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レアル・マドリードが体現する“合理的な思考”とは? アンチェロッティの志向と4ゴールの共通点【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

レアルの選手は勝負所を熟知している



 チャンピオンズリーグ(CL)のセルティック戦からは中3日。グラスゴーでの一戦で負傷したカリム・ベンゼマの代役には、アンチェロッティ監督が会見で予告したとおり、エデン・アザールが入った。また、中盤でもルカ・モドリッチがベンチスタート。トニ・クロースのアンカーの前に、フェデリコ・バルベルデとダニ・セバージョスが先発。3-0で勝利したとはいえ、セルティックがタフなチームだったのは事実。主に疲労を考慮してのローテーションが組まれたようだ。

 CLの初戦に続いて、このマジョルカ戦も結果的には4-1での大勝だったが、決して簡単なゲームではなかった。レアルの選手たちは自陣に引いてこもる相手にかなり苦戦した。敵将のハビエル・アギーレは[5-4-1]の布陣を選択。強度の高い守備ブロックの中で、アザールはなかなかボールに触ることができず、クロース、バルベルデ、セバージョスのトライアングルも、不慣れなメンバー構成だったためか、パスワークに苦慮したようだった。

 しかし、冒頭で示したイタリア人指揮官のコメントのとおり、「ポゼッションにこだわらない」のであれば、敵の固い守備ブロックの攻略に苦戦することも、さほど問題ではなかったのかもしれない。

 そもそも、なぜレアル・マドリードはCLを制覇できるのか、を考えると、何より選手たちが“勝負所”を熟知しているから、ではないか。少なくとも「33本のパスを繋いでゴールを決めること」にこだわっているから、ではないだろう。

 もちろん、モドリッチを筆頭にベンゼマ、ヴィニシウス・ジュニオール、クロースら選手たちの卓越した技術があってこそだが、それ以上に90分トータルで試合を捉え、流れを読み、“勝負所”で「よりダイレクトに」攻めることができているからこそ、重要な試合をものにすることができるのだろう。

 苦戦は問題ではない、と言うのは言い過ぎかもしれないが、苦戦は織り込み済み、といったところだろうか。よって、35分にセットプレーから先制点を奪われたとしても、CLで幾多の修羅場を潜った“エル・ブランコ”の選手たちに心理的ダメージはなかったようだ。

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