本田圭佑、2戦連続キャプテンも不発の理由。ボタフォゴ監督が「馬鹿げている」と激怒する強行再開の是非

リオデジャネイロ州選手権1部の後期リーグ第5節が現地1日に開催され、ボタフォゴとポルトゥゲーザが0-0で引き分けた。過密日程でキャプテンとして2試合連続の先発を果たした本田圭佑は、途中交代。なかなかパフォーマンスが上がらないのには、はっきりとした理由がある。選手の命すらないがしろにされ、監督も怒りが収まらない。(文:舩木渉)

2020年07月03日(Fri)8時00分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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2試合連続で腕章を巻く

本田圭佑
【写真:Getty Images】

 ブラジルでもサッカー界が動き出し、リオデジャネイロ州では公式戦が開催され始めている。

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 本田圭佑が所属するボタフォゴは現地1日にカンペオナート・カリオカ・セリエA(リオデジャネイロ州選手権1部)の後期リーグ第5節でポルトゥゲーザと対戦し、スコアレスドローに終わった。

 再開初戦だった28日の前節カボフリエンシ戦は6-2と大勝し、多くのチャンスが生まれた試合でもあった。しかし、ポルトゥゲーザ戦は中2日という厳しい日程の影響もあり、試合全体のテンポが上がらなかった。

 本田は2試合連続でキャプテンマークを巻いて先発出場した。カボフリエンシ戦は4-2-3-1のダブルボランチの一角だったが、今節のポルトゥゲーザ戦は4-3-3のインサイドハーフに近いポジションを任された。

 ボタフォゴの先発メンバーは前節から4人変更。GKのジエゴ・カヴァリエリ以下、ディフェンスラインに右からフェルナンド、マルセロ・ベネヴェヌート、カヌ、ギリェルメ・サントスが入り、守備的な中盤にカイオ・アレシャンドレが構える。そして10番を背負うブルーノ・ナザリオがトップ下的に振る舞い、本田は攻守に幅広く動いてバランスをとる中間的な役割だった。前線は右ウィングにルイス・フェルナンド、左ウィングにルイス・エンリケ、1トップにペドロ・ハウールの3トップだ。

 ポルトゥゲーザのシステムは5-4-1で、GKはニウトン・ラファエル、5バックは右からルイス・グスタヴォ、ジウシーニョ、ジエゴ・ゲラ、マルカン、マウロ・ガブリエルが入り、その前にエンリケとホマリーニョがダブルボランチで起用された。そして右サイドMFにアンドレ・シウバ、左サイドMFにチャイ、前線1トップにアドリアーノが陣取る。

 ボタフォゴはブラジル全国選手権1部、一方のポルトゥゲーザはブラジル全国選手権4部のクラブということで、本来なら格の差があるはず。しかし、最初のビッグチャンスを作ったのはホームのポルトゥゲーザだった。

 3分、ホマリーニョのロングパスに反応したチャイがボタフォゴのディフェンスラインを破ってペナルティエリア内右に侵入。GKと1対1の場面を迎える。この大きなピンチはジエゴ・カヴァリエリが飛び出してシュートをブロックし、なんとか切り抜けた。

チャンスには絡んだが…

 次のビッグチャンスは本田に訪れた。10分、右コーナーキックの場面でヘッドバンドを巻いた背番号4がニアサイドに頭から突っ込み、惜しいヘディングシュートを放つ。惜しくもゴール上に外れ、ボタフォゴに先制点をもたらすことはできなかった。

 その後も互いにチャンスは作ったが、なかなかゴールに結びつかない。26分と前半アディショナルタイムの46分にはペドロ・ハウールの渾身のフィニッシュがゴールポストを直撃。46分の場面ではセットプレーにつながって立て続けにチャンスが生まれながら、ゴール前を固めるポルトゥゲーザの壁に阻まれた。フェルナンドのヘディングシュートもクロスバーを叩き、こぼれ球に詰めてもGKの好セーブに遭うなど、ボタフォゴはゴールネットを揺らせなかった。

 前半はボタフォゴが支配しながら、再三のチャンスを生かせず。背番号10のブルーノ・ナザリオや、崩しのカギになるはずだったルイス・エンリケが沈黙し、無得点のまま後半へ突入することとなった。

 試合が再開してすぐの48分、本田が自慢の左足でチャンスを演出した。右サイドからふわりとした弾道のフリーキックをペナルティエリア内に入れると、マルセロ・ベネヴェヌートがヘディングシュート。しかし、枠をとらえきれずボールはゴールの右に逸れてしまった。

 その後、本田は59分にチャイへのファウルでイエローカードを受け、71分にアレックス・サンタナとの交代でピッチを退いた。試合当日の午前中に自身のYouTubeチャンネルで6人の著名人との連続トークライブを生配信していた日本人キャプテンは、2試合連続のフル出場とはならなかった。

 後半もボタフォゴがボールを支配し、ポルトゥゲーザがカウンターを狙う展開で、互いにいくつもチャンスを作ったものの、両チームのGKの奮闘もあってゴールが遠かった。

 75分には直前に交代でピッチに入ったばかりのピメンタの右サイド突破から、ゴール前のチャイに決定的なパスが入ってポルトゥゲーザに大チャンスが訪れる。だが、ボタフォゴのベテラン守護神ジエゴ・カヴァリエリが至近距離からの反転シュートを見事に弾き出して得点を許さなかった。

ボタフォゴは次のラウンドへ

ボタフォゴ
【写真:Getty Images】

 冒頭で述べた通り、試合はこのまま両チームともゴールを奪えずスコアレスドローとなった。間違いなくヒーローは両チームのGKたちで、特にかつてリバプールにも所属した経験を持つボタフォゴのジエゴ・カヴァリエリは決定的なピンチをいくつも救って健在ぶりをアピールしていた。

 本田は71分間のプレーで、自身も惜しいヘディングシュートを放つなど確実にチャンスには絡んでいた。球足の速いパスを出す機会が少なかったのは、ボコボコでピッチ状態の劣悪なアウェイのスタジアム環境も影響していただろう。とはいえ動きは重めで、試合全体を通して圧倒的な存在感を放てていたわけではない。調整不足は明らかだが、その理由は後に述べることにしよう。

 チームとして勝ち点1の意味は大きかった。ボタフォゴは5試合を終えて後期リーグのグループAで2位となり、優勝決定プレーオフの準決勝進出を決めた。同日に行われたフラメンゴがボアヴィスタに2-0の勝利を収めたことで勝ち点を15に伸ばして圧倒的首位。ボアヴィスタは勝てばボタフォゴを上回れたものの、勝ち点7にとどまって3位に。ボタフォゴとわずか1ポイント差で準決勝への切符を逃した。

 試合後、ボタフォゴを率いるパウロ・アウトゥオリ監督は「重要なのはこの短い期間で試合をこなす中で多くの選手を起用し、レベルを均等化させることだった」と、先発メンバーを大幅に入れ替えながらのドローに一定の成果を得たようだった。

 本来なら次は5日に後期リーグ準決勝の試合が行われる予定となっている。ボタフォゴの対戦相手はグループBの首位クラブなので、おそらくフルミネンセとなるだろう。アウトゥオリ監督は「可能な限り回復して日曜日(5日)の試合に備えたい」と述べた。

 実は、もともとボタフォゴとフルミネンセは公式戦の再開に「早すぎる」と強固に反対してきた立場でもある。

 ブラジルでは6月18日に公式戦が再開したものの、すぐに一旦中止に。あらためてリオ州の各クラブや協会が会合を開いてリーグ戦再開を確認したが、当初ボタフォゴとフルミネンセは不参加を表明し、6月23日の時点でそれは認められていた。

アウトゥオリ監督激怒の理由

パウロ・アウトゥオリ
【写真:Getty Images】

 ところが一転して6月25日にリオ州のスポーツ裁判所から、ボタフォゴとフルミネンセに対して「リーグ不参加の場合、多額の罰金や追放の可能性がある」と通告され、公式戦に参加するしかなくなってしまった。

 ボタフォゴの選手たちは、わずか3日間の全体練習で先月28日のカボフリエンシ戦に臨み、そこから中2日でポルトゥゲーザ戦を戦った。つまりどう考えてもコンディションが万全なわけがなく、選手たちは感染症のリスクを感じながら望まない試合に強制的に出場させられている状態なのだ。本田のパフォーマンスが上がりきらない理由も、そこにある。

 新型コロナウイルスによって6万人以上の死者を出しているブラジルで、サッカーの公式戦が再開しているのはリオ州だけ。新型コロナウイルスの死者の比較的少ない他の州では一切がストップしているのにもかかわらず、1万人以上の死者が出ているリオ州は強行開催に踏み切った。

 リーグ戦再開に反対する意見を述べただけで15日間の指揮停止処分(のちに撤回された)を食らったボタフォゴのアウトゥオリ監督も、怒りのあまり一度は辞任を表明したし、チームの中に新型コロナウイルスの陽性反応が出た選手もいる。クラブには感染症対策に必要な最低限の備品も足りず、本田たちは命がけの状況でプレーを続けているのである。

 かつて鹿島アントラーズやセレッソ大阪も率いた指揮官は、ポルトゥゲーザ戦を終えて「今でも公式戦再開は馬鹿げている。選手たちの体を無視しているんだ。最も重要なのは命なのだから」と、改めてリーグ戦強行に対する怒りを表明した。

 本田もアウトゥオリ監督に対する処分を受けて「なぜだ? 彼は意見を言っただけで、正しいことをした。言論の自由はどこに?」とツイートするなど、リーグ戦開催を何としてでも開催したがる運営側の強硬な姿勢に疑問を呈していた。

 ブラジルでの公式戦の様子を見ていると、Jリーグのように綿密な感染予防のプロトコルが確実に運用されているようには思えない。もちろん選手たちが対策に特別気を配っている様子もない。

 果たして世界的に大きな影響を及ぼしている感染症のリスクを無視し、ただでさえ万全のコンディションではない選手たちに命の危険を冒してまでプレーすることを要求しているのは正しいのか。5日にボタフォゴ対フルミネンセが無事開催の運びとなれば、本田ら選手たちが起こすアクションにも注目したい。

(文:舩木渉)

【了】

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