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フランス代表はなぜ強かった? バラバラだったチームが準優勝に輝いた理由【W杯コラム前編】

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

フランス代表を襲った数々の不運



 前回大会優勝の立役者で、現代表の主軸だったエンゴロ・カンテとポール・ポグバのボランチ2人に加え、GKマイク・メニャンも負傷により大会前に不参加が決定。プレスネル・キンペンベと、ブンデスリーガで今季すでに12ゴールと絶好調だったクリストファー・エンクンクは、カタールに飛び立つ前の合宿中に、負傷により離脱した。

 なんとか現地に到着し、さあいよいよ、と思った矢先に今度はカリム・ベンゼマが腿痛を発症。今年のバロンドール男は、無念の思いでスペインに帰っていった。

 そんなこんなでようやく迎えた初戦のオーストラリア代表戦だったが、試合開始から15分もたたないうちに、リュカ・エルナンデスが膝の靭帯損傷の大怪我を負ってしまう。フランスはいきなり、手薄な左サイドバックの貴重な戦力を失った。

 それでもなんとか勝ち上がってきた彼らを襲ったのが、ウイルス感染である。ダヨ・ウパメカノとアドリアン・ラビオは準決勝のモロッコ代表戦を欠場したが、ラファエル・ヴァランは微熱を押して出場。イブラヒマ・コナテとキングスレー・コマンも発症し、一時は決勝戦には何人が健康体でピッチに立てるのかと危ぶまれた…。

 そんな状況の中で決勝まで進めたのは、このチームにあったかつてないほどの一体感が大きな要因だが、それを育んだことも含めて、MVPを選ぶならやっぱりデシャン監督だ。

 まず最初にびっくりしたのは、初戦のオーストラリア代表戦だった。

「デシャン監督はいったいどんな魔法を使ったのか?」と。

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