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Jリーグ 4年前

「オシムさんの頃は、もっと凄かった」。佐藤勇人が明かすジェフ千葉への愛と再建への思い【新生ジェフの青写真・後編】

降格した2010年、誰もがジェフユナイテッド千葉はすぐJ1へと復帰するだろうと考えていた。しかし昇格のミッションは果たせず、いつしか、J2に留まることが年中行事のようになっていく。ハードトレーニングで知られる新しい指揮官は、2020シーズンのクライマックスに向けてどのような青写真を描いているのかに迫った。3/6発売の『フットボール批評issue27』から一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(取材・文:加部究)

text by 加部究 photo by Getty Images

「選手でいるより立場を変えた方が貢献できる」

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【写真:後藤勝】

キャンプでは守備の構築に重きを置いた。

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「結局私が引き継いだのは、守備が上手くいっていないチームばかりでした。良い攻撃に繋げていくためにも、まず守備を整える必要がありました」(ユン・ジョンファン監督)

 米倉も確かな手応えを感じている。

「昨年までは失点をしても、どこが悪かったのか、みんなの見解が異なりバラバラでした。でも今年は守備で細かな部分まで意識が統一されたので、ディフェンス陣の中で良し悪しの判断が揃い、ミスが起こっても修正点も責任の所在もはっきりしています」

それにしても前身の古河電工時代にはアジア制覇の経験を持つ古豪の低迷は、大方の予想を遥かに超えて長期化した。実は佐藤勇人が引退を決めたのも「チームを再建するには、選手でいるより立場を変えた方が貢献できる」と、誰にも負けないと自負するクラブ愛を貫いたからだという。

「ジュニアユース(中学年代)のセレクションで2度落ちて、3度目に合格した時は心から喜びました。それほどどうしても入りたいチームだったんです。そんな経緯もあり、アカデミーから一緒にやって来てプロになれなかった人たちや、古河からの長い歴史も引き継ぎ、全ての人たちを代表するつもりで戦ってきました」

先日横浜F・マリノスで入閣した旧知のスタッフから、現チャンピオンの状況を聞いた。

「90分間から2時間程度のトレーニング中は、スタッフも含めてピッチ上の全員が休むことなく稼働しているそうです。次のメニューへと移行するのにコーチが走り、選手たちも水分補給にダッシュで行く。ジェフも(イビツァ)オシムさんの頃は、もっと凄かった。だから当時を知るメンバーは、オシムさんが去った後もその習慣を続けたんですが、だんだん選手が入れ替わり緩んでしまいました」

 振り返ればオシム時代は、別格に張り詰めた空気の中で濃密な日々を過ごした。一見不愛想で厳格な指揮官が、クラブの隅々にまで行き届く繊細な気配りや重厚で多彩なボキャブラリーを備えていることに気づくまで「半年以上を要した」そうだが、そこからは一転「この人を優勝監督にしたい」と結束した。

「オシムさんのトレーニングは、身体も頭も疲れました。答えは教えてくれず、自分で考えて見つけなければならなかった。スタメンもロッカールームで紙を見て初めて知る。だから予想していない選手が抜擢されると驚くわけですが、要するに全員が試合に出るつもりで準備をしなければならない。

 逆にナビスコカップ(現ルヴァン)では、18人のベンチ枠があるのに16人しか登録しないこともありました。登録に値する選手がそれしかいないという意味です。トレーニングから厳しくやれていなければ、枠があってもメンバーに入れませんでした」

(取材・文:加部究)

▽ 佐藤勇人(さとう・ゆうと)
クラブユナイテッドオフィサー

1982年3月12日生まれ、埼玉県出身。ジェフユナイテッド市原(現市原・千葉)のアカデミーで育ち、2000年にトップチームへと昇格。2008年からの2シーズンは京都サンガF.C.に移籍するが、2010年に千葉へと復帰。2019年に引退するまで所属を変えなかった。2020年からは新たな役職であるクラブユナイテッドオフィサーに就任、トップチームやアカデミーの強化をはじめとして多くのクラブ業務に携わる。

FootballCritic28

『フットボール批評issue27』


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<書籍概要>
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“洋物”への過度な依存は、“和物”の金言をフォーカスする作業を怠っているからにすぎない。
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