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昔と異なるメッシの「偽9番」全盛期ではない35歳がアルゼンチン代表を輝かせる【カタールW杯】

シリーズ:分析コラム text by 西部謙司 photo by Getty Images

容赦なく攻めるアルゼンチン代表にポーランド代表は…


 リードしたアルゼンチン代表は、じっくりとパスを回しながら時間を使うモードに切り替える。ディ・マリア→パレデス、アクーニャ→タグリアフィコの交代でメッシとアルバレスの2トップに。

 67分、アルバレスが2点目をゲットする。ゆっくりとポーランド代表の守備ブロックの外側を迂回するようにボールを回し、右から左ハーフスペースへ回したところでフェルナンデスが1人をかわしてボックス内のアルバレスの足下へつける。半身で受けたアルバレスは一歩中へ運んでマークを外し、寄せてきたもう1人のDFとの間を打ち抜いた。メッシの「偽9番」によって得点を期待されたアルバレス、マクアリステルがゴールしたわけだ。

 2-0となってもポーランド代表はリスクを負った攻撃をしなかった。裏のメキシコ代表対サウジアラビア代表の経過が伝えられていたのだろう。このままならフェアプレーポイントの差で勝ち抜けられる。前回大会の日本代表と同じ立場である。奇しくもそのときに日本代表と試合をしていたポーランド代表はすでに敗退が決まっていたので、日本代表の暗黙の談合に応じたのだが、今回はアルゼンチンが容赦なく攻めてくる。

 ポーランド代表は守備を固めて何とか失点せずに試合を終えた。メキシコ代表対サウジアラビア代表はサウジアラビア代表が1点を返したため、ポーランド代表は得失点差でグループリーグ2位通過となった。

 一方的に攻められ続け、最後は反撃も諦めて運に賭けた。攻撃では何も示せなかった第3戦だったが、必死の守備でグループリーグ突破を成し遂げた。

(文:西部謙司)

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【了】

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