U-24日本代表、田中碧はどのように試合を支配したのか? 「上から見ている感覚」、中村憲剛を彷彿とさせる戦術眼とは…【コラム】

U-24日本代表は29日に行われたSAISON CARD CUP 2021で、U-24アルゼンチン代表に3-0の快勝を収めた。第1戦を出場停止で欠場していた田中碧は出色のパフォーマンスで試合を支配。攻守に渡って躍動した22歳は、「上から見ている感覚」でプレーしているという。(取材・文:元川悦子)

2021年03月30日(Tue)9時42分配信

text by 元川悦子 photo Getty Images
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U-24日本代表を活性化させた田中碧

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【写真:Getty Images】

 東京五輪優勝候補の強豪・U-24アルゼンチン代表に0-1で苦杯を喫した26日の第1戦では、球際やセカンドボールの競り合いでことごとく負け続け、主導権を握られたのが大きな敗因だった。

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「手ごたえは全くないというか、何もさせてもらえなかった印象です」と、負傷の田中駿汰に代わってボランチで先発出場した渡辺皓太もショックを隠し切れない様子だった。中山雄太と組んだボランチコンビがいい距離感で攻守両面に貢献できなければ、三好康児、久保建英、三笘薫という期待の2列目トリオもゴールに迫れない。そこは真っ先に改善すべき部分だった。

 こうした中、横内昭展監督が29日の第2戦で抜擢したのが、板倉滉と田中碧の川崎フロンターレのアカデミー出身コンビだった。2020年1月のAFC・U-23選手権での退場処分を受けたため、26日の試合が出場停止となった田中碧は、満を持して第2戦に臨んだ。

「五輪初戦で出られないとなると、本大会メンバーに入れる確率も下がる。累積を消化できて本当によかった」と語ると同時に、その恩返しをすべくピッチに立った。

 田中碧は「自分のやるべきことは2列目を前向きの状態にさせること」と考えていた。中盤の底に位置し、リズムを作りながら長短のパスを配球することを心掛ける。板倉とはタテ関係を形成。2つ上の先輩を前に出して攻撃に関与させるように仕向けた。

 攻撃の流れがスムーズになり、久保への縦パスも入り始める。世界的知名度の高い久保は常時2~3枚のマークを受けたが、自ら右に移動して食野亮太郎を真ん中に入れてチャンスメークに徹するなど、臨機応変なプレーを披露。攻撃全体が活性化した。

田中碧の「上から見ている感覚」

 一方、守備に関しても田中碧の効果的なインターセプトが際立った。U-24日本代表は前半終了間際の林大地の一撃で、1点をリードして後半を迎えた。アルゼンチンも巻き返しを図ろうとしてきたが、田中碧が立て続けに中盤でボールをカットし攻撃を寸断。これにはFWアドルフォ・ガイチやフェルナンド・バティスタ監督も苛立ちを隠せない様子だった。

 自らのボール奪取も光ったが、周りを動かし統率する声かけも的確。「試合中、碧にはたくさん怒られた」と板倉も苦笑していたが、年齢に関係なく味方に指示し、檄を飛ばした。その姿はまるで尊敬する先輩・中村憲剛が乗り移ったかのようだった。

「自分が中央に立っている中で、最近は上から見ている感覚じゃないですけど、どうすればハマるのかがある程度、頭の中でイメージできるようにはなってきたんです。それをいろんな選手に伝えられれば、自分自身もやりやすいし、チーム全体もいい方向に行く。自分がプレーに関与しつつ、声で味方動かしてゲーム作ることも大事。それも少しはできたのかなと思います」

田中碧を駆り立てる焦りと危機感

 俯瞰的な目線でピッチ全体を見渡し、ゲームをコントロールしていく戦術眼も中村憲剛に通じるところがあった。

「憲剛さんは小さい頃からの憧れで、プロ入り後もすごさを感じる日々でした。彼にボールを渡しておけばゲームを作れるし、守備の時もついていけばボールを取れる。僕は憲剛さんにはなれないけど、自分の長所と憲剛さんの特徴をプラスして超えていきたい」と前にも話していた。今回のアルゼンチン戦で、その領域に着実に近づきつつあることを実証したのではないだろうか。

 彼が強い向上心を押し出すのは、「海外組に国際経験値で劣っている」という焦りと危機感が湧き上がってくるからだ。

「海外でつねに外国人選手とバチバチやってる選手が周りにいる。自分は国内という場でやってるので、その差を早く埋めないといけない」とも神妙な面持ちでコメントした。コンビを組んだ板倉やタテ関係に位置した久保、右前にいた食野らの一挙手一投足を見れば「何とかしなければいけない」という思いが強まってくるのも当然だろう。

 加えて言うと、2カ月前まで一緒に中盤を形成していた守田英正が激変した様子も今回、目の当たりにした。Jリーグで実績を積み重ねている29歳の稲垣祥も「代表スタッフとも話したけど、『この数カ月間でこんなに変わるんだな』と感じました」と驚きを口にしていた。田中碧も全く同じ感情を抱いたに違いない。

繊細さと大胆さ

 中村憲剛の後継者としてJ王者のチームを託され、川崎でフル稼働し、規格外の存在になることもキャリアアップにはつながるはずだ。ただ、A代表定着や2022年カタールワールドカップ出場、その先を考えた時、現状に満足してはいられない。そんな野心が溢れてきて仕方なかったのかもしれない。

 今夏の海外移籍候補筆頭と言われる田中碧だが、仮に新天地に赴いたとしても、守田のようにすぐさま活躍の場を得られるかどうか分からない。ただ、多少の壁があったとしても、長期的に高みに上り詰めていくために、東京五輪金メダルというのは至上命題だ。そこで確固たる成功を手にすることが、直近の重要テーマに他ならない。

「欲を言えば、後半の時間帯ももっとボールを握りたい。五輪を考えた時、このようなタフなゲームをし続けることが大事。自分たちは金メダルを目指している。決勝の時に力が残ってないって状況もなきにしもあらずなんで、後半ボールを握る時間を増やさないといけないのかなとやってて感じますね」

 完勝した試合でも、目を皿のようにして課題を見つけて、改善しようとするところはいかにも田中碧らしい。繊細さと大胆さを併せ持った22歳のMFの真っ直ぐな姿勢は本当に頼もしい。

 中山や板倉らA代表常連組もボランチ陣にはいるが、彼がキーマンに浮上したのは紛れもない事実。主力の確固たる自覚を持って、さらに急激な成長曲線を辿って、4か月後の本大会へと突き進んでもらいたい。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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