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リバプール、ジョッタはどのように爆発したのか? “予想外”の大勝の理由。そして追い込まれる南野拓実【欧州CL】

チャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグD組第3節、アタランタ対リバプールが現地時間3日に行われ、0-5でアウェイチームが勝利した。お互いにアグレッシブなサッカーを持ち味とするが、思わぬ大差がついた。そんなゲームで主役となったのはディオゴ・ジョッタ。南野拓実はもちろん、ロベルト・フィルミーノの立場さえも揺るがすほどの存在感を示している。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

思わぬ大差

リバプール
【写真:Getty Images】

 激しく、動きのあるゲームになるだろうというのは容易に想像できたが、これほど一方的な内容になるとは正直思わなかった。2018/19シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)を制したリバプールはやはり強い、ということを再認識させられた。

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 アウェイチームは3日前に行われたウェストハム戦で先制弾を浴び苦しい展開に持ち込まれたが、この日は反対に立ち上がりからアタランタを押し込んでいる。いきなりディオゴ・ジョッタが決定機を迎えると、16分に先制。スルーパスに抜け出したジョッタがホセ・ルイス・パロミーノに競り勝ち、シュートを流し込んだ。

 リードを奪った後もアタランタを押し込んだリバプールは、33分に追加点。ジョッタが巧みなファーストタッチでハンス・ハテブールを外し、左足で豪快にゴールネットを揺らしている。

 0-2で迎えた後半もリバプールは攻撃の手を緩めず、モハメド・サラー、サディオ・マネ、そしてジョッタがこの日3点目をマーク。0-5とアタランタを大きく突き放し、試合を早い段階で決定づけた。

 アタランタは最後まで強気な姿勢を維持し、ドゥバン・サパタが孤軍奮闘して何度かチャンスを作ったが、ポストに嫌われたりGKアリソンの好セーブに阻まれたりと、反撃の狼煙はなかなか上がらなかった。5点差はひっくり返せずとも、今後を考えて少しでも得失点のマイナスを減らしたいところだったが、それすらも許してもらえなかったのは大きなダメージと言える。まさに完敗だった。

自信を持って挑んだ結果が大敗に…

 アタランタを率いるジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督は試合後に「リバプールに対して我々はいつものように自信を持って挑んだし、彼らに問題を引き起こしてプレッシャーに耐えられると確信していた」と話した。

「自信を持って挑んだ」。この言葉が証明する通り、アタランタは持ち味であるハイライン、そしてオールコートのマンツーマンという攻撃的なディフェンスでリバプールと打ち合いの展開に持っていこうとした。しかし、結果的にそれが裏目に出て、守備陣はズタズタに切り裂かれてしまったのだ。

 昨季のCLなどでみせたようなプレスの強度は影を潜めていた。連戦の疲労からか、ボールホルダーに対し明らかに寄せる速さがワンテンポ遅れており、一枚剥がされてはスペースを提供してしまい、押し込まれる。事実、ガスペリーニ監督は「今季のセリエAでもそうだが、我々は過去にやったようなインテンシティを持っていない。それを補うためにスタイルを少し変える必要がある」と話している。

 こうなると、得意のショートカウンターを発動することも難しくなる。アタランタは良さを完全に消されていた。

 また、アタランタの3バックは人に対しては強いが、スペースに出てくるボールに対してはそこまで強くない。リバプール側もそれを理解しているので、ジョッタがウイングバックとセンターバックのギャップを積極的に突いたり、シンプルなロングフィードでサラーやマネの走力を生かしたりと、より“空間”を意識した攻めを繰り出していた。

 寄せては剥がされ、寄せが遅れればロングフィードで最終ラインを下げられる。セリエAではあまり経験できないリバプールの柔軟な攻めに、アタランタは成す術なかった。ポジティブトランジションが働いても、リバプールのタイトな守備を前に返り討ちに遭い、カウンターを浴びる。アタランタはそもそも3バックのラインが高く、さらにその中から攻撃参加する人も出てくるので、被カウンター時のダメージは他のクラブより遥かに大きい。それが、今回の5失点という結果を招いた。

 強敵リバプールに対し最後まで自分たちのスタイルを貫いたアタランタの姿勢は見事だ。しかし、例年にない過密日程が続く中、インテンシティを高く保つことが難しくなっているのは明らかで、とくに怪我人も多く選手層が抜群に厚いとは言えないアタランタにとっては厳しい状況である。

 過密日程は「受け入れなければならないこと」とガスペリーニ監督は話すが、果たして今後、プレー強度を高く維持できない中でどのように勝ち点を奪っていくのか。リバプール戦では厳しい現実を突きつけられたが、これからのガスペリーニ監督の手腕に注目したい。

ジョッタ躍動で南野拓実は…

ディオゴ・ジョッタ
【写真:Getty Images】

 さて、攻守両面でアタランタを上回り大勝を収めたリバプールだが、個人に目を向けるとやはりハットトリックを達成したディオゴ・ジョッタのパフォーマンスは非常に光っていた。

 マネ、サラーとともに先発したポルトガル人FWはウォルバーハンプトン時代から輝いていたオフ・ザ・ボールの質、左右両足を巧みに使った仕掛けとシュート精度を武器にアタランタ守備陣を大いに悩ませた。ユルゲン・クロップ監督が試合後に「今夜の試合でディオゴを使うのは理に適っていた」と話す通り、スピードが水準以上にありスペースをうまく利用できるジョッタは、アタランタ守備陣の弱点を突くのにうってつけの存在だった。

 加入後しばらくは3トップのバックアッパーと予想されていたジョッタだが、予想以上に早くチームに適応している。公式戦ここまで10試合に出場し7得点という成績は見事という他ない。

 左ウイングとしても脅威だが、この日は1トップとしても十分に機能することを証明した。得点力はもちろん、上記した通りボール非保持でも、守備面でも抜群の貢献度を発揮。不調と言われるロベルト・フィルミーノの立場を揺るがすほどの存在感を、ここまで放ってきている。

 そして、南野拓実の立場も厳しい。CL・グループリーグ第2節のFCミッティラン戦で明らかに評価を落として以降、出番がない。このアタランタ戦も5-0と早い時間で大差がつき、クロップ監督は交代枠5枚を使ったがその中に南野の名前はなかった。

 そんな南野が見つめる前で、ジョッタがハットトリックと大活躍。日本人MFはフィルミーノの控えという意識が強かったが、その位置さえジョッタの方が序列は高いとみるのが妥当だろう。一方は先発の機会を得て不発どころかほとんどの時間帯何もできず、一方は先発の機会を得てハットトリック。厳しいことを言うが、どちらがビッグクラブで生き残るに相応しいかは明らかだ。

 過密日程が続く中、今後南野の出番がないとは言い切れない。ただ、同選手はもう適応どうのこうのという立場にはない。ジョッタのように早く結果を残さなければ、チーム内での存在感はどんどん薄くなっていくだけだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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