ルヴァンカップ決勝の不気味さ…コロナの脅威により失った感覚。2021年に希望は訪れるのか【英国人の視点】

2020年、新型コロナウイルス感染拡大によりサッカー界は変化を強いられた。無観客、あるいは人数制限がある中での試合が基本となり、スタジアムからは選手を後押しするサポーターの声が消えた。未だコロナは猛威を振るい続け我々の生活を脅かしているが、果たしてサッカー界に希望は訪れるのか。(文:ショーン・キャロル)

2021年01月13日(Wed)10時00分配信

text by ショーン・キャロル photo Getty Images
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全てが変わった2020年

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【写真:Getty Images】

 長らく試合を生観戦していなかったこともあり、1月4日に行われたYBCルヴァンカップ決勝を観戦に訪れるのは非常に楽しみにしていた。

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 前回スタジアムで試合を現地観戦したのは、昨年2月初旬に行われたスーパーカップにまで遡る。つまり2020シーズンは、何とか最初の公式戦と最後の公式戦を観ることはできたが、その間を完全に飛ばしてしまったということになる。

 しかし、いくつかの見慣れた顔に再会しつつ新国立競技場を初訪問できたのは良い機会だったとしても、久々のスタジアム観戦にある種の肩透かしを味わった感があることは否めない。

 これまでの11ヶ月間を通して、Jリーグを遠隔地から追いかけ続ける形に適応することを強いられてきた。以前までのようにスタジアムや練習場に足繁く通うのではなく、DAZNで試合を観戦した上で、記者会見への参加もインタビューもオンラインや電話で実施せざるを得なくなった。

 ある意味ではそのおかげで、毎節行われているサッカーを今までより広い視点で眺めることも可能になった。自分の選んだどこかのスタジアムで開催される1試合に限られるのではなく、映像配信の手軽さと快適さにより、1日に数試合を観戦することができた。

 だが逆に、このリモートな手法では、ライブスポーツの楽しさというものの大部分が失われてしまった。試合に「いる」という感覚や、自分の目の前でリアルタイムに展開する物事を目撃するという感覚、そして何より、他の人たちと一緒にそれを味わう感覚だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、他者との経験の共有は限定されるように(あるいは多くの場合、完全に不可能に)なってしまった。社会における人と人との関わりの喪失が心の健康に及ぼし得る影響への懸念は世界的に強まっている。友人や知人と一緒に余暇を過ごすことは、ストレスを緩和し、日々の生活がもたらす重圧や退屈を紛らわすための手段として非常に重要なものだ。

 ファンがスタジアムに戻ることができるようにJリーグが必死に尽力してきたことは称賛すべきだとしても、入場者数の制限や、スタジアム内でやるべきこと、やってはならないことの数々を考えれば、本来の状況にまだまだ程遠いことは確かだ。

Jクラブにとっての難問

 ピッチ上で何が起こっているかに関係なくファンがいつも歌い続ける同じ歌には飽き飽きすることも少なくはないが、今回FC東京と柏レイソルの2万5000人のファンが一定のリズムで鳴らし続ける拍手の音は、少しばかり不気味で迫力に欠ける雰囲気を生み出していた。それに拍車をかけていたのが、ゴールが決まるたびに自然と沸き起こる盛り上がり方だ。ファンの口からはとっさに叫び声が上がりかけ、サッカー観戦とはこういうものだったと思い出させるが、一瞬後には誰もが現在の状況とルールを思い出し、無言で拍手を送る新型コロナ対応型の安全なスタイルに切り替えてしまう。

 サッカーには一体感を生み出す力があり、気持ちを高ぶらせる瞬間を作り出してくれるスポーツであるとして称えられることも多い。他の全てのことを忘れられるような感情の解放を可能にしてくれる。

 たとえば、2011年の東日本大震災後にベガルタ仙台が川崎フロンターレとの再開初戦に臨んだスタジアムの尋常ならざる興奮は決して忘れることができない。もちろん、今の様変わりした現実の中でも試合を観戦できる喜びを感じているファンは数多くいるはずだと思うが、課せられた制約を考えれば、本来あるべき形が水で薄められたようなものであることは否定できない。

 実際のところ、現在の状況はサポーターたちにとってきわめて苦しいものであるに違いない。普段のJリーグクラブは様々な形の「ファンサービス」を通して選手たちとの繋がりを作り出すことに長けているが、今はその全てが不可能になってしまった。

 選手たちが手の届かない場所に遠ざけられている国から来た私にとっては、この各クラブの取り組みは日本のサッカーに関して最初に強烈な印象を受けた特色のひとつだった(昔ガールフレンドへの誕生日プレゼントにするためプレミアリーグのあるクラブに連絡してサイン入り写真をお願いしたことがあったが、選手は「忙しすぎる」という理由により、届いたのは印刷されたチーム写真だった)。マーケティング上の不確かな繋がりではなく、面と向かった形での強く直接的な繋がりを維持することができない状況は、パンデミックにより経営面でも負担を被っている各クラブにとってもうひとつの難問となっている。

 もちろんこの状況自体はどうしようもないし、ワクチンが広く行き渡って完全に安全となり普通の状態に戻れるようになるまでは、対策は取り続けていかなければならない。2021年が昨年よりも明るい1年になってくれること、日本中の、そして世界中のスタジアムで誰もが本物のライブ観戦を身をもって体験できる日々ができるだけ早く戻ってきてくれることを願いたいと思う。

(文:ショーン・キャロル)

【了】

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