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約1万件のPKを分析して分かった「成功率100%」究極のエリアとは?【PK戦データ解析前編】

text by 佐藤祐一 photo by Getty Images

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サッカー日本代表はFIFAワールドカップカタールでPK戦の末にベスト16で敗退し、冬の全国高校サッカー選手権ではPK戦で決着がつく試合が多かった。PKをめぐる議論が巻き起こったのは記憶に新しい。季刊誌『フットボール批評issue39』で膨大なデータをもとにPK戦の本質に迫った佐藤祐一氏の論考を、フットボールチャンネルで一部抜粋して前後半に分けて公開する。(文:佐藤祐一)



究極の「PK成功率100%」

 普段私が主戦場としているYouTube チャンネルにおいて一昨年、一つの議題が生まれた。

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「PKの成功確率はどの程度なのか」というものだ。そこで、2014年以降の国際大会や欧州主要リーグにJリーグを含めたPKシーンの分析を実行した。その中から約1万シーンをランダムに無作為抽出した結果を見ていきたい。今回は図1のようにゴールの高さを3分割、横を5分割した15のエリアが存在すると仮定する。

 前提条件を伝えたところで結論から述べれば、図2となる。


図1


図2

・PK全体の成功率は約77.8%
・GKの守備範囲内(半円内)への蹴り込みにおける成功率は約52.2%
・ゴール枠内から半円を除いたエリアへの蹴り込みにおける成功率は約84.6%
・ゴール枠内①&⑤の最上段隅エリアかつゴール枠内への蹴り込みにおける成功率は100%
・ポスト・バー付近への蹴り込みにおける成功率は約55.4%

 基本的にPKは与えられた側に有利な展開であり、大量得点が発生しづらいサッカーという競技において1点の重みはとても大きい。1点しか決まらない試合や1点差、または同点の試合が圧倒的多数であり、PKが与えられた側にとっては決め切ることができれば勝利する(または敗戦を遠ざける)確率が跳ね上がる。逆にPKを与えてしまった側にとっては決められる確率が高いため、キッカーへのプレッシャーを与えながら、GKがセーブできなければ敗戦する(または勝利が遠ざかる)確率が高まってしまう。

 キッカー側がPKでどのエリアに蹴り込むことができれば得点できるか、と問われれば、上段の隅だ。1点の重みがのしかかる緊張した場面において、卓越した技術やGKと対峙した緊張局面にも耐えうる精神的な逞しさを兼ね備えた選手が①や⑤の上段隅エリアに蹴り込んだ場合、GKは対応のしようがない。

 特に2022/23シーズン以降はPK時のルールも改正され、「守備側GKは、少なくとも片足の一部をゴールラインに触れさせているか、ゴールラインの上方、または後方に位置させておかなければならない」となっており、GK側からすれば、相手キッカーの蹴るタイミングに合わせて瞬時に蹴る方向を予測、判断して飛び込む必要が生じている。そのため、キッカー側にスピードのあるパワフルなボールを上段隅に蹴り込まれれば、防ぎようはない。よって、PKにおける最高の選択肢は上段隅①⑤のエリアへ蹴り込むこととなる。

【後編はこちら】条件付き「PK成功率100%」のエリアとは? データが暴くGKのセオリー【PK戦データ解析】

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特集:眠れないほど罪深い「PK戦」の話
10年間ご愛読ありがとうございました

まずはじめに言っておきたいのは、「PK戦」は面白いものではない。ペナルティー=罰という名称からして、そこかしこにネガティブな要素が散乱している。いい例として、観ている側は「アイツ、決めそうだな」とは言わずに「アイツ、外しそうだな」と言う。サッカー好きでなくとも戦犯を血祭りに上げられる残酷なシステムが面白いわけがないのだ。
 それゆえ、特集企画のほとんどはネガティブなアプローチから生まれたような気がしている。冒頭のPK戦廃止論から始まり、脳のストレス、ルールのグレーゾーン……。そう、特集名どおり、まさに罪深い企画のオンパレードである。しつこいようだが、最終号となる本誌を読了したとて「PK戦」が面白くなることはない、と断言しておく。


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【了】

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