U-23日本代表、小川航基が使い分ける2つの顔。現代的なストライカーが持つMF的な視点とは?【西部の目】

サッカーU-23日本代表の小川航基は、昨年12月のEAFF E-1サッカー選手権でA代表デビュー、初ゴールをマークした。U-23日本代表では金メダルを狙う東京五輪に向けて、9日に初戦を迎えるAFC U-23選手権(東京五輪アジア最終予選)で熾烈なポジション争いが繰り広げられる。桐光学園時代からこの世代のエースを務めてきた小川には、MFのような視点があるという。(取材・文:西部謙司)

2020年01月09日(Thu)10時56分配信

シリーズ:西部の目
text by 西部謙司 photo Getty Images
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チームの意図と自分の考え

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EAFF E-1サッカー選手権で日本代表初ゴールを決めた小川航基【写真:Getty Images】

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 立て板に水、というほどではないかもしれないが、小川航基の回答はとてもスムーズだった。およそこの世代の選手たちは、自分の考えを整理して話すことに慣れているような印象はある。

「縦パスを入れるために食いつかせる横パスを使い、縦に入ったら少ない時間でシュートへ持っていくのを理想としているのはわかります。縦パスをもらえる位置にサポートして、そこで味方を使ってから一番危険なところへ入って行く。それをどれだけ繰り返して根気強くやれるかで自分のパフォーマンスも良くなるので、意識して取り組んでいます」

 EAFF E-1サッカー選手権のときの練習後のコメントだが、1トップとしてチームから求められていることを、自分のプレーにどう落とし込むかについて、しっかり考えていることがうかがえた。

「(香港戦で)僕が意図的にやったことがあったのですが、監督からは『この位置にいてほしかった』という話がありました。バランスをとりながらやっていきたいと思います」

 チームの方針や監督の意向と、自分のアイデアが必ずしも同じとはかぎらない。このコメントだけではわからないが、「バランスをとりながら」という発言から、チームと自分の考えを客観的に並べている感じがした。

マグロ漁師の感覚

 中学年代まではMF。FWでプレーするようになったのは桐光学園高校の1年生からだった。それまではトレセンにも全く呼ばれなかった小川が、アンダー世代日本代表のエースになっていく。ストライカーに適性があったのだろう。

 MFとFWの適性は異なる。技術的な違いもあるが、それよりもメンタルが違う。MFは基本的にプレーを「楽しむ」。パスを受け、味方へさばき、適切なポジションをとるなど、1つ1つのプレーのディテールを楽しんでいる選手が多い。結果はもちろん重要だが、プレーすること自体に充足感を持っている。

 FWがプレーを楽しんでいないわけではないが、たとえていうならストライカーは「マグロ漁師」のイメージだ。ディテールを楽しむのではなく、点をとれるかどうか。結果がすべて。獲物を持ち帰ることだけが重要で、得点してはじめて満足を得られる。MFが1つ1つのプレーをすべて成功させたいタイプとすると、FWはゴールという結果のために他のすべてが無駄に終わることも厭わない。たとえ不漁に終わっても、翌日には今日は獲るぞというメンタル。

 ストライカーはゴールハンターなので、得点から逆算でプレーを考える。チームのために貢献するというより、チームは自分のためにある。エゴイストと思われがちだが、自分がいかに点をとるかが思考のスタートだから、どうしてもそうなるわけだ。

2つの顔を平然と使い分ける

 小川はMFが出発点だったせいか、チーム全体を俯瞰で見ているところがある。自分が点をとることに集中するあまり、それ以外のことが見えない、あるいは関心が持てないというタイプではなさそうに思えた。

 ただ、ストライカーでブレイクした選手だから、メンタルはたぶん「マグロ漁師」だ。チームがどういう意図を持っているか、その中で自分が何を求められているについて客観的に把握はしている。だが、ストライカーには主観がすべてということがある。受け答えだけを聞くとMFタイプのようだが、プレーぶりはFWそのものだ。どちらが本当かはわからないが、2つの顔を平然と使い分けている感じが現代的なストライカーらしいのかもしれない。

 香港戦の自身2点目が小川らしかった。右からのクロスをバックヒールで狙ったが失敗。しかし抜けたボールが再び折り返されてきたとき、今度はトゥキックで相手のシュートブロックを外して決めている。

 最初に決め損なっているので、次のチャンスで力みそうなものだが、小川はとても冷静だった。一瞬のヒラメキだと思うが、どうしたらシュートが決まるかコンマ数秒で答えを弾き出せる。やはりストライカーで、ゴール前で仕事をする選手なのだ。

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(取材・文:西部謙司)

【了】

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