「ルヴァン杯は迷惑でしかない」今こそ見直しを。J1にメリットを、下部カテゴリーに挑戦の機会を【英国人の視点】

未曾有のパンデミックにより、今季の明治安田生命Jリーグは史上例を見ないほどの過密日程となった。さらに、それに拍車をかけるように、YBCルヴァンカップの試合が組み込まれている。度重なる改正を経て現行の大会方式となったルヴァン杯だが、過密日程や控えメンバーの起用などの問題点が存在している。日本在住9年を数える英国人ジャーナリストが、大会の存在意義を再考し、理想の方式を提言する。(文:ショーン・キャロル)

2020年08月12日(Wed)10時00分配信

text by ショーン・キャロル photo Getty Images
Tags: , , , , , , , , ,

過密日程に拍車をかけるルヴァン杯の存在

ルヴァンカップ
【写真:Getty Images】

 8月1日と2日の週末に第8節を終えた時点で、J1の各クラブは4週間で7試合というスケジュールを戦い抜いてきたことになる。選手たちもスタッフも、ファンたちでさえも、一旦ここで休憩を入れることを望んでもおかしくはなかったかもしれない。

【今シーズンのJリーグはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 だが今年のサッカーは全てが止まってしまうか、そうでなければ止まることなく進み続けるか、どちらかしかないようだ。現在は完全にその後者の時期を迎えた。水曜日にはYBCルヴァンカップのグループステージが組み込まれ、ミッドウィークにも試合が開催され続けている。

 実際のところ今年のリーグカップは、東京五輪開催による公式戦中断が予定されることを考慮し、J1開幕戦より前に始まった。だがわずか1節のみを戦い終えたところで、新型コロナウイルスの影響で中断。大会方式にも手が加えられ、グループステージは各チームがそれぞれの相手と1回のみ対戦することに。松本山雅FCは25週間でJ2の41試合を戦わなければならないため、この戦いからは外れることになった。

 これまでも、少なくとも決勝以外についてはほとんど迷惑でしかないと考える者が多かった。現在のこの状況は、大会の役割について改めて論じるのに良い機会になるだろう。

大会方式の変遷

 Jリーグの盛大な開幕を翌年に控えた1992年に、その先駆けとなる大会として始まったヤマザキナビスコカップ(当時の名称)は、日本のプロサッカーの歴史において特別な位置を占めている。だが大会方式は確立された状態には程遠く、ほぼ毎年のように何らかの変更が加えられてきた。

 例えば第1回大会はJリーグの創設メンバーである10チームによる単純なリーグ戦方式であり、上位4チームがその後準決勝を戦った。その翌年にはJリーグ10クラブと、加盟を希望する3クラブ(※詳細は後述)が2つのグループに分かれて戦い、その後決勝トーナメントへ。1994年は完全にトーナメント戦のみとなり、1996年には再びグループステージ制が復活した。

 1999年から2001年にかけては再びトーナメント戦に戻され、この短期間のみJ2クラブが参戦。2002年以降はJ1チームのみによるグループステージ+決勝トーナメントの形が定着し、そこから15年間はある程度落ち着いていたが、2017年にはプレーオフステージが導入され、2018年以降はJ2からも最大2チームがグループステージに組み込まれることになった。

 こういった変更が加えられてきたのはJリーグ全体の変遷に対応するためでもあった。だが、世界的なパンデミックなど発生しない普通の年でも各チームに極度の過密日程が課される中で、強豪チームは大会の終盤までベストメンバーを組もうとすることは滅多にない。

理想の大会方式

 今こそ改めて大会方式を見直すべきなのかもしれない。大会をシード無しのトーナメント方式に変更し、J1からJ3までの全クラブにJリーグ入りを目指すクラブまでを加え、新たな風を吹き込むのはどうだろうか。

 1チームの試合数は最大でも6試合となるため、J1クラブにとっても負担は軽減される。一方で下位カテゴリーのチームには、強豪チームと激突する貴重な経験と、誰もが大好きな“ジャイアントキリング”のチャンスがこれまで以上に与えられる。スタジアムを訪れるファンやテレビ視聴者からの関心も、やる気に欠けるトップリーグの2クラブのリザーブチーム同士の試合となっている現行のグループステージよりは高まることになる可能性が高い。

 シーズン終盤の決勝戦に至るまで、一発勝負の各ラウンドはおおよそ6週間に1回開催すればいい。Jリーグ準加盟クラブのうちランキング上位8チーム(現在存在するのは全部で9チーム)は、Jリーグの56クラブ(U-23チームを除く)とともに1回戦のオープン抽選から参加することで、ピッチ内外で将来の大舞台に適応できるかどうかを試す機会が得られることになる。前述の通り準加盟クラブの参加には前例もあり、新たなメンバーとなる可能性のあるクラブがJリーグでの戦いを体験すれば非常に大きな恩恵を得られることは証明されている。

Jクラブが増え続けるからこそ…

 例えばルヴァンカップの昨季王者である川崎フロンターレは、1998年に準加盟クラブとしてこの大会に初めて参加した。昨年の劇的な決勝でその川崎Fに敗れた北海道コンサドーレ札幌も1997年に同じ体験をしている。

 他にも過去に優勝を経験したチームのうち4つが、正式にJリーグへの昇格を勝ち取る前にこの大会にデビューしていた。1993年大会に準会員として参加したのは日立フットボールクラブ、フジタサッカークラブ、ヤマハフットボールクラブの3チーム。Jリーグ昇格後にはそれぞれ柏レイソル、ベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)、ジュビロ磐田を名乗ることになったクラブだ。

 2017年の王者であるセレッソ大阪も、1994年にJFLクラブとしてこの大会に初出場を果たした。現J1のベガルタ仙台(当時はブランメル仙台)とサガン鳥栖も、Jリーグ正式加盟前の1997年の大会に招待されている。

 プロサッカークラブの数が増え続けている今こそ、トップリーグで争うチームに対しては大会を合理化すると同時に、Jリーグに加わったFC琉球やブラウブリッツ秋田、Jリーグ参入を目指すヴィアティン三重といったクラブにチャンスを提供することでJリーグの拡大を祝う。そして、ジェフユナイテッド千葉や東京ヴェルディなどの低迷するかつての強豪にも、再びトップクラブと矛を交える舞台を与える。今がその最適なタイミングではないだろうか。

(文:ショーン・キャロル)

【了】

新着記事

↑top