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Jリーグ 2年前

アルビレックス新潟は「優等生」。データが示すスタイルとは?【異端のアナリスト/前編】

text by 庄司悟

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アルビレックス新潟が明治安田生命J2リーグを制し、6シーズンぶりとなるJ1昇格を決めている。J2優勝を果たした新潟のスタイルとはいったいどのようなものなのか、“異端のアナリスト”が「一枚の絵」で表した。10月18日発売の書籍『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』から一部抜粋して、新潟のスタイルを分析する。(文:庄司悟)


データが示すアルビレックス新潟のスタイルとは?

 Zugabe(ツーガーベ)とは、ドイツ語でアンコールを意味する。『フットボール批評』の編集長による一人(?)スタンディングオベーション、つまり、うれしいことに追加演奏の要望があったということだ。その曲目はこちらが自由に選択できるかと思いきや、息つく暇もなく、「issue32はJ2特集を予定しているので、J2各クラブのコンセプトを一枚の絵にしてください」という「指定曲目」の通知が来た。

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 確かに、オーストリア・ウィーンのニューイヤーコンサートのように、定番のアンコール曲(『ラデツキー行進曲』や『美しく青きドナウ』)が事前に用意されている伝統的なクラシックコンサートも存在はする。とはいえ、アンコール曲目が「J2縛り」とはいやはや……。それでも、「一枚の絵」と聞くと妙に体が疼いてしまうのは、やはりアナリストの性というものであろう。ただ、J2はJ1とは違って、「スプリント数」「走行距離」の数値をJリーグが公式に発表していないことから、はたしてそれぞれのクラブに色が出るのか一抹の不安はあったものの、終わってみればなかなかどうして興味深い一枚の絵が出そろった。


【図1】

 それではウォーミングアップとして、まず最初は「当然中の当然」とも言える座標軸、2021年J2第10節までの失点率(縦軸)×得点率(横軸)を掛け合わせた図1を見ていただきたい。10試合を終えて8勝2分といまだ負けなしの1位アルビレックス新潟、それを8勝1分1敗で追いかける2位FC琉球、7勝1分2敗の3位京都サンガF.C.の上位3クラブは、得点率が高く、なおかつ失点率が低い右上の「優良ゾーン」にきっちりと位置している。上位クラブではすでに16失点を喫している4位ジュビロ磐田が右下のゾーンにいるのが気になる程度で、ひとまず各クラブのサポーター、ファンが納得する妥当な配置図といっていいだろう。


【図2】

 次に、パス成功数(縦軸)×ボール支配率(横軸)を組み合わせた座標軸(図2)を見ていただこう。右上のゾーンの頂点にはこれも予想通りと言えば予想通りではあるが、無敗で首位を走る新潟が君臨している。ショートパスをポンポンと繋ぎ、相手にボールを渡さない、日本では「優等生」と呼ばれるポゼッションスタイルで、ライバル勢を圧倒していることがわかる。一方で2位・琉球のポジションを見ると、ポゼッションにはそこまでのこだわりはないが、パスの精度にはこだわりがある、という見方をしてもよさそうだ。新潟のアルベルト監督、琉球の樋口靖洋監督に共通しているのは、パスの精度を大事にしているということだろう。

<書籍概要>

『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』

定価:1,980円(本体1,800円+税)
著者:庄司悟

これを読まずして現代サッカーを語ってはいけない

“異端のアナリスト”庄司悟はこれまでピッチ上で起こる様々な「主旋律」を、誰もが一目でわかる「一枚の絵」で表してきた。「2軸」「非対称」「皿と団子」「同期・連動」「連動→連鎖→連結→連続」「志・智・儀」といった“異端用語”を駆使しながら、ペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップ、ユリアン・ナーゲルスマン、ハンス=ディーター・フリックたちが標榜する世界最先端の現代サッカーを「一枚の絵」で明らかにする。

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【了】

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