ヴィッセル神戸の惨状、原因は監督にあらず。大補強も無に帰す根深い問題「三木谷オーナーの哲学は…」【英国人の視点】

ヴィッセル神戸は22日、トルステン・フィンク監督の退任を発表した。今年の元日には天皇杯制してクラブ悲願の初タイトルを獲得したが、今季は下位に沈んでいた。アンドレス・イニエスタら豪華なメンバーを揃えながらも、チームはそれに見合った結果を残せていない。フィンク前監督は在任時に、クラブが抱える問題を示唆している。(取材・文:ショーン・キャロル)

2020年09月27日(Sun)11時24分配信

text by ショーン・キャロル photo Getty Images
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今年もおとずれた監督交代

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【写真:加藤健一】

 もうそんな時期が、再び来ていたのだろうか。新型コロナウイルスの影響により2020シーズンがカオスな年であることは分かっていたが、ヴィッセル神戸が監督を交代させる時期がすでに来ていたとは気がついていなかったと認めざるを得ない。

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 フアン・マヌエル・リージョがクラブを去ったことについて書いたのはつい昨日のことだったかのように感じられる。実際には2019年4月であり、その後彼はペップ・グアルディオラのアシスタントとしてマンチェスター・シティに雇われてうまくやっているようだ。

 一方でヴィッセルはまだ「アジアNo.1クラブ」になりきれていない。それどころかJ1の上位半分にすら入っていない状況で、ノエビアスタジアムの出口の扉は再び開かれ、トルステン・フィンクも別れを告げることになった。

 ドイツ人指揮官の率いた今季のこれまでの戦いは率直に言って悲惨なものだった。監督退任時点で、ヴィッセルはリーグ戦19試合を戦って4勝しか挙げられず、勝ち点20で12位に位置していた。フィンクの最後の11試合ではわずか1勝であり、ルヴァンカップでは川崎フロンターレに0-6で粉砕された試合もあった。

 チームが好調とは程遠い状態だったことは確かだ。しかし、神戸にはよくあることで、問題の根は必ずしも指揮官にあったわけではない。

問題があるのは監督ではなく…

 昨年6月はじめにフィンクがやって来た時、ヴィッセルは14試合を終えて勝ち点14で13位。直近の9試合で1勝しか挙げられていなかった。フィンクもJ1でチームの調子を引き上げることはできなかったが、それは前任者たちも同じだった。フィンクの前に暫定監督として指揮を執った吉田孝行は7試合を率いて1勝5敗。またリージョも、2018年末に就任した時点と全く同じ順位であるリーグ10位という状況でチームを去ることになった。

 中位に甘んじるのがすっかり神戸の日常風景となっており、近年の派手な補強にいくら大金を投じようとも、依然としてトップリーグでの最高順位はネルシーニョが率いた2016年の7位から更新できていない。

 現時点で誰がチームの指揮を執っているかに問題があるのではなく、監督たちをサポートする体制や、彼らを導いていく明確な基本理念の欠如こそが問題である可能性が示唆されている。

 フィンクの場合は、リーグ戦での戦いは前任者たちと同様に困難なものではあったが、今年の元日には鹿島アントラーズを2-0で下し天皇杯を掲げてクラブ史上初のタイトルをもたらすことには成功していた。FUJI XEROX SUPERCUPでも3-3の激戦からPK戦でJ1王者の横浜F・マリノスを撃破し、2020年のヴィッセルはついにその支出に見合うだけの結果を出し始めるかと思われた。

 さらに初出場のAFCチャンピオンズリーグでも連勝スタートを飾り、その期待はさらに強められた。だがその一方で国内リーグの最初のホームゲーム2試合に勝つことができなかったのは、その後に露呈していく問題の前触れだった。結局フィンクの指揮下では、7月半ばの清水エスパルス戦がノエビアスタジアムでの今季唯一の勝利となった。

「三木谷オーナーの哲学は…」

「クラブとチームが強い気持ちで戦い続けることこそが何よりも重要だ。ハードワークとチームワーク、団結力がなければ自分たちの目標を達成することはできない。団結、それこそがこのクラブにとって何よりも重要なものだ」。今年2月、ヴィッセルが昨季の成功にさらなる上積みを加えていくためには何がカギになるかという質問にフィンクはそう答えていた。

 同時にフィンクは、2020シーズンに向けて大幅な選手の入れ替えがなかったことを喜びつつ、シーズンが進んでいく中でさらなるビッグネームを迎え入れるための動きが水面下で行われていることも認めていた。

「持続性のために非常に重要なことだ。同じチームで戦うことで若い選手たちを成長させ、若い選手をチームに加えていくこともできる。一方でスター選手も大勢いなければならない。それはある程度我々のクラブの、ミキタニ(三木谷浩史)の哲学でもあるし、ファンもスター選手を見たがっている。そのミックスをうまく扱うことができれば我々は成功できる。そうでなく、単に新しい選手を買い集めて多くの選手がクラブを出て行くのはあまり良いことではない。だが去年の我々はうまくやれたし、このままの哲学で続けていけることを願っている」

 楽天が話題性に富む補強に意欲的であることはもちろんヴィッセルというチームの大きな特徴であり、恵みでもあれば呪いでもある。アンドレス・イニエスタらの大型補強がクラブの格を引き上げる一方で、チームへの期待も高められてきた。

「誰が出場するかを決めるのは…」

「夏には当然1人か2人の新しい選手を獲得することになるだろう。だが何人も欲しいわけではない。大きな変化を望んではいない。それは私にとって非常に大事なことだ。クラブも私と同じ戦略を持っていることを願いたい。以前にも言ったのと同じことだが、チームは今のように団結し続けなければならない。ひとつの方向へ向かうこと、それがきわめて重要だ」とフィンクは話していた。

 これは、監督とオーナーが完全には同意見ではないことを示唆する言葉でもあった。だがフィンクは、三木谷氏が日々のクラブ運営に積極的な役割を果たしていることを明確にする一方で、現場でサッカーに関する決断を下すのは最終的には監督の自分であること、またチームがさらなる成功を収められると信じていることも強調していた。

「連絡は取り合っている。彼にはアイディアがあるし、我々のボスだ。クラブに大金もつぎ込んできた。色々なことについて私と話をするのは彼にとっても大事なことだし、彼からの提案も私にとって助けになる。だが誰が出場するのか、どういうシステムで戦うかを決めるのは最終的に私でなければならない。これまではそれがうまくいっていたと思うし、今後もうまく機能し続けると思う」

「私には時間があるという確信を常に持ち続けなければならない。過去にもこのクラブにスター選手たちはいたが、彼らは成功できなかっただろう? この6、7ヶ月間に我々がやってきたことは、どこが以前よりも良かったのだろうか。皆さんがどう考えているか、我々のチームをどう見てきたかは分からないが、戦術面や技術面だけではない。戦術や技術に関しては過去の監督たちも優れていた。だが何よりも重要なのは人のマネジメントだ。そういった部分にしっかり取り組めば成功することができる。過去6ヶ月間の我々はひとつのチーム、ひとつのクラブ、ひとつのファミリーだった。このまま続けていこう」

 だがフィンクにとってもクラブのファンにとっても残念なことに、継続という言葉はヴィッセルの辞書にはないようだ。すでに途方も無い規模の出費を重ねてきたが、自分たちがなりたいと願う何らかの姿を目指すため、再び計画段階へと立ち戻ろうとしている。

(取材・文:ショーン・キャロル)

【了】

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