リバプール、マンC、チェルシー、断捨離の対象は? 「夏とは違うのだよ、夏とは」【プレミアビッグ6冬の補強策・前編】

プレミアリーグのビッグ6はそれぞれ事情を抱えながら、目前へと迫った冬の移籍市場を待っている。首位を走るリバプール、それを追従するマンチェスター・シティ、そして補強禁止処分が解かれたチェルシー。それぞれの補強ポイントはどこにあるのか考えていく。(文:粕谷秀樹)

2019年12月20日(Fri)10時20分配信

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断
text by 粕谷秀樹 photo Getty Images
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「冬の補強は考えていない」

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マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督【写真:Getty Images】

 大掃除の季節がやって来た。ビッグ6であっても、整理整頓を心がけなければならない。不要なら捨てる……いわゆる「断捨離」を積極的に敢行し、それぞれの目標に向かって再装備する必要に迫られている。

 2か月ほど前から、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督は繰り返し発言している。

「冬の補強は考えていない」

 メディアが飛びつくようなリッピサービスを嫌う男が何度もリピートするのだから、今シーズンは現有勢力で闘う覚悟を固めたのだろう。ケガで戦列を離れているレロイ・ザネ、エメリック・ラポルトが来年2月には戻ってくるため、十分に闘えると判断したに違いない。

 グアルディオラ監督と仲違いしている選手はいない。来年6月30日で契約が切れる「ボスマンプレーヤー」(注釈)も、主力ではダビド・シルバとフェルナンジーニョだけだ。シルバは今シーズン限りの退団を明らかにし、上層部もグアルディオラ監督も認めている。フェルナンジーニョは契約更新が確実だ。

※注釈
ボスマンプレーヤー:契約満了の選手を指す。移籍金がかからずに他クラブとの契約が可能になる。移籍の自由を認めた1995年の〈ボスマン判決〉が発端

シティにとって最高のターゲットは…

 懲罰のような形でクラブを追われる者もいない、と考えられる。また、みずからを「原理主義者」と公言してはばからないグアルディオラ監督が、ポゼッションを放棄するようなストロングヘッダーに興味を示すはずもない。

 しかし、左サイドバックだけは補強した方がいい。バンジャマン・メンディはケガとの付き合い方が下手すぎる。オレクサンドル・ジンチェンコは線が細く、アンヘリーニョはマンチェスター・ダービーでシティのレベルに達していないことを露呈した。

 来年夏に予定されている大型補強に備え、冬の市場は静観するようだが、左サイドバックを放置しておくと傷口は、リバプールとのポイント差はさらに広がる。せめてひとり、リュカ・ディーニュ(エバートン)の獲得だけは検討すべきだ。ボールコントロール、クロスの精度とも、グアルディオラが求めるレベルに到達している。バルセロナでもプレーしたディーニュは、1月のシティにとって最高のターゲットだが……。

 そして現地時間1月16日、アシスタントコーチのミケル・アルテタがアーセナルの新監督に就任することが決定的になった。早ければ週末のエヴァートン戦から指揮を執るという。ときにエキサイトするグアルディオラを抑え、チームを円滑に動かしてきた功労者が退団する。このダメージは小さくない。

南野拓実のポジションは…

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リバプールのユルゲン・クロップ監督【写真:Getty Images】

 リバプールのジョー・ゴメスは、冬の市場で移籍確実といわれていた。やっとの思いでつかんだレギュラーの座をケガで失い、センターバックでは4番手。フィルジル・ファン・ダイク、ジョエル・マティプ、デヤン・ロブレンの後塵を拝している。右サイドバックでもトレント=アレクサンダー・アーノルドに次ぐ2番手であり、左サイドの優先順位もアンドリュー・ロバートソン、ジェームズ・ミルナーを下まわる。

 しかし、ユルゲン・クロップ監督はゴメスの万能性を高く評価している。それほどのDFを、おいそれと手放すとは思えない。1年ほど前も、優先順位に不満を抱いていたディボック・オリギを翻意させた経緯がある。ましてリバプールの“ヘヴィメタル・フットボール”を踏まえると、各ポジションで勤続疲労が考えられる。駒を揃えてなくてはならない。

 さて、アダム・ララーナはボスマンプレーヤーだ。17節終了時点で7試合出場。先発はわずか2試合。中盤の優先順位はおそらく最下位だ。前線でも“Fabulous3”はもちろん、シェルダン・シャキリとオリギの下でもある。すでに31歳。クラブとしても最後の売りごろであり、ララーナ本人も他クラブ、あるいは他国で実力を認めさせるのなら、ラストチャンスといっていい。退団の可能性は非常に高い。

 そしてララーナよりも動けて、7歳も若い南野拓実が、ザルツブルクからリバプールに移籍することが決まった。世界最高が揃う前線、ハードワークで鳴る中盤の一角に、南野が入り込むのは難しい。しかし、出場機会を与えられるに違いないFAカップ、リーグカップで、その才能をアピールしてほしいものだ。なお、ララーナと同様にボスマンプレーヤーだったミルナーは契約を2年更新し、残留を明らかにしている。

「夏とは違うのだよ、夏とは」

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チェルシーのフランク・ランパード監督【写真:Getty Images】

 来年1月のチェルシーは、移籍市場でどのように振る舞うのだろうか。スポーツ仲裁裁判所への控訴が奏功し、補強禁止処分が解除された。オーナーを務めるロマン・アブラモヴィッチ氏が、喜び勇んで1億5000万ポンド(約210億円)もの強化費を約束した、との噂も飛び交いはじめている。ただ、断捨離も同時進行しなくてはならない。

 ボスマンプレーヤーはオリビエ・ジルーとペドロ。ともに新旧交代の波にのまれ、満足な出場機会を与えられていない。この先、フランク・ランパード監督が若手中心の方針を変更するはずもなく、ジルーとペドロは出場機会どころか、ベンチから外れるケースも増えてくるに違いない。

 それはマルコス・アロンソも同様だ。ボスマンプレーヤーではないものの、左サイドバックの定位置をエメルソンに奪われ、パフォーマンスも昨シーズンの中盤あたりから上向いていかない。来年30歳。別れのときは近づいている。

 また、リース・ジェームズの台頭でセサル・アスピリクエタの立場も盤石とはいえなくなってきた。勤続疲労なのか、今シーズンは精彩を欠いている。一対一も軽い。キャプテンであり、契約も22年6月30日まで残っているため、アスピリクエタも上層部も拙速に答を出すような愚だけは慎みたいところだ。しかし、「チームには経験も必要だ」とランパード監督の方針に疑問を呈してもいるだけに、市場で即戦力の右サイドバックを獲得できれば、換金の対象になるかもしれない。

 アスピリクエタとM・アロンソの去就が微妙になると、最終ラインの層が薄くなる。17節終了時点で25失点。トップ10ではアーセナルの27失点に次ぐ残念なデータであり、リーグ全体でも9番目に多い。13節以降は1勝4敗。一時の勢いも鈍ってきた。来年1月、一線級のDFにビッグマネーを投入したとしても不思議ではなく、フランク・ランパード監督も積極的に動くことを示唆していた。

「夏とは違うのだよ、夏とは」(以下、後編に続く)

(文:粕谷秀樹)

【了】

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