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Jリーグ 4年前

レアルとバルサの選手は仲良しなのに…。アベノマスクは失敗した策だが…。コロナウイルスの権威に聞く【新観戦マニュアル 前編】

終息が見えないコロナ禍のなか、Jリーグの再開が正式に決定された。我々サッカーファン、サポーターは今後、サッカーとどう付き合い、向き合っていけばよいのか。正しい「観戦マニュアル」とはいかに―。サッカーを愛してやまない感染症専門医の第一人者・岩田健太郎教授がすべてのサッカーピープルに向けて、新しいガイドライン「サッカー行動マニュアル」の策定を試みた。6月12日発売の『サッカーと感染症』から、一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:岩田健太郎)

text by 岩田健太郎 photo by Getty Images

ピッチ内とピッチ外は別物

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【写真:Getty Images】

 差別、分断という話でいうと、僕は昔、マンチェスターに1年間住んでいたことがあるんですよ。半分は英語留学みたいなものです。二十歳くらいの時ですね。

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 1991年でまだマンチェスター・シティもマンチェスター・ユナイテッドも弱かった頃です。プレミアリーグ誕生前夜でアレックス・ファーガソンがユナイテッドの監督になったばかりの頃でした。まだユナイテッドもそんなに強くない。シティは全然弱い。

 僕は試合が好きだったので、毎週どちらかがホームで観られるので、今はなくなった安い立ち見席で観ていたんです。入場料は当時、年間チケットで1試合あたり5ポンドくらい。安かったですよ。年間チケットを持っていたのでシーズンを通して観れたんですね。シティのホームの時はユナイテッドは大体アウェーなので、オールド・トラフォードとメイン・ロードを行ったり来たりしていました。

 当然、ダービーがあると両チームのサポーターはお互いにとても敵対的で、相手チームは大嫌い。僕みたいに両方のチームを観る、どちらも好き、というのは変わった人ですね。ユナイテッドファンはシティは大嫌い。シティファンも当然そうでイングランドに限らずイギリスはみんなそうですよね。

 スコットランドだったら、レンジャーズとセルティック。宗教的な違いも大きいみたいですね。それからトッテナム・ホットスパーとアーセナルもそうですし、リヴァプールとエヴァートンもそうですね。全部超敵対的な関係なんですね。

 ただ、選手たちは意外と仲は良いんですよね。例えばレアル・マドリーとバルセロナの選手たちは、お互いスペイン代表が多いということで仲良しだと言いますよね。次元が上のところでは仲良しになれるので、コロナウイルスの問題に無理やり絡めるなら、一般市民の間ではアベノマスクの評価などで、もう一切相容れない感じじゃないですか。

 前述のように、僕はアベノマスクは感染症対策的にも経済対策的にも失敗した策だと思っています。しかし、個人にせよ集団にせよ失敗くらいするものです。未知の領域の多い新興感染症ならなおさらです。失敗を一切認めず、一つの失敗でその存在を全否定するのは間違いです。アベノマスクの失敗は、安倍政権や安倍首相を全否定するものではありません。

 サッカーはもともと「ミスの多いスポーツ」です。ミスをいちいちあげつらって「ミスをするな」「ミスをするから悪かったんだ」と誹謗中傷を繰り返して、選手やチームが良くなることはまずありませんよね(逆のことはあっても)。

 レアルとバルサの選手のようにライバル同士で、試合中は激しく戦い合っても、お互いの存在そのものは否定せず、有効的に振る舞うのがより成熟した人間関係だと僕は思います。

 安倍の味方か安倍の敵かという議論ではなくて、一つひとつの方策が、良かったのか悪かったのかということを各論的に議論できると、もう少し成熟した議論ができると思っているんですけど難しいですね。

(文:岩田健太郎)

感染症対策の権威にして熱烈なサッカーファンである岩田健太郎教授。書籍本編ではイニエスタとの貴重なエピソードも収録! 今だからこそ聞きたい新たな「サッカー行動マニュアル」の詳細は↓をクリック!

9784862555649

『サッカーと感染症』


定価:本体1,300円+税

<書籍概要>
 長いスパンで感染症と付き合わざるを得ないWithコロナ時代に突入した今、もちろんサッカー界も新しい形態、思考にモデルチェンジしていく必要がある。

 サッカーを愛してやまない感染症専門医の第一人者・岩田健太郎教授の“サッカー異論”をフットボール批評編集部がまとめ、サポーター、選手、指導者……すべてのサッカーピープルに向けて、新しいガイドライン「サッカー行動マニュアル」の策定を試みた。

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【了】

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