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サッカーを数値化する新たな指標「OBV」。数字で明らかになる最強3トップとは?【近未来のデータ分析・前編】

text by 結城康平 photo by Getty Images

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ゴール期待値(xG)を筆頭にサッカー界にも様々な指標が登場するようになって久しい。「新たな数値」はこれまでの常識を非常識に変える可能性を秘めている。『フットボール批評issue36』(6月6日発売)では結城康平氏が近未来のデータを紹介していく新連載「Stats Football」がスタート。今回はその一部を抜粋して公開します。(文:結城康平)



新たな指標「OVB」とは?

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【写真:Getty Images】

 ゴール期待値(xG)という指標は「得点の入りやすさ」を判断する指標として発展を続けているが、簡単に説明すれば位置的なデータをベースにしたシュート局面の「数値化」だ。例えばPKはゴール期待値が約0.70となっており、高い確率でゴールが決まる。

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 しかし、ゲームにおけるシュート状況は千差万別だ。ボールのスピードや高さ、相手DFがどのような位置にいるか、ゴールまでの距離や角度などの変数をベースに、それぞれの統計データサイトが独自の指標を使っている。オープンソース的に発展しているxGだが、それぞれが変数として何を設定していくのかで指標が変化していく。

 例えば利き足でシュートすることがゴールに直結するのか、守備側のアクションが重要なのか、という具合だ。共通認識になっているのは「角度や距離によってシュートの決まりやすさは変わってくる」ということであり、ミドルシュートの価値やニアサイドへの侵入も見直されるようになっている。中長距離からのシュートや角度のないところからのシュートはイメージよりも非効率的であり、そういったプレーを減らすチームも少なくない。

 しかしゴール期待値は、あくまでゴールという「限定的な局面」を数値化するものでしかない。多くのデータサイエンティストにとっての課題であり、夢は「フットボールというゲームを数値化すること」だ。どのようなプレーが数値として優れているのかが判明すれば、選手のスカウティングが簡単になるだけではない。それは、フットボールというゲームを攻略する方法になるかもしれないのだ。

 実際にフットボールを解析することを目指しているデータ分析会社のStatsBomb は「シュートは試合におけるアクションの1%でしかない」と述べている。そんなStatsBomb が2021年9月に発表した指標こそ、OBV(On-Ball Value)だ。

 彼らは公式ホームページにおいて、この指標を次のように説明している。OBVはポゼッションのフェーズにおいて、ゴールに繋がったアクションに高い得点を与える。また、今までは評価されにくかった「ハイリスク・ハイリターンなプレー」もこのモデルでは評価される。さらに、リヴァプールなどで研究されている「オフ・ザ・ボールの数値化」とは異なり、あくまでもボールを受けてからのアクションによって評価されているのも特徴だ。

 ベースとなっているのは位置データで、選手がパスやドリブルで「どのように効果的にボールを動かしているか」が主として評価されている。2016/17〜2020/21シーズンのOBVランキングには、あえてデータを使わなくても価値を評価されている名選手が並んでいる。首位に輝いたのは18/19シーズンのリオネル・メッシで、17/18シーズンのネイマールが続く。19/20シーズンのキリアン・ムバッペが3位となり、その次は再びのメッシ(17/18シーズン)だ。

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特集:参謀がサッカーチームを決める

「未来予想図」を作れない軍師はいらない

「参謀」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは“残念ながら”牧野茂だ。プロ野球・読売ジャイアンツの川上哲治監督を戦術面で支え、前人未到のV9を成し遂げたのはあまりにも有名である。組織野球の技術書『ドジャースの戦法』をそれこそ穴の開くほど読み込み、当時の日本では革新的な組織戦術でセ・パ両リーグの他球団を攪乱していった。しつこいようではあるが、サッカーチームの参謀ではない、残念ながら。

言い換えれば、すなわち日本のサッカー界で誰もがピンと来る参謀はいまだにいない、ということだ。世界に目を向けると、クロップにはラインダース、ペップにはリージョ、アンチェロッティには息子ダヴィデと、参謀の顔が瞭然と見える。今や参謀がチームの行く末を決定づけているなかで、日本ではそもそも参謀の役割すら語られることがない。日本から名参謀を生むためには、参謀の仕事をまずは理解することから始めなければならない。

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【了】

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