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トッテナム、モウリーニョが見せた2つの狙い。一方で繰り返される同じ過ち…明らかになった課題とは?

プレミアリーグ第14節、トッテナム対ボーンマスの一戦が現地11月30日に行われて、3-2でホームチームが勝利をした。モウリーニョ体制後、3試合で10得点と前線が大爆発中だが、失点数が6と多いのも事実。この試合も3点を奪っておきながら2点を返されてしまい、初陣となったウエストハム戦同様の展開となった。新生トッテナムの課題が浮き彫りになった。(文:松井悠眞)

text by 松井悠眞 photo by Getty Images

3連勝と最高のスタート

ジョゼ・モウリーニョ

3連勝を飾ったトッテナム指揮官、ジョゼ・モウリーニョ監督【写真:Getty Images】

 新体制となったトッテナムはリーグ戦とチャンピオンズリーグをそれぞれ1試合ずつ戦い、どちらも白星を獲得して2連勝を飾った。しかし2試合とも2得点を奪われるなど守備面での不安は残る。それでも良いスタートを切れたと言って良いだろう。

 ホームゲームはこれで2試合目。CL第5節のオリンピアコス戦で初のホームゲームを迎え、リーグ戦は今節が最初のホームゲームとなった。

 トッテナムはこの試合、4-2-3-1の布陣で挑む。DFラインは左からヤン・ヴェルトンゲン、ダビンソン・サンチェス、トビー・アルデルワイレルド、セルジュ・オーリエを並べて、中盤の底2枚にエリック・ダイアーとタンギ・ヌドンベレを配置。4-2-3-1の「3」の部分は左からソン・フンミン、デリ・アリ、ムサ、シソコで形成して、1トップにハリー・ケインを置いた。これが基本のフォーメーションだが、攻撃時にはオーリエが一枚上がることにより3-2-4-1のようなシステムになる。

 試合は前半から非常に守から攻の切り替えが早く、手数をかけずに攻める場面が散見されたため、オープンな展開が多くなった。そんな展開の中で、先制点はホームチームが前半20分に奪う。アルデルワイレルドが走り出したソンにロングフィードをすると、ソンが並走をしていたアリに落として、それをそのままアリが沈めた。

 そしてこのアルデルワイレルドからのロングボールで再びゴールを奪うことになる。後半49分に、今度はアリがアルデルワイレルドのロングパスに反応をして、そのままゴールまで持ち運びゴールネットを揺らした。

 2ゴールを奪っても攻撃の手を緩めることはなく、3点目を狙いにいく。すると後半68分にアリのスルーパスに抜け出したソンが左サイドからクロスをあげると、中でフリーになっていたシソコがジャンピングボレーで華麗に決めた。まさにサッカーゲームのようなファンタスティックなゴールだった。

 ホームで3-0と完璧な試合運びをしたトッテナムだが、この試合もこのまま終わることは出来なかった。

明らかになった課題

 後半71分にゴール前でヌンドンベレが不用意なファールをしてしまう。するとFWハリー・ウィルソンが直接フリーキックを綺麗に沈めた。ゴールとの距離が近かったということもあり、トッテナムの壁はジャンプをした時の「下」を警戒してほとんど飛ぶことはなかった。それが裏目に出てしまう形となってしまった。

 1点を返された後のトッテナムのディフェンス陣はドタバタして集中力を欠いてしまう。そこを見逃さずボーンマスの選手は推進力を増していく。そしてアディショナルタイムにFWアルノー・ダンジュマが左サイド深くからグラウンダーのクラスをマイナスにあげると、再びウィルソンが落ち着いて決めた。

 そして最後の最後でもあわや同点ゴールという非常に危ないシーンを作ってしまう。3得点も奪えば、気の緩みというのも出てくるのかもしれないが、初陣となったウエストハム戦と全く同じ過ちを繰り返してしまった。枠内に飛ぶミドルシュートも簡単に打たせてしまうなど中盤の寄せも甘い。この試合はCKから失点は無かったが、危ないシーンを作ってしまった。ウエストハム戦とオリンピアコス戦でCKから失点をしたように、CKにも課題が残っている。守備の改善は急務だろう。

 しかし心配はいらないかもしれない。マンチェスター・ユナイテッド時代は上手くいかなかったが、思い返せばジョゼ・モウリーニョは守備意識の高い監督であった。過去に率いたチェルシーやインテルでは非常に硬いディフェンスを見せてくれた。守備に関してはモウリーニョが最も得意としているジャンルと言って良い。ユナイテッド時代と同じ過ちが繰り返されないことを祈る。

モウリーニョの2つの狙い

 課題が見えた試合だったが、それと同時にこの試合はモウリーニョ監督の狙いも見えた試合だった。

 まず前述した通り、トッテナムは攻撃時に3-2-4-1のシステムになる。これによりソン、アリ、シソコ、ケインは自由に動くことができ、相手DFを撹乱させる。特にアリとケインは自由に動くことを許されている印象があった。それに合わせてソンとシソコもポジションを自由に変えた。またケインは中盤まで降りて攻撃の起点となることが多く、守備での貢献度も非常に高かった。ケインが一枚下がりディフェンスに貢献することはポッチェチーノ監督時代でも見られたが、モウリーニョ監督になってもその役割は受け継いでいた。オフェンス時のシステムが変わったことはモウリーニョ監督の一つの狙いと言える。

 もう一つは、後方からのビルドアップ時に見られる。この試合の2得点は最終ラインからのロングボールから生まれている。注目をするべきポイントは前線の選手の動き出しだ。

 先制点のシーンはソンが左サイドから中央に斜めに走り込んだ。一方追加点の場面ではアリがインサイドのハーフスペースから裏へ抜け出してボールを受けた。一見するとロングボールを前線に出しているだけのように思えるが、前線の選手の動き出しにパターンがあるのだ。もちろんアルデルワイレルドの精度の高いロングボールがあってこそ出来る戦術でもある。

 何よりも監督が変わったことにより、攻撃面のメンタルが大きく改善をした。チームは生き生きとプレーをするようになり、自信に溢れている。さすが百戦錬磨のモウリーニョ監督だ。これもスペシャル・ワンの手腕なのだろう。この試合に限らず3試合の内容を見れば、あとは前述した通り守備面の改善だけだ。

 監督交代によって、これまで出場機会に恵まれなかった選手や、前任者の元でスタメンの座を掴んでいた選手は一旦リセットされる可能性が十分に考えられる。これによりチームに競走が生まれるはずだ。まだ3試合。これから連勝街道を進むことになるのか。それとも再び失速をすることになるのか。新生トッテナムから目が離せない。

 なお、この試合はボールボーイの活躍は見られなかった。

(文:松井悠眞)

【了】

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