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まさにナーゲルスマン監督の思惑通り。なぜPSGはバイエルンに敗れたのか【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

ナーゲルスマン監督の狙い通りにさせてしまった



 ナーゲルスマン監督はハーフタイムでジョアン・カンセロを下げ、アルフォンソ・デイビスを投入。同選手を左WBに置き、コマンを右のWBに移した。

 右サイドに右利き、左サイドに左利きの選手を置くことで、バイエルンはサイドからよりスピーディーな攻撃を仕掛けることができた。たとえば前半、左サイドにいた右利きのコマンは右足にボールを持ち替えたり、縦に行くとみせかけて切り返したりし、PSGのDFに少しではあるが守る時間を与えていた。しかし、後半はそれがなくなり、早いタイミングでクロスやパスを放り込むことが可能となったのだ。

 サイドにスペースを与えるPSGにとってこれは脅威だった。実際、PSGは53分に陣形が乱れたところ(ウォーレン・ザイール=エメリが中央におり、右サイドのカバーが遅れた)でA・デイビスに質の高いクロスを上げられ、反対サイドのコマンに決められた。もし、このシーンで左サイドがコマンのままだったら、あのタイミングで逆サイドにクロスは渡っていなかったはずだ。

 ナーゲルスマン監督の狙い通りといった形で先制ゴールを献上したPSGは、57分にエムバペを投入。バイエルンもバンジャマン・パバールよりもスピードで勝るダヨ・ウパメカノを当てるなど対策してきたが、やはりこの怪物は止められず、それまでとは一転、バイエルンのゴールを脅かすようになった。依然としてドイツ王者の保持率は高かったが、エムバペという強烈な一発があるため、彼らからすると気が気ではなかったはずだ。

 ただ、PSGは肝心なゴールを奪うことはできなかった。73分、82分にはゴールネットを揺らしたが、いずれもオフサイド判定に泣かされている。結果として、狙い通りの一発を決めたバイエルンが上手だった。

 良くも悪くも、この試合はエムバペ1人の存在で大きく変わった。2ndレグでは、どのようなゲームになるだろうか。

(文:小澤祐作)

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