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古橋亨梧が「正直初めての経験」と驚くほどの重圧。W杯予選敗退の危機、日本代表は何と戦っているのか?【W杯アジア最終予選】

text by 編集部

古橋亨梧
【写真:Getty Images】



 日本代表が追い込まれている。7日に行われたサウジアラビア代表戦に敗れ、カタールワールドカップのアジア最終予選で敗退の危機に瀕しているのだ。

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 そんな中、12日にはオーストラリア代表戦を控える。ホームにグループ屈指の強豪を迎える一戦は、まさしく背水の陣と言えよう。選手たちにのしかかる重圧は察するに余りある。

 前回のワールドカップ最終予選も初戦を落としたが、その後の試合で勝てていたため、1敗がのちに大きな影響を及ぼすことはなかった。若手として2018年ロシアワールドカップのアジア予選を経験したFW浅野拓磨は、当時を次のように振り返る。

「日本代表にかかるプレッシャーや責任、プライドはすべて先輩たちに持ってもらっていたというか。自分のプレーだけに集中していましたし、責任やプレッシャーは、僕自身に対しては感じているものはありましたけど、チームとして感じられていたかというと、間違いなく先輩に持ってもらっていたので。そのぶん僕は気持ちよくプレーできたり、ギラギラさせながらチームに勢いをつけることにフォーカスできていました」

「僕は右サイドでプレーすることが多かったですけど、後ろには酒井宏樹さんがいて、ロシアワールドカップ出場を決めたオーストラリア戦でも、『自分のやりたいようにやれ』と言ってくれた人が多かったので、僕はその言葉通り、『守備で迷惑をかけたらすみません。あとは任せます』くらいの感覚で、自分のプレーの集中できていました。後ろで構えてくれている選手、交代する選手であったり、ベンチにいる選手であったり、いろいろな先輩がかけてくれた声が自分のメンタルにつながっていったのかなと思いますね」

 若手や代表経験の浅い選手たちにものびのびプレーしてほしい、というのは誰もが望むところ。しかし、今はそんなことを言っていられる状況ではない。FW古橋亨梧も「正直初めての経験」というほどの重圧を感じている。

 アジア最終予選の開幕から3試合で1勝2敗と大きく出遅れ、1つの負けも許されない状況をどう乗り越えるか。古橋は「チームとしても個人としても、ひと回りも、ふた回りも大きくなれる」チャンスと捉えている。

 一方、ベテランとしてチームを引っ張ってきたDF吉田麻也は「本来であれば、年齢が上だったり、経験値のある選手たちがチームを引っ張っていって、若手は自分のパフォーマンスやアピールだけに集中できる環境を作り出さなければいけない」と反省を述べつつ、「日本代表で最終予選を戦うことの意味を肌で感じていると思う」と経験の浅い選手たちの心境を代弁する。

「もちろん自分のこともアピールしてゴールを決めてほしいと思っています。でも、同時に自分たちの結果が日本サッカーの将来に直結するんだということも理解しなければいけないと思っています。ワールドカップに出る・出ないというのは、僕たちだけじゃなくて、サッカーに携わる全ての人たちの死活問題になると思うんですね。

この一戦(12日のオーストラリア戦)の意味は非常に大きいですし、(ワールドカップの)予選を突破するという意味は非常に大きい。それだけのものが自分たちの背中にのしかかっているとうのを感じろとは言わないですけど、のしかかっているのは事実ですし、そのプレッシャーを力に変えていかなければいけないと思っています」

 これ以上の失敗が許されない状況で、チームのベースを大きく変えることは難しいだろう。他方で、だからこそフレッシュな選手たちの日本代表に対する思いの強さや、1試合にかける気持ち、逆境を乗り越える過程での成長や爆発力に期待したくなる。

 東京五輪世代で主軸を担ってきたDF中山雄太は「自分の力でチームをよくしていきたい気持ちはもちろんあります」と言葉に力を込めた。「練習からスタメンを奪ってやるという気持ちでやっている」と語った古橋も「次の試合は何としても結果を残してチームを勝たせたい」と力強い意気込みを口にした。

 今年6月に日本代表デビューを飾ったばかりのFWオナイウ阿道も「状況に関係なく結果を残せるようになりたい。FWはどんな短い時間でも結果を出さないといけない」と決意を固めている。

 吉田は「この責任をしっかり受け止めて、自分たちが蒔いた種なので自分たちで取り返さなければいけないと、肝に銘じて戦わなければいけないと思います」とも語っていた。その思いは確実にチーム全体に伝わっている。

 極限の状態で日本代表の底力が試される。主軸となる選手たちの奮起はもちろん、強い思いを持ったフレッシュな選手たちが結果を残して現状を打破できれば、その先ではチームとしても選手個人としても大きな成長と成果をつかみ取ることができるだろう。オーストラリア戦は相手チームだけでなく、自分たちとの戦いでもあるのだ。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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