サンフレッチェ広島、松本泰志が向き合う自らの課題。大先輩たちの背中を超えてゆけ【東京五輪世代の今(13)】

新型コロナウィルス感染拡大の影響でJリーグの再開時期が未定になり、東京五輪は今夏の開催が見送られることが決まった。思いがけずおとずれた中断期間に、東京五輪世代の選手たちは何を思うのか。森保一監督率いるU-21日本代表の立ち上げ時から招集され続けてきたサンフレッチェ広島のMF松本泰志にその胸中を聞いた。(取材・文:元川悦子、取材日:2020年3月26日)

2020年04月11日(Sat)10時00分配信

text by 元川悦子 photo Getty Images
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森保ジャパン立ち上げメンバーの1人として

松本泰志
【写真:Getty Images】

 新型コロナウィルスの感染拡大の収束が見えず、ついにJリーグは再開予定を白紙に戻す決断を下した。「第5回新型コロナウィルス対策連絡会議」の専門家チームも「できるだけ遅らせた方がいい」と発言。J1再開は6月以降にずれ込む公算が大きくなった。

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 となると、5月9日を目指して調整している選手たちは大変だ。サンフレッチェ広島も3月28日から6日間のオフを経て、4月3日から再始動したが、再び先が見えなくなってしまった。城福浩監督も今後、どのようにチームと個人をレベルアップさせていくのか頭を悩ませているに違いない。

 それでも2月23日のJ1開幕戦・鹿島アントラーズ戦に出場できなかった選手たちにとってはある意味、チャンスと言えるかもしれない。東京五輪代表候補の1人であるボランチの松本泰志は「チームで練習からしっかりパフォーマンスを発揮して、ひたむきにやっていければいいと思います」と気を引き締めていた。

 松本と言えば、テクニック志向の埼玉・昌平高校から2017年に広島入りし、2018年から徐々に頭角を現してきた選手。日本代表の森保一監督からも一目置かれ、東京五輪代表の立ち上げとなった2017年12月のM-150カップからチームに帯同。

 2018年6月のトゥーロン国際大会や同年8月のアジア大会に参戦し、2019年にはコパ・アメリカに挑むA代表入りも果たした。出場機会こそなかったものの、川島永嗣や岡崎慎司、柴崎岳らワールドカップ経験者とともに時間を過ごすことでより高いレベルに目覚めたのは間違いない。

「足りない」と自覚する部分は…

 今年も1月のAFC U-23選手権のメンバーに入り、2月のJリーグキックオフカンファレンスに広島の選手代表として参加するなど、注目度は大いに高まっていた。ところが、2月16日のYBCルヴァンカップ初戦・横浜FC戦とJ1開幕・鹿島戦で立て続けにベンチ外。これには松本も危機感を抱いたことだろう。

「自分に足りないのは守備の部分。城福さんにも『運動量を多くして、常にボールに関わり続けろ』と言われますけど、そこを強化できればベンチ入りも試合出場も見えてくると思うんです。ウチにはアオさん(青山敏弘)と(川辺)駿くんという優れたボランチがいますけど、守りの面で突出した選手はいない。

そういう意味でも自分自身が守備力を高めていくことが何よりも大事だと思います。球際の部分やフィジカルコンタクトの強化は必須ですね。そのうえで、攻撃もしっかりリズムを作って、アクセントになれるようにしないといけない。攻撃面でも得点やアシストなど決定的な仕事に関わることを意識してやっていきます」

 今季の広島のボランチは川辺と大ベテランの青山が確かに主戦ではあるが、左サイドバックもこなせる若手の東俊希、トップ下からコンバートされつつある野津田岳人もいて、大激戦なのは間違いない。森保監督から一定の評価を受けている松本と言えども、この中で序列を上げていかなければ、東京五輪には手が届きそうもない。

 東京五輪代表にも欧州組の中山雄太や板倉滉、川崎フロンターレで中軸を担う田中碧とボランチには有力者が少なくない。本大会が1年延期になったことによって不透明になっていた年齢制限問題も「U-24」に落ち着きそうな気配で、1998年生まれの松本はこれまで通りの競争を強いられる。やはり、この中断期間にどれだけ地力を養えるかが勝負なのだ。

森崎和幸や青山を見習って「常に前を見る」

松本泰志
【写真:Getty Images】

「五輪が1年後に延期されたことを聞いた時は『ああ、そうなんだ』というくらいにしか思わなかったけど、延期になったことでみんな考えることがあるし、またフラットな状況にもなる。監督も幅広く見るようになると思うし、自分もこれまでのことは1回リセットしてまたイチからアピールして、次に選ばれるようにチャレンジしていけたらいいと思います」

 広島の先輩ボランチである森崎和幸も青山も五輪代表時代には予選を戦いながら、本大会出場を逃すという悔しい経験をした。彼らの一挙手一投足を間近で見てきた松本は、先輩たちが立てなかった大舞台の重みをより強く感じたうえで、ここからの1年間、愚直にレベルアップに勤しんでいく必要がある。

「カズさん(森崎)もアオさんもワンステップで蹴れる距離が長いですし、常に前を見ているので、そういう部分は見習わないといけないと常日頃から感じています。FWの動きを見逃さずにサッカーをしているので、自分もその意識を高めていく必要がある。

今季のサンフレッチェにはレアンドロ・ペレイラやドウグラス・ヴィエイラのようないい前線の選手たちがいますし、新加入の永井龍くんもすごいいい動き出しをしてくれる。彼らにしっかりとパスを入れられるようになれば、自分の活躍の場も広がると思います。あらゆる面で成長できるように頑張っていきます」

 J1再開がいつになるか分からないが、再開後に超過密日程になることだけは間違いない。青山も「2チーム分必要」と話していたが、ボランチもさまざまな組み合わせで戦えるようになれば広島の5年ぶりの王座奪回も現実味を帯びてくる。そのためにも松本には大きな飛躍を求めたいところ。苦しい今の自己研鑽が先々につながっていくことを、彼には今一度、強く自覚してほしいものである。

(取材・文:元川悦子、取材日:2020年3月26日)

【了】

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