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リバプールはなぜ敗れたのか。大金星を掴んだワトフォードの「用意されたプレー」、アトレティコ戦から続く不調の原因は…

プレミアリーグ第28節、ワトフォード対リバプールが現地時間2月29日に行われ、3-0でワトフォードが勝利を収めた。敗れたリバプールはプレミアリーグにおける連勝記録と無敗記録がともにストップ。予想だにしなかった完敗が引き起こされた原因を探っていく。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

まさに完敗

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【写真:Getty Images】

 昨年1月のマンチェスター・シティ戦以来となる敗北により、プレミアリーグにおける無敗は44試合でストップ。昨年10月のマンチェスター・ユナイテッド戦以降継続してきた連勝は18試合で止まった。

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 隆盛を極めるクロップ・リバプールが、降格圏を彷徨うワトフォードに敗北を喫した。パフォーマンスが3-0というスコアに反映されていたとは言い難いが、90分を通してワトフォードがプレーの質で上回っていたのは、ユルゲン・クロップ監督も認めるところだった。

 18日にはアトレティコ・マドリードにアウェイで敗れ、24日のウェストハム戦はリードされた中で薄氷を踏む思いで逆転勝利を手にした。ジョーダン・ヘンダーソンという唯一無二の存在を欠くチームは、2試合続いた悪い流れを払拭することができなかった。

 70%を超える高いボール保持率を記録していたが、シュートの数は相手の半分の7本だけだった。そのうち枠内を捉えたのは、ワトフォードの5本に対してリバプールは1本のみ。数字を見る限りでは、まさにリバプールの完敗だったと言えるだろう。

 リバプールが最後に無得点に終わったのはちょうど1年前のマージーサイド・ダービーだった。そして、試合前の時点で降格圏の19位に沈んでいたワトフォードが、約1年間にわたってリーグ戦で毎試合ゴールを決めてきたリバプールをシャットアウトすることに成功した。

 今季途中に指揮官の座に就いたナイジェル・ピアソンは、4-5-1のシステムで首位との一戦に臨んだ。トップ下のアブドゥライ・ドゥクレは、1トップのトロイ・ディーニーとともに相手のビルドアップをけん制しつつ、自陣に押し込まれると中盤に加わって献身的にスペースを埋めた。

先制点を生んだ「用意されたプレー」

 スペースを埋められた相手に対して苦戦するというのは、アトレティコ戦やウェストハム戦と同じだった。楔のパスは通らず、ポジショニングは流動性を欠いた。良い時のリバプールの姿は見る影もなく、フィニッシュに持ち込むことができなかった。

 スコアレスで迎えたハーフタイムを経て、リバプールも修正を試みている。サイドバック、ウイング、インサイドハーフの距離感が近くなり、50分、52分とチャンスになるようなシーンも生まれている。しかし、この後半開始から続いたリバプールの時間帯に、ワトフォードの先制点が生まれた。

 左サイドから入れられたスローインは、デヤン・ロブレンを背負ったディーニーに向けられて投じられた。ディーニーはロブレンを背負ったままボールには触れず、縦に走り込んだドゥクレがボールを受ける。ドゥクレの折り返しをイスマイラ・サールがゴールへ流し込んだ。

 ニアでボールを引き出すディーニー、その背後を抜けるドゥクレ、ゴール前へ侵入するサール。その一連の動きは用意されたプレーに見えた。その後のワトフォードは、相手の反撃に水を差すような形で60分、72分と追加点を挙げて、リバプールの息の根を止めた。

 左サイドハーフで先発したジェラール・デウロフェウはミドルレンジから相手ゴールを脅かしたが、膝を負傷して37分にピッチを後にしている。違いを作れるアタッカーを前半に失ったワトフォードだが、試合を通してカウンターが機能していた。体重101kgのディーニーが身体を張ってボールを収めて、2列目からサールやドゥクレが飛び出してフィニッシュへとつなげた。

セカンドボールを拾えない

 守備ではファンダイクを中心にハイボールを跳ね返してカウンターの目を摘み、攻撃ではマネやサラーがロングボールを収めてチャンスへつなげるというのは、リバプールが持つ大きな特徴だった。しかし、データサイト『Who Scored』によればこの試合の空中戦の勝率は46%と、ワトフォードを下回る数字が出ている。

 ちなみに、同サイトによるとアトレティコ戦は44%、ウェストハム戦が48%と、ともに劣勢に立たされている。「(セカンドボールを)もっとうまく拾っていかないといけない」と指揮官がコメントしたのは、苦しんだ末に逆転勝利を収めたウェストハム戦後。この試合でも様相は同じで、セカンドボールの回収にリバプールは苦労していた。

 ウェストハムのミカイル・アントニオや、アトレティコのジエゴ・コスタといった屈強なセンターフォワードに対して空中戦で劣勢を強いられるのは仕方がない。ワトフォードのディーニーはファンダイクを避け、意図的にロブレンとの競り合いに持ち込んでいた。ウェストハム戦のクロップの言葉を借りれば「フォーメーションが良くなかった」ことで、こぼれ球を回収することができなかった。

 南野拓実は79分にロベルト・フィルミーノに代わって、およそ4週間ぶりの出場を果たした。4-2-3-1のトップ下でボールを引き出しながら前線に厚みをもたらすプレーぶりは、ここまで見せていたぎこちなさを感じさせなかった。同じく途中投入されたディボック・オリギはここ数試合で良いプレーを見せられていないだけに、南野に今後もチャンスが回ってくる可能性はあるだろう。

 この衝撃的なスコアは、プレミアリーグの優勝争いに影響を与えることはないだろう。しかし、この敗戦よりもここ3試合における低調ぶりが、リバプールにとっては改善すべき喫緊の課題となった。チームは中2日でチェルシーとのFAカップ5回戦を戦い、ボーンマス戦に続いてアトレティコとのCLラウンド16・2ndレグを控えている。連戦が続く中でどのような改善を見せていくのか。苦境の中でこそチームの真価が問われる。

(文:加藤健一)

【了】

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