アーセナルはエジルにもう一度チャンスを。アルテタ監督の構想外も…逆襲への最後の切り札に?【分析コラム】

現地16日にプレミアリーグ第13節が行われ、アーセナルはサウサンプトンと1-1で引き分けた。3連敗は脱したものの、直近のリーグ戦5試合で3人目の退場者を出すなど、相変わらずアーセナルは不振を極める。もうすぐシーズンも折り返しで降格圏スレスレをさまよう名門に、状況を好転させる策はあるのだろうか。(文:舩木渉)

2020年12月17日(Thu)13時23分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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5試合で3人目の退場者を出し…

ガブリエウ
【写真:Getty Images】

 連敗は抜け出したが課題は山積みだ。

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 現地16日にプレミアリーグ第13節が行われ、アーセナルはサウサンプトンと1-1で引き分けた。

 リーグ戦3連敗、ホームでは4連敗という苦境を抜け出すためにアーセナルのミケル・アルテタ監督はシステム変更を決断した。約1ヶ月半ぶりに3バックを採用し、好調のサウサンプトンを迎え撃った。

 結果的に勝ち点1を獲得するに至ったが、試合内容は決して褒められたものではなかった。リーグ戦ここ5試合で3人目の退場者を出し、またも自分たちで自分たちの首を絞めてしまった。アルテタ監督が率いたプレミアリーグ33試合で7人目の退場は、同期間でリーグ最多だ。

 特に前半の不出来は、もはや見慣れた景色になりつつある。ビルドアップが機能せず、満足にボールを前へ運べない。前半にはセンターバックのガブリエウとセントラルMFのモハメド・エルネニーの間でコミュニケーションがうまくいかず、2人が衝突する場面すらあった。

 ボールを前進させれないので、当然チャンスの数も少なくなる。そしてサウサンプトンに主導権を渡してしまい、ボール支配率でも42対58と大きな差をつけられた。18分に元アーセナルのテオ・ウォルコットに先制ゴールを許した後も、反撃の糸口をなかなか見つけられないまま時間だけが過ぎて聞く。攻撃的なパスサッカーが持ち味だったかつてのアーセナルの姿は、もうない。

 後半に入るとボールの循環はやや改善された。52分には左ウィングバックのブカヨ・サカが突破を仕掛け、FWエディー・エンケティアのポストプレーを挟み、ピエール=エメリク・オーバメヤンが同点ゴールを挙げる。

 しかし、またも退場者が足を引っ張った。58分にタックル後にボールを蹴り出した遅延行為で1枚目のイエローカードをもらっていたガブリエウは、直後の62分に2枚目のイエローカードを受けて退場に。アルテタ監督は守備的な交代策を余儀なくされた。

 ベンチにはウィリアンやアレクサンドル・ラカゼットといった攻撃のカードも残っていたが、10人になったことで前線のエンケティアを下げてダビド・ルイスを投入してディフェンスラインの厚みを維持。さらに中盤の運動量を確保するため、ダニ・セバージョスに代えてジョー・ウィロックが起用された。

監督交代に賭ける時間的余裕はない

 ガブリエウ退場後、アディショナルタイム含め30分強を数的不利で戦うことになったアーセナルは、当然劣勢に立たされる。後半のサウサンプトンはボール支配率73%という極めて高い数字を記録した。

 それでも懸命に耐えてピンチの数は最小限に収め、オーバメヤンを前線に残してのカウンター狙いを徹底。終盤にはサカのフリーキックにDFロブ・ホールディングが頭で合わせるも、シュートはクロスバーに直撃してしまう。後半唯一と言っていい勝ち越しの大チャンスを逃し、1-1のドローに終わった。

 能動的にボールを前進させられず、苦しい展開で退場者を出してさらに状況を悪くしてしまう。最近のアーセナルは自分たちでどんどん負のスパイラルに突っ込んでいっているようだ。

 アルテタ監督は「試合に出ずベンチにいる選手たちも、チームを支えて一緒に戦っている姿が見られた。非常にいいシグナルだ」と一体感を称えたが、勝利が遠のくのをただ座って見ているだけの選手はどこにもいないだろう。至極当然の反応で、わざわざ言及するほどのことでもない。

 質の高いタレントを数多く抱え、本来なら上位争いのできるチームのはずだ。ところが、今のアーセナルは残留争いをしていて当然と感じるほどに迫力がない。選手たちは完全に自信を失っているように見える。

 この状況を一変させ、少しでも順位表におけるポジションを上げていくには、何か大きな変化が必要だ。もしかしたら監督交代によって流れを変えるのが簡単なのかもしれないが、おそらく“解任ブースト”は一時的なものに過ぎない。

 しかも、欧州カップ戦や国内カップ戦とリーグ戦を週2試合ペースでこなしていく今季は、新監督を迎えて準備するような時間的余裕が全くない。現状手元にある選択肢から状況を好転させる最適解を見つけるのが、最も現実的な解決策だ。

エジルに再びチャンスを

メスト・エジル
【写真:Getty Images】

 ならばアルテタ監督が大きな決断を下すしかない。

 夏から構想外状態でプレミアリーグやUEFAヨーロッパリーグ(EL)の登録メンバーからも外れているメスト・エジルをトップチームに戻す案も検討すべきだろう。

 32歳になった元ドイツ代表MFは、昨季の時点で衰えを指摘されることもあった。度重なる負傷によって離脱が多く、復帰してもパフォーマンスが向上しないことで徐々に信頼を失っていったのも事実だ。

 現在も半年近く実戦から離れていることでコンディション面への懸念はあるし、運動能力の面でもかつてほどの躍動感はないかもしれない。それでも彼のゲームメイクにおける広い視野や、狭いスペースを攻略できるテクニック、決定機を生み出す一瞬の閃きに頼る価値はある。

 得点力不足どころか、そもそもチャンスの数が少なく、満足にボールを前進させられない現在のアーセナルにおいて中盤と前線のつなぎ役になれるエジルの価値は高いのではないだろうか。トップ下のポジションを与えて自由に動き回らせれば、中盤に降りてパスをさばきながらビルドアップを支え、自ら前線にも顔を出してチャンスも作ってくれるはずだ。

 リーダーシップの面でも好影響が期待できる。今のアーセナルには、苦しい時にピッチ上でチームメイトを鼓舞して戦わせられるようなリーダーがいない。流れが悪くなれば、それを引きずってどんどんドツボにはまっていってしまう。

 だが、エジルならピッチ上のリーダーとしても振る舞えるだろうし、失った自信を取り戻す原動力になってくれるかもしれない。少しでも前向きな影響力があるなら、可能性に賭けない手はない。

 アーセナルは年末にかけてエバートン戦、リーグカップ準々決勝のマンチェスター・シティ戦、そしてチェルシー戦とビッグゲームが続く。今のままなら年始まで全勝するようなシナリオは描けない。

 降格圏まで5ポイント差という苦しいなかでも何とか耐え、年始にエジルを追加登録して逆襲へ。アルテタ監督がアーセナルでの仕事を続けるならば、かつてピッチ上で共に戦った盟友にもう一度信頼を示す時だ。

(文:舩木渉)

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なぜ、あえて今アーセナルなのか。
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感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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