもMFメスト・エジルが中央でボールを受ければ創造性に富んだプレーを見せてくれるシーンもあったが、如何せん味方と連係が合わない。エジルを起点に味方との連係面を更に密にしていくことが必要だろう。

 そして3つ目の問題はインテンシティの低さだ。今季のアーセナルからは「勝ちたい」という姿勢が見られない。失点をしてしまった後は誰もチームを鼓舞することなく、キャプテンシーを示す人がいない。この試合、1点リードされて後半アディショナルタイムを迎えているにも関わらず、自陣内深くでパスを回すシーンが見られた。これに痺れを切らした一部サポーターは立ち上がり、「前へ行けよ」と激しく身振りをする人やブーイングを飛ばした。

 試合終了を待たずして足早にピッチを去るサポーターの姿が多く見られた。降格圏に沈んでいる相手に対してホームでリードすることなく、なんとか同点に出来たという試合ではそのようなことが起こっても不思議ではない。

 ライバルチームのトッテナムがポッチェティーノ監督を解任する決断を下したように、アーセナルの経営陣も勇気ある決断を下さなければならない。

(文:松井悠眞)

【了】

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