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“PSGで一番こわい存在”カバーニの去就はどうなる。今冬一番の注目案件、新天地の選択肢は2つに?

冬の移籍市場も残りあとわずか。すでに新天地を求めた選手も多くいるが、中でもその動向に注目が集まるのがFWエディンソン・カバーニだ。所属するパリ・サンジェルマンでは出場機会に恵まれておらず、移籍は確実視されている。2季連続でリーグアンの得点王に輝いたストライカーは、果たしてどこに活躍の場を移すのか。(文:小川由紀子【フランス】)

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

今季はわずか2得点…

エディンソン・カバーニ
PSGからの移籍が噂されるFWエディンソン・カバーニ【写真:Getty Images】

 冬のメルカートも残すところ1週間。ここからがいよいよクライマックスだが、ここまでは例年に輪をかけて静かなリーグアンで、一番の注目案件がパリ・サンジェルマン(PSG)のFWエディンソン・カバーニだ。

 カバーニ自ら移籍を志願していることは、PSGのスポーツダイレクター、レオナルドも認めている。今シーズンは、8月末から腰の負傷で約2ヶ月間の離脱、年末にもふくらはぎ、筋肉系、そして年明けは股関節などなど、故障のオンパレードだった。

 その間、インテルからレンタル中の新入りマウロ・イカルディがみるみるチームに順応し、いまやネイマール、キリアン・ムバッペ、アンヘル・ディ・マリアとともに『ファンタスティック・フォー』なる攻撃ユニットを形成。カバーニはもっぱら、終盤にイカルディと交代するベンチ要員となっている。

 2016/17、2017/18シーズンと2年連続でリーグ得点王、現在までの198得点は歴代最多得点と、彼はPSGでレジェンドの地位を確立しているが、今季はリーグ戦の先発出場4回、計332分のプレータイムで得点はPKによる1点を含む2ゴールのみと寂しい数字が並んでいる。

 カバーニの契約は今季末まで。レオナルドSDは「もう少し状況をみて、今後のことを話し合いたいと考えている」と契約延長も匂わせているが、終盤の3、4分、「出場給だけでも…」という情けを感じてしまうような使われ方がこの先も続けば、モチベーションも失われていく。なによりストライカーは、コンスタントにゴールと向き合うことで、得点感覚を磨き、自信を積み上げることができる。

 カバーニの獲得には、マンチェスター・ユナイテッドなど、いくつものクラブが名乗りを挙げていたようだが、報道のとおりなら、現状ではリーガ・エスパニョーラのアトレティコ・マドリーとプレミアリーグのチェルシーの2択にしぼられたか、というところだ。

アトレティコかチェルシーか

 アトレティコのディエゴ・シメオネ監督は、数年前からカバーニを所望していたといわれる。その彼が移籍可能な状態であるなら、すぐにでも入団してほしいところだろう。カバーニの両親の「息子はアトレティコに行きたがっている。PSGの扱いはフェアではない」というコメントもメディアを賑わせている。

 一方、フランク・ランパード監督率いるチェルシーは、チームのトップスコアラーであるタミー・エイブラハムが、2-2で引き分けた1月21日の第24節アーセナル戦で足首を負傷したこともあり、ストライカー補強の必要性はさらに高くなった。即戦力となれるベテランならすぐにでも欲しいだろう。

 プレミアリーグは順応するのが難しいというのは選手の口からよく聞かれる。モナコからマンチェスター・ユナイテッドにレンタル移籍したラダメル・ファルカオのように、怪我もあったとはいえ活躍できなかった選手もいるから賭けではあるが。

 報道によれば、アトレティコはPSGに1000万ユーロ(約12億円)をオファーしたが、これはPSG側がはねのけた。1月31日の最終期限を待って、最高1500万ユーロ(約18億円)までは上げる腹積りはあるようだ。

 チェルシー側は、英『テレグラフ紙』によれば、カバーニの推定週43万ユーロ(約5100万円)のサラリーをそのまま引き継ぐのであれば、プラス移籍金(およそ1500万ユーロ)ではまかないきれないため、サラリーは据え置く代わりに600万ユーロ(約7億円)のレンタル料を払って今すぐ手に入れる、という交渉に出るつもりでいるらしい。

 PSGにしても、シーズン末には契約が満了してフリー移籍となってしまうのであれば、1500万ユーロあたりで手を打っておきたい、という目論見もある。

「PSGで一番こわいのはカバーニ」(酒井宏樹)

酒井宏樹
酒井宏樹は「PSGで一番こわい攻撃手はカバーニ」と話す【写真:Getty Images】

 PSGのトーマス・トゥヘル監督はカバーニの去就について「私は一人の選手も失いたくない。しかしそれ(移籍)は起こりうるものだ。どうなるのか状況をみているところだが、いまは静観したい」と核心には触れていない。

 これからチャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメントに挑むPSGとしては、戦力は一人でも多く欲しいところ。カバーニ級の選手をベンチに座らせ、必要なときだけ使う、などという贅沢なオプションは、どの指揮官にとってもヨダレ物だが、それで本人が満足できるはずはない。

 カバーニ離脱後のピッチ上の影響だが、現在のPSGの攻撃システムは、ディ・マリアとネイマールが両サイドに開き、ムバッペがセカンドストライカーのようなポジション、イカルディがトップの4-4-1-1気味の4-4-2、あるいは、ネイマールが10番の位置に入る4-2-3-1だ。

 カバーニはトップのイカルディとの交代要員として起用されているが、カバーニとイカルディの2人とも使えない場合は、ユリアン・ドラクスラーやマキシム・チュポ・モティンがムバッペとコンビを組んだりしている。

 またモナコ時代にはムバッペは4-3-3のワントップでもプレーしていた。よってカバーニが離脱したあと、イカルディも欠場してセンターフォワードが不在となる場合は、このオプションが濃厚。ムバッペはゴール前での決定力も高い。ただ、自由に動けるポジションにいる時よりもカウンター攻撃の威力が減少するのはもったいないが。

 両サイドや2列目など、プレー範囲が広いパブロ・サラビアとイカルディを2トップで組ませた試合もあったが、サラビアは今後も遊軍として重宝されそうだ。

 マルセイユのDF酒井宏樹はPSGと対戦するたび、ムバッペでもネイマールでもなく「このチームで一番こわい攻撃手はカバーニ」と話していた。いつどこにいてもゴールを狙っている上に、絶妙な狡猾さもあって、ディフェンダーにとって恐ろしい存在であると。

 PSGファンも、献身的なカバーニを心底愛していた。取材エリアでも本当にジェントルマンで、「性格いいな~」といつも感じていた。ピッチ上での表情とは打って変わったソフトな笑みに癒される記者は多かった。

 しかしそんな彼でも、心の中には意地もプライドも闘争心もある。来月のバレンタインデーには33歳。まだまだトップチームで、ネットを揺らしてほしい。

(文:小川由紀子【フランス】)

【了】

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