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川島永嗣の「日本人GK」論。先駆者としての矜持、「世界で通用する」ポテンシャルを最大限発揮するには…

text by 編集部 photo by Shinya Tanaka

川島永嗣
【写真:田中伸弥】


 日本代表は15日、カタールワールドカップ・アジア2次予選のキルギス代表戦に5-1で勝利した。約3週間にわたって行われた5・6月シリーズを5連勝で終えている。

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 キルギス戦前日の14日にオンラインで取材に応じたGK川島永嗣は、彼らしい語り口で日本人GKのあるべき姿について論じた。

「僕のなかでは、そもそも日本人GKは世界で通用するとしか思っていないですし、日本のGKのレベルが低いとも思っていないです。若い世代に素晴らしいGKがいる、というのは男子でも女子でも変わらない。ただ、それをどう表現していくのか、という部分だけじゃないのかと思っています」

 川島は欧州の第一線で活躍する日本人GKの先駆者として道を切り拓いてきた。2010年の南アフリカワールドカップ後に、当時ベルギー1部のリールセへ移籍。2012年夏からは同国の強豪スタンダール・リエージュへステップアップし、欧州カップ戦出場も経験した。そして、スコットランドを経てフランスへ渡り、2018年夏からはフランス1部のストラスブールに在籍している。

 今季も当初は第3GKの立場からレギュラーの座をつかみ、リーグ戦24試合に出場。このほど38歳にして2年の契約延長を勝ち取った。日本代表でも変わらぬ存在感を放っている。

「ここまで日本代表や海外でやらせてもらっているなかで、自分自身が本気でチャレンジし続けない限り、それを指針にする若いGKたちに失礼だと思います。自分自身の目標は常に持っていますけど、自分自身が本気でチャレンジしていかない限り、本当の意味での(日本のGKの)全体的なレベルアップというのはないんじゃないかなと感じています」

 権田修一やシュミット・ダニエルといった“後輩”たちが欧州移籍できたのも、川島の功績があったからこそと言える側面もある。日本人GKたちを先頭に立って引っ張っていくにあたり、38歳の守護神には先駆者としての矜持があり、今でも常に高みを目指し続けている。

 そして、海外であろうと国内であろうと、プレーする場所に関係なく自分に対して高い基準を設けて挑戦し続けることの重要性も語った。

「海外でやっているから、Jリーグでやっているからというところに境界線はないと思っています。海外に一度出ることで感じられることは大きいと思いますし、サッカー文化だけでなくGKの文化という部分で、僕自身も海外に出てからたくさん学ぶ部分はありましたし、いまでも学んでいます。

本当の意味でGKの高いレベルとはどういうものなかのかを肌で感じられるので、その意味で海外に出るのはいいことだとは思います。けど、そう言っていても本当の意味で(日本のGK全体の)レベルは上がらないと思います。やはりJリーグのなかでも(海外のトップレベルと)同じような感覚でやっていかなければ、本当の意味でのレベルアップにはなっていかないと思います」

 では、「同じ感覚」とは何か。それこそ川島が自らの姿で証明してきているものだ。38歳になっても肉体的な衰えを全く感じさせず、技術は年々研ぎ澄まされている。日本代表の練習を見ていても、細かい動作の1つひとつにまでこだわり、小さなことでも徹底して成長を追求していく姿勢がうかがえる。

 練習量も人一倍多く、周りとも積極的にコミュニケーションをとってピッチ内外でのリーダーとしての振る舞いも超一流。常に高みを目指す者として模範を示し続けている。川島は「トップレベルでやるためには技術だけではなく、フィジカル的にいい状態でなければいけないですし、すべての面において年齢とは関係なく常に向上していかなければいけないと思っています。それは技術面もそうですし、フィジカル面もメンタル面もそうですし、そういったところでまず基準を高く持ってやっていきたいと思っています」と語る。

「GKは経験も大切だと思いますけど、日頃の準備やどういう目標を持っているか、自信を持ってやっているのか、というのが(パフォーマンスを)大きく左右するポジションだと思います。本当に難しいポジションだと思いますけど、常に準備を怠らずに、大きな目標を持って進んでいくのが一番じゃないのかなと思います」

 川島が経験とともに確立してきた理論には、GKのみならず全てのサッカー選手、あるいは一般の社会人や学生などにも通ずつ要素がふんだんに詰まっている。勇敢にゴールマウスを守る姿に勇気をもらう人も多いだろう。

 フランス1部リーグでのさらなる活躍が期待されるだけでなく、自身4度目となるワールドカップ出場も現実味を帯びてきた。川島の挑戦に日々に終わりは全く見えない。

「このタイミングで2年の契約をもらえると、本当にクラブからの信頼を感じます。僕自身もまだまだ最高峰へ向かってチャレンジしていきたい気持ちでいました。それはシーズンを通してより多くの試合に出たなかで感じたことです。ただ、この2年という時間のなかで、また自分がどういう形で成長していけるのか、結果を残していけるのかは、またここからがスタートだと思いますし、自分自身ももう一度気を引き締めて挑戦していきたいと思っています」

 プレーに臨む姿勢やアスリートとしての考え方、メンタリティの一端を知ることで、新たに2年契約を結んだストラスブールでの川島のプレーが楽しみで仕方なくなってきた。そして、川島と同様の思いを持って世界に挑み、花開いていく日本人GKがもっとたくさん出てくることを期待したい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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