Jリーグの戦術はどう変わるか? 必須となった“ポジショナルプレー”とは【Jリーグ戦術の潮流・前編】

昨季、魅力的かつ機能的なサッカーを披露した横浜F・マリノス。彼らがシティ・フットボール・グループと提携し、15年ぶりにJ1優勝を果たしたことで、他のクラブも世界最先端の戦術を知り、チームに落とし込む作業は必須となっていくことだろう。プレシーズン、各チームのキャンプを取材した河治良幸氏がレポートした3/6発売の『フットボール批評issue27』から一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:河治良幸)

2020年03月29日(Sun)9時00分配信

text by 河治良幸 photo Editorial Staff
Tags: , , , , , , ,

横浜F・マリノスとヴィッセル神戸が演じたモダンな一戦

Jリーグ
【写真:フットボール批評編集部】

 2020年の新シーズンに向けて「新しいことにトライしている」という言葉を選手から聞くことが多い。そこには基本フォーメーションの変更も含まれるが、概念的なベースにあるのは“立ち位置”で優位性を出して行くこと、そして“再現性”を高めることだ。

【今シーズンのJリーグはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 “ポジショナルプレー”や“5レーン”といったワードはJリーグの指導者はもちろん、選手たちにも入ってきているようだが、そうした認識を持って海外のサッカーを観戦することと、チームに落とし込んで行くことでは次元が違う。

 これまでJリーグのスタンダードだったボールに人をかけて、距離感と連動性で崩して行く戦い方そのものも欧州ベースの戦い方に全く通用しないわけではない。それでもJリーグの戦術志向に確かな変化が出て来ているのは単なる流行だけではなく、現場レベルの問題意識や危機感が生まれているからだ。

 “ポジショナルプレー”は本誌で何度も登場して語られているので、基本的な概念の説明は割愛するが、戦術に落とし込む上ではボール周辺に人を常に密集させるのではなく、
ワイドに幅を取りながら自分たちでスペースを作り、そこを活用して攻めるスタイルが多くのチームに共通している。

 いつインサイドのスペースを使うのか、あるいはアウトサイドで攻め切るのか、ウイングとサイドバックの関係性などは様々な形があるが、相手との関係を見ながらチームとして意図的に繰り出せるようにしたいということが基本的なビジョンだ。

 さらに右サイドからチャンスを作るために中央や逆サイドの選手がボールサイドに寄せてしまうことで、最終的に仕留めたいゴール前に人がいなくなる現象が起きないように、ボールの無いサイドの選手は“メインテイン・ポジション”をして我慢することで、相手のディフェンスがストレッチされた状態になり、2列目から中央のスペースに入ってフィニッシュに絡むといった攻撃も意図的に繰り出しやすくなる。

 そうした戦い方のベースにあるのは自分たちでボールを持って、相手から主導権を握るということだ。リーグ王者の横浜F・マリノスと天皇杯チャンピオンのヴィッセル神戸によるゼロックス・スーパー杯はモダンな欧州サッカーの潮流をくんだチーム同士の激突であり、ボールと立ち位置の両方で主導権を奪い合う戦いとなった。

 “シティ・フットボール・グループ”のメソッドを取り入れ、パスワークを主体とする“アタッキングフットボール”を標榜するアンジェ・ポステコグルー監督が率いる横浜F・マリノス。

 バルセロナのスタイルを1つの理想としながら、ドイツ人のトルステン・フィンク監督がタイトなゾーンディフェンスを植え付けているヴィッセル神戸。

 横浜F・マリノスは攻撃の主軸であるマルコス・ジュニオールをトップ下に配置する4-2-3-1、一方のヴィッセル神戸は3-4-2-1のボランチに名手のイニエスタを配する布陣で、具体的な攻め方なども違う。

 しかしながらハイラインをベースに主導権を握り、攻撃の幅を取りながらスペースを作り、突いていくビジョンには共通性がある。ここ最近で注目されるようになった“再現性”のヒントもそこにあり、新しく“ポジショナルプレー”の原理を導入するチームにとっても大いに参考になる要素だ。

(文:河治良幸)

4910078870404(1)

『フットボール批評issue27』


定価:本体1500円+税

<書籍概要>
プレーモデルから経営哲学、はたまた人間形成まで、ありとあらゆる“洋物”のフットボールメソッドが溢れ返るここ日本に、独自のフットボール論が醸成されていないと言えば実はそうでもない。
例えば27年目を迎えるJリーグ自体、“完熟”の域には達していないまでも、“成熟”の二文字がチラつくレベルに昇華している。
“洋物”への過度な依存は、“和物”の金言をフォーカスする作業を怠っているからにすぎない。
フロント、プレーヤー、無論、サポーターにも一家言が備わりつつある時代になっていることを思えば、舶来のメソッドばかりを追いかけるのもそろそろどうかという気がしている。
経営、バンディエラ、キャリアメーク、データ、サポーターなどさまざなま分野に、それこそ秀でた国産のフットボール論は転がっている。
弊誌が見初めた“Jのインフルエンサー”による至言に、まずは耳を傾けてはいかがか。

詳細はこちらから

【了】

新着記事

↑top