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横浜FCが執念の勝ち点1奪取! 2得点のFWサウロ・ミネイロが横浜ダービーで見せた「力強さ」と「賢さ」

text by 編集部 photo by Getty Images

サウロ・ミネイロ
【写真:Getty Images】



「1つが力強さを、もう1つの手は賢さを意味していていて、ブラジルでプレーしているときからやっているパフォーマンスだ」

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 25日に行われた明治安田生命J1リーグ第30節の横浜FC対横浜F・マリノスは、死闘の末に2-2のドロー決着となった。

 この試合で2得点を挙げ、横浜FCに貴重な勝ち点1をもたらしたFWサウロ・ミネイロは、自らの右腕で力こぶを作り、左手で頭を指すゴールパフォーマンスを「力強さ」と「賢さ」の象徴だと説明した。

 38分に挙げた先制点は、J1リーグ戦での来日初得点。最終盤には同点ゴールだけでなく、惜しいヘディングシュートであわやハットトリックという場面も作った。マリノスのGK高丘陽平がゴールライン上で止めていなければ、横浜FCは勝ち点3を持ち帰ることができたはずだ。

「自分が横浜FCに来た理由、主たる目的はゴールを決めてチームを助けること。時間はかかってしまったけれど、今日の試合で自分がゴールを決めてチームに貢献できたことをうれしく思う」

 サウロ・ミネイロの表情は充実している。リーグ戦出場6試合目で初ゴールと、まだ完全に期待に応えているとは言い難いが、チームのJ1残留に向けた“秘密兵器”が解き放たれた。ゴール以外のパフォーマンスも圧巻だった。

「横浜FCでの役割はゴールをすること。自分がピッチに立った以上は、前線で体を張って起点になることを求められているので、常日頃からそういったことを意識してプレーしている」

 3-4-2-1の1トップに入ったブラジル人ストライカーは、序盤からマリノスのDFチアゴ・マルチンスと迫力満点の肉弾戦を展開。パワーでもスピードでもJリーグ屈指のセンターバックに引けを取らず、横浜FCの攻撃をけん引した。

「この試合が始まったタイミングで監督から『スペースに走れ』という要求があった。マリノスの分析をした際に、ディフェンスラインの背後にスペースがあることはわかっていたし、自分の最大の特徴でもある推進力を生かして、チームとして戦う、弱点を突いていく意識でプレーした。

チームとしては、なるべく多くペナルティエリアに侵入し、ディフェンスラインを破ることを意図して、ボールを背後に配給していこうということだった。自分は背後に抜け出して2回ほど決定機を生み出すことができた」

 サウロ・ミネイロにとって、マリノスは自らの特徴を生かしやすい相手だった。技術面での粗さは否めないものの、浅いディフェンスラインの背後へ抜け出すスピードや、前線で起点となれるパワーは群を抜いている。極めて高い身体能力を存分に生かしつつ、J1トップクラスのチーム力を誇るマリノス相手には「賢さ」も重要だった。

 序盤はチアゴ・マルチンスと互角の勝負を繰り広げていたが、徐々にサウロ・ミネイロはプレーエリアを右に寄せていったように見えた。チアゴとのデュエルを避け、より高い勝率が見込めるDF岩田智輝に狙いを定めたのではないか。そのことをサウロ・ミネイロに問うと、彼は次のように答える。

「チアゴはもともと知っていて、いい選手だということも知っていたし、強くて速い選手で、かなり難しいデュエルになるとも予測がついていた。もちろんフィジカルコンタクト、デュエルもあったけれど、なるべく彼から距離をとって走ることを意識していた。

チアゴの強くて速い特徴から逃げるわけではないけれども、よりやりやすい方にポジションをとる、そして彼から離れることでチャンスを作ることを意識した。彼とデュエルをする際は、なかなかチャンスを作らせてもらえず、非常に難しかった。でも、自分がチャンスを作れたのはチアゴのいない方のサイドからの突破が多かったと思う」

 38分の先制点の場面がわかりやすい。サウロ・ミネイロはDFマギーニョから組み立てる時点で、岩田の背後にポジションをとっている。MF瀬古樹を経由して右サイドのFWジャーメイン良へボールが渡ると、カバーに出た岩田のマークが外れて一時フリーに。最終的にはチアゴ・マルチンスのカバーも間に合わず、横浜FCの背番号31は来日初ゴールを決めることができた。

「(交代で)ジャーメインが入ってから、彼が初めてボールに触ったプレーだったと思う。彼がボールを受けた際に、注目を集めるために彼の名前を呼んで、マイナスにボールを要求してフィニッシュした」

 ゴールにはならなかったが、後半アディショナルタイムにGK高丘に阻まれたヘディングシュートの場面でも、サウロ・ミネイロが空中戦を挑んだのは、後半途中からマリノスの左サイドバックに入っていたDF小池龍太。やはりチアゴとの難しい勝負は避けていた。

「明確な決定機も何度かあって、2点決めたあと、2-2の状態で非常のいいポジションをとってヘディングシュートを打つこともできた。GKから結構外してシュートできたと思ったけれど、GKの素早い対応で弾かれてしまった。そこは相手のGKを称えたいと思う。

試合の終盤で、あそこさえ決めていれば自分たちが勝ち点3を持ち帰ることができたと考えると、非常に悔しい結果になってしまった。でも、まだ何も終わっていないし、自分たちは諦めるつもりもない。次の試合で勝ち点3を持ち帰れるように準備するのみだ」

 横浜FCは現在最下位で、J1残留圏内とは8ポイント差となっている。残りは8試合。今後の戦いでも、横浜ダービーの流れを継続して「力強さ」と「賢さ」を兼ね備えたサウロ・ミネイロの長所を引き出せる形を見出せれば、上昇のきっかけをつかめるはずだ。

 苦しい状況でこそ、「自分がここに来た意味は、横浜FCを助けること。この状況を乗り越えさせるために来ている」と語るストライカーの強大な武器を活かさない手はない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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