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日本代表 4年前

サンフレッチェ広島の新10番、森島司の気づき。アジアで苦戦し「周りから叩かれたけど…」【東京五輪世代の今(14)】

新型コロナウィルス感染拡大の影響でJリーグの再開時期が未定になり、東京五輪は今夏の開催が見送られることが決まった。思いがけずおとずれた中断期間に、東京五輪世代の選手たちは何を思うのか。昨年A代表デビューも飾り、今季からサンフレッチェ広島の10番を背負う森島司に、その胸中を聞いた。(取材・文:元川悦子、取材日:2020年3月26日)

text by 元川悦子 photo by Getty Images

A代表も経験し飛躍した2019年

森島司
【写真:Getty Images】

 東京都や大阪府など7都府県に緊急事態宣言が発令され、当該地域内に本拠地を置くJクラブが無期限の活動休止に追い込まれる中、新型コロナウィルスの感染者が少ない中国地方のサンフレッチェ広島は活動を続けている。3月28日から4月2日は6連休を取ったものの、4月3日からトレーニングを再開。城福浩監督も先の見えない中、選手のコンディション維持に神経を尖らせている様子だ。

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「最初に中断になった2月末から3月の頭までの1週間弱、体調不良になって練習を抜けたんです。復帰してから3月末まではコンディションを戻すことを最優先に考えてきましたけど、今は普通にやれています。サンフレッチェは強度の高い練習をしっかりやるチーム。真面目な選手が多いし、外国人も一生懸命やっていますし、そこがチームの色かなと思うので、それを維持しながら、再開に向けてもっと高めていけたらいいかなと思います」

 今季からエースナンバー「10」を背負う森島司はキッパリと言う。

 2019年はJ1リーグ戦24試合出場3得点とシーズンを通して稼働し、森保一監督率いる東京五輪代表にも参戦。12月にはEAFF E-1サッカー選手権でA代表デビューを果たすなど、森島は大きく飛躍した。今年に入ってからも1月のAFC U-23選手権に出場し、2月23日のJ1開幕戦・鹿島アントラーズ戦でダメ押しゴールを挙げるなど、まずまずの滑り出しを見せていた。

「周りからも叩かれましたけど…」

 だが、ご存じの通り、新型コロナウィルスの感染拡大によってJリーグがストップ。彼自身もそのタイミングで体調を崩してしまった。オフシーズンがほとんどなく、超過密日程が続いたことで、一気に疲れが出たのかもしれない。今は先の見えない長い長い中断期間ではあるが、森島にとっては心身両面で足もとを見つめ直し、さらに大きく成長するためのいい時間なのかもしれない。

「昨年のE-1で『よかった』みたいに言われましたけど、いいパフォーマンスを見せられたのは相手が弱かった時だけ。韓国戦になったら全然だった。全体的なスピード感とかがまるで違ったので、慣れかなと感じましたね。ああいう相手にフィジカルでぶつかるのはムリ。もちろんパワーはつけますけど、勝てるとは思っていないので、違うところで勝てればいいかなと。判断のスピードや技術を磨くことが大事ですね。

1月のAFC U-23選手権はレベルの低い試合をしていただけだと思う。僕自身も別にいいプレーをしていないし、内容も忘れました。チームとしても難しかった。周りからも結構、叩かれましたけど、アジアと世界は相手が違うから。アジアは引いているけど、世界はガンガン来るし、むしろガンガン来た方がやりやすい。前にサンフレッチェがやっていたサッカーもそういう相手を剥がして前まで行っていた。森保さんもその方が得意なんじゃないかと思いますね」

 強気の発言をする森島にとって、東京五輪の出場資格がどうなるかは1つの懸案事項だった。本人も「ルールは『97年(1月1日生まれ以降)』って書いていると誰かが言っていたけど、もし資格がなくなるんだったら複雑ですね」と五輪延期が決まった時点では疑心暗鬼になっていた。

 だが、国際サッカー連盟(FIFA)のワーキンググループが規定維持の方針を出し、森嶋のような1997年生まれの選手たちが救済される可能性が高まった。そうなれば、世界の強豪が集う1年後を目指して本気で取り組めるのだ。

広島の10番として新たな歴史を作れるか

森島司
【写真:Getty Images】

 そのためにも、混乱の続く2020年を大事にしなければならない。日本サッカー協会が5月末までの公式大会やトレセン活動を中止し、Jリーグの再開も6月以降にズレ込むことは確実。選手はピークをどこに持って行ったらいいか分からず、難しい調整を強いられることになるが、そこでメンタル面を含めて自分を鍛え上げることができれば、森島は広島の10番に相応しいプレーヤーになれるのではないだろうか。

「まずチームとしての底上げは必須ですね。再開されたら連戦になるし、勢いに乗った者勝ちの部分もあります。2チーム分の戦力が必要なのは間違いないですね。その分、サポーターはいろいろな選手を見られるようになると思う。自分を含めて全員がいいプレーをしていかないとタイトルは取れない。今のサンフレッチェは優勝できる力はあるので、しっかりと狙っていきたいです。

東京五輪が1年延びたことで、自分が強いチームで出続けることもより重要になると思います。むしろ海外でやるよりは、日本で出続けて優勝した方がいいかもしれない。一概には海外とJリーグを比べられないですけど、国内にいる限りはそこ(東京五輪)を狙っていくつもりですし、A代表にも選ばれるように頑張ります」

 オリジナル10の名門・広島の歴代10番と言えば、久保竜彦、柏木陽介、高萩洋次郎、浅野拓磨と日本代表経験者がズラリと並んでいる。しかし、そのいずれもワールドカップには出場していない。森島にはその壁を超えてほしいという大きな期待が寄せられている。

 新型コロナウィルスの収束が見えず、本当に難しい今季だが、森島には5年ぶりのJ1タイトル獲得の原動力となり、大舞台への力強い一歩を踏み出してほしいものだ。

(取材・文:元川悦子、取材日:2020年3月26日)

【了】

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