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小池龍太は「歩くのが精一杯な状態」だった。横浜F・マリノスで初優勝、気力で走破した飛躍の1年

text by 編集部 photo by Getty Images

横浜F・マリノス 最新ニュース


【写真:Getty Images】



横浜F・マリノス、3年ぶりのJ1優勝。小池龍太が明かした壮絶な戦い

 明治安田生命J1リーグ第34節が5日に行われ、ヴィッセル神戸に3-1で勝利した横浜F・マリノスが3年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた。



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 頂点に立った瞬間、小池龍太は「自分に(Jリーグで)チームがなくてJFLでスタートした時から、様々なことを思い出した」という。JFAアカデミー福島を卒業した2014年、Jリーグのクラブからオファーはなく、当時JFLのレノファ山口に加入した。

 ルーキーイヤーから山口のJ3昇格に貢献し、2015年にJリーグ参入初年度でのJ3優勝に貢献。毎年カテゴリを上げ、2017年には柏レイソル移籍でJ1初参戦を果たした。そして、欧州でのプレーも経験したのち2020年夏にマリノスの一員となる。

 加入3年目の今季はリーグ戦26試合に出場して自身初のJ1優勝に大きく貢献しただけでなく、7月には日本代表デビューも果たした。小池にとってこれまで以上の飛躍を経験したシーズンになった

「J1でタイトルを獲ったし、日本代表にも選ばれたし、今年はいろいろな感情を覚える年になって、個人的にはハッピーです。いろいろな人をハッピーにできた年でもあると思うので、こうやって必死に一歩一歩やってきてよかったなと、ただただその思いです」

「全ての選手がたくましく見えたし、最高のチームでやってきて、結果が出なかったり、最強にはなれなかったりしたことが僕自身も悔しかった。今日で『自分たちが最強』というのを日本中だけじゃなく、いろいろな人たちに証明できて、改めてこのクラブの価値が大きくなったかなと思います」

 シーズン終盤は満身創痍だった。フル出場した9月10日のJ1第29節・アビスパ福岡戦で右足を痛めた。その後、リーグ戦を2試合欠場しただけで実戦に復帰する。小池は「残り5試合で自分がフルパワーでチームのために走れるように少し欠場しましたけど、チームに信頼を置いているからこそ、こういう決断ができました」と語ったが、復帰後は珍しく2試合連続で途中交代となり、万全でないのは明らかだった。

 それでも「自分の足がどうなるか分からないけど、一緒に戦っているチームメイトや家族のために、今は我慢しなければいけないタイミングだと思っています」と、無理をしながら試合に出続けた。

 試合中はどこかを痛めているような素振りなど一切見せないが、毎試合後の取材エリアに右足を引きずって出てくる姿には痛々しさすらあった。そうした様子から、何としても最後まで走り抜くんだ、という覚悟を行動や言動の端々から感じていた。ラスト3試合の連続フル出場が、彼の背負っていたものの大きさや決意の固さをよく物語っている。

 これまで小池は自らの怪我の状態についてハッキリと言及してこなかったが、リーグ優勝を果たした神戸戦の後に改めて問うと「本当に歩くのが精一杯な状態で、90分間走っていました」と明かしてくれた。そして、こう続ける。

「メディカルスタッフをはじめ、僕が一歩でも多く走れるように陰で支えてくれる人たちがいたからこそ、僕自身も数ヶ月オフをなくしてでもケアをして、このタイトルに全力を注いできました。

そういった支えてくれる人というのは、自分が恩返ししなければいけない立場の人たち。ファン・サポーターのみなさんもそうですけど、そういった人たちに何かを返せるとしたら、今日のように結果を出すことだったので、ホッとしています」

 喜び、安堵、感謝、責任、悔しさ……様々な思いがこみ上げて、優勝が決まった瞬間には涙が流れた。満身創痍でも、チームメイトやスタッフ、ファン・サポーター、そしてマリノスファミリー全員の思いに突き動かされ、小池は最後まで走り抜くことができた。

「とにかく自分たちのミッションはコンプリートできたと思います。その中で、もちろん嬉しさも悔しさもあって。やはり自分たちは日産スタジアムで決められる立場でしたし、そこはまだまだ自分たちが成長できる部分だと思います。すごく嬉しいですけど、もっと多くの方々と一緒に(優勝の)その瞬間を共にしたかったなという気持ちがよぎった瞬間でもありました。

今日、(試合終了の)笛が鳴った瞬間から、また新たな1年がスタートしています。僕らにまだできていないのって2連覇だと思うので、また今日から気持ちを切り替えてやらなければいけない。僕自身も苦しい終盤だったので、とにかく足を1日でも早く元の状態に戻すこと、それが最優先かなと思います」

 リーグ優勝を果たした直後でも、小池の視線はすでに次のステップへと向いていた。まずは酷使し続けてきた右足を休め、万全のコンディションを取り戻すことから。そのうえで来季もチームの中心としてタイトル獲得に貢献する大活躍する背番号25の姿を楽しみにしたい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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