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野心と武器。伊東純也の4年間。サッカー日本代表の控えからエースへ変貌できた理由【コラム】

W杯半年前に訪れた転機


 そのキーマンを出場停止で欠いた10月のサウジアラビア代表戦は日本代表の攻撃が停滞。攻めあぐんだ結果、背後を突かれるという最悪の展開で黒星。序盤3戦で2敗と崖っぷちに立たされた。

「次はチームに貢献したい」と責任を感じた伊東は、森保監督が4-3-3への布陣変更に踏み切ったオーストラリア代表戦で再び強烈な推進力を披露。積極的に打開を試みて、後半には浅野拓磨、古橋亨梧との3本の矢で相手を押し込み、浅野が誘発したオウンゴールで日本代表は勝利。窮地から救う原動力となったのだ。

 その後の11月のベトナム代表とオマーン代表との2連戦、2022年1~2月の中国代表、サウジアラビア代表との2連戦で伊東は4試合連続ゴールをゲット。前回最終予選の原口元気に並んだ。本人は「自分はチャンスを作るのが仕事。ここまでゴールを奪えるとは思っていなかった。うまくいきすぎ」と謙遜していたが、フィニッシュの部分もヘンクで大いに磨かれたことを色濃く示していた。

 結局、伊東は最終予選の日本代表の全12ゴールのうち4ゴール・2アシスト・PK奪取と半分以上に絡む大活躍。「イナズマ純也」の異名も与えられ、名実ともに日本の看板アタッカーへと上り詰めた。7大会出場権獲得を決めた3月のオーストラリア代表戦で2点を叩き出した三笘薫とともに「左右の矢」として相手から警戒される存在になったのである。

 そして今夏には欧州5大リーグの1つであるフランスのスタッド・ランスへ移籍。8月に新天地デビューを飾るや否や、本来のワイドではなく2トップの一角で起用され、2試合連続ゴールをゲット。10月以降も得点を重ね、すでに4ゴールを奪っている。森保監督もここでの起用にヒントを得たのか、9月のエクアドル代表戦の終盤には最前線に配置。ケガ人続出の現状もあるだけに、W杯本番でもサプライズがあるかもしれない。

「数少ないチャンスを決められる力をつけないといけない」と本人も繰り返し言い続けているが、20代になるまで日の丸とは無縁だった雑草アタッカーは無心で大舞台に挑んでいくはず。相手がドイツだろうが、スペインだろうが、「ワンチャンス決めてやろう」と無心でゴールへ向かっていける背番号14が日本代表の成否を左右するのは間違いない。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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