久保建英には「絶対負けたくない」。18歳のサガン鳥栖・松岡大起が目の当たりにした大きな差【東京五輪世代の今(6)】

J1の再開は5月にずれ込むことになり、東京五輪は今夏の開催が見送られることが決まった。思いがけずおとずれた中断期間に、東京五輪世代の選手たちは何を思うのか。トップチーム昇格2年目の18歳、サガン鳥栖の松岡大起にその胸中を聞いた。(取材・文:元川悦子)

2020年03月28日(Sat)10時30分配信

text by 元川悦子 photo Kenichi Kato
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「一番足りないと思ったのは…」

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【写真:加藤健一】

 3月24日に行われた安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長との電話会談によって、東京五輪延期が正式に決定した。

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 U-23日本代表の森保一監督は「人々の命と健康があってこその五輪だと思っています。延期になったとしても、大会までの1回1回の活動に最善を尽くすことに変わりはありません。各活動を充実させて、東京オリンピック開催時によりパワーを持って臨めるよう、これまで積み重ねたものをさらに積み上げていきます」とコメントを発表。1年後と言われる本大会に向け、尽力していく構えだ。

 だが、年齢制限がどうなるかは非常に難しい問題。オーストラリアのグラハム・アーノルド監督がU-24への引き上げを求めていることが報じられているように、世界各国の指揮官が特別措置を熱望するだろう。それが叶わなければ、97年生まれの選手は出場資格を失う。そういった流動的な状況もあるため、98年生まれ以降の若い世代はチャンスが広がる可能性もあるのだ。

 そうなった場合、追い風の中にいる1人と言っていいのが、サガン鳥栖でプレーする18歳のダイナモ・松岡大起だろう。高校3年生ながらトップ昇格を果たした昨季はJ1・23試合に出場。ゴールこそ奪えなかったが、中盤で獅子奮迅の働きを見せ、ルイス・カレーラス、金明暉両監督から信頼を勝ち取った。

「昨年はホントに初めての経験が多くて、自分のことだけでいっぱいいっぱいだった。いろんな選手のレベルの高さを感じましたし、自分のレベルを上げないといけないことも痛感しました。一番足りないと思ったのは、デュエルの部分。自分はボランチなんで、この選手がいれば安心という『重さ』が必要なんだけど、まだまだ足りない。山口蛍選手や三竿(健斗)選手みたいに、頼れてチームを引っ張っていける選手になりたいと思います」と生真面目な若者は言う。

同い年・久保建英には負けたくない

 大いなる目標を胸に秘め、今季J1開幕の2月22日の川崎フロンターレ戦に挑んだ松岡。しかし、相手との力関係もあり、アンカーを務めた前半から後半途中にかけては相手の猛攻を封じるので精一杯。後半途中に一列上がってインサイドハーフに入ってからは攻撃の起点になり切れなかった。これには本人も不完全燃焼感を抱くしかなかった。

「もっとボールを奪わないといけないと思いましたし、自分が周りを動かす仕事もしないといけない。自信を持ってプレーをする必要があると感じました」と本人も反省しきりだった。

 あれから1カ月が経過し、彼は地道な努力を続けて、少しずつステップアップしているはず。新型コロナウイルスの感染拡大によって、Jリーグの再開がさらにずれ込み、J1は5月9日の再開を目指しているという。となれば、あと1カ月は自己研鑽を図る時間をもらえる。若い松岡には貴重な時間に他ならないだろう。

 ひたむきに粘り強く努力する小柄なボランチが見据えるのは、欧州で活躍する同期・久保建英の姿だ。昨季FC東京でプレーしていた久保と対戦した際、年齢に関係なくチームを力強くけん引する彼の姿を真に当たりし、自分もより大きな影響力を示しながら戦うべきだと実感したようだ。

「久保選手は中学生の頃からプロでやっていて、自分はボールボーイとして外から見ている側でした。昨年、実際に戦ってみるとFC東京を堂々と引っ張り、アシストや得点という明確な結果を残していた。ルヴァンカップでも対戦しているんですけど、その時はFKでゴールを決められましたね。今は自分と大きな差がありますけど、絶対に負けたくないって気持ちは強い。それは僕だけじゃなくて、(同学年の)西川潤選手や斉藤光毅選手も同じだと思います。同世代同士でいい競争をしながら、高め合えれば理想的ですね」

18歳のリーダーシップ

 久保のように、いつかは自分も海外に羽ばたきたいという思いはもちろん抱いている。東京五輪が1年延期となり、来年に開催される大舞台に立つことができれば、その夢も一気に近づいてきそうだ。鳥栖からは鎌田大地がドイツへ渡って実績を積み上げているが、アカデミー生え抜き選手の海外移籍成功例はまだない。松岡が記念すべき1人目になれれば、経営不振がささやかれるチームにとっても、希望の光になるはずだ。

「鎌田選手みたいに海外に行って活躍することで、鳥栖に還元されるものは多いと思うんです。サガン鳥栖ってチームの存在を広く知ってもらいたいと思うし、そのために僕はできることをやらないといけないと考えています。まずはプロ2年目の今年が大事。結果にこだわるつもりですし、自分が出た試合の勝率を上げないといけない。自分が周りを引っ張り上げるくらいのリーダーシップを見せていきたいです」

 目を輝かせる若武者はJリーグ再開後にどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。攻守両面でより存在感を高める小柄なダイナモの一挙手一投足が今から待ち遠しい。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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