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横浜F・マリノスは4冠王。ライバルを凌駕した2019、データで読み解く「雲泥の差」【前編】

text by 庄司悟

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横浜F・マリノスが2019シーズンぶりの優勝に近づいている。2019年の横浜F・マリノスはどのようなコンセプトの下でJリーグを制したのか、“異端のアナリスト”が戦術コンセプトを暴く。10月18日発売の書籍『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』から一部抜粋して、マリノスのスタイルを分析する。(文:庄司悟)


データが示す横浜F・マリノスのスタイルとは?

 2020年7月4日にようやくJリーグが再開した。試合がほぼ週2回の稀に見るハードなスケジュールになってしまったとはいえ、「カオスに抗えるいつもの日常」が戻ってきただけで良しとしなければなるまい。

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 実はJリーグの中断期間中、2019年の覇者である横浜F・マリノスがピッチで奏でる主旋律を解き明かす作業に没頭していた。もっと大きな観点でいくと、提携するシティ・フットボール・グループ(CFG)がF・マリノスに落とし込んだ戦術コンセプトを、それも極力横文字を強調せずに暴くことに心血を注いでいた、といってもいいかもしれない。

 Op.1の〈第2楽章〉の核心部に足を踏み入れる前に、まず、2019年のF・マリノスはチームとして一体何が秀でていて、何を武器に、ほかの17チームを凌駕していったのか、総ざらいしておく必要がある。幾度となく耳にした「アタッキング・フットボール」もしくは「超攻撃的フットボール」……この表現はあながち間違ってはいない。ただ、やはり言葉だけではF・マリノス=CFGがピッチで奏でる主旋律を完璧に読み解くのは難しい。


【図1】

 図1は2019年のJ1(1試合平均)における上位5チームの「スプリント数」「走行距離」「パス総数」「パス成功率」を表したものだ。言わずもがな、F・マリノスはいずれのレコード(記録)もトップで、文句なしの4冠王となっている。2017、18年のJ1を連覇した川崎フロンターレは「パス総数」では、F・マリノスが640.7本でフロンターレは638.1本とほぼ同じ数値、「パス成功率」は85%と同じだったにもかかわらず、「スプリント数」に関してはF・マリノスの193.3本に対して143.6本と雲泥の差があった。

 つまり、何が言いたいのか。これまで27年のJリーグの歴史において、この4項目を完全制圧し、なおかつ王者に上り詰めたチームはF・マリノスが初めて、ということだ。


【図2】

 続けて、2019年のJ1で、F・マリノスと対戦した17チームの「パス総数」を表した図2を見れば、F・マリノスの主旋律が仄見えてくる。対F・マリノス戦(ホーム&アウェー)では、17チームのほとんどが、年間のパス総数アベレージより低いパス総数となっている。唯一、FC東京が412.5本の年間アベレージを第34節の423本で何とか上回ってはいる。ただ、同試合は記憶に新しい最終節の「優勝決定戦」で、FC東京は4点差勝利が優勝条件だったことを思えば、F・マリノスがパフォーマンスを落としたというより、FC東京が死に物狂いだったレアケースと考えるべきだろう。

<書籍概要>

『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』

定価:1,980円(本体1,800円+税)
著者:庄司悟

これを読まずして現代サッカーを語ってはいけない

“異端のアナリスト”庄司悟はこれまでピッチ上で起こる様々な「主旋律」を、誰もが一目でわかる「一枚の絵」で表してきた。「2軸」「非対称」「皿と団子」「同期・連動」「連動→連鎖→連結→連続」「志・智・儀」といった“異端用語”を駆使しながら、ペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップ、ユリアン・ナーゲルスマン、ハンス=ディーター・フリックたちが標榜する世界最先端の現代サッカーを「一枚の絵」で明らかにする。

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【了】

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