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チェルシー、855億円を使っても足りないものとは?レアルに完敗の理由【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

ビッグチャンスは作れたが…



 この試合でチェルシーは一貫して右サイドからの攻撃を狙っていた。その意図は守備にあまり戻らないヴィニシウス・ジュニオールの裏のスペースを使うこと。そして最前線のカイ・ハフェルツ、シャドーのカンテ、右WBのリース・ジェームズの3人で数的優位の状況を作ることにあった。

 11分には見事にヴィニシウスの背後を取る。左サイドでマルク・ククレジャとチャロバーがパス交換を行うことで、相手はスペースを消すためにこのサイドに人を圧縮した。その結果、マドリーの左SBエドゥアール・カマヴィンガも内側のポジションを取る必要があり、チャロバーのサイドチェンジのボールを受けたリース・ジェームズがヴィニシウスの背後を取ることに成功。大外で右WBがフリーとなる状況を意図的に作り出した。

 リース・ジェームズがグラウンダーのクロスを上げると、そのこぼれ球にカンテが反応。この際、カンテをトニ・クロースが見失っていたためフリーでのシュートチャンスだったが、左足のボレーシュートは枠を大きく外れた。

 前半終了間際にもチェルシーは右サイドを起点にビッグチャンスを作る。3列目のコバチッチがドリブルで持ち上がることで、3人の相手選手を自らに引き付けて、右前にいたハフェルツにパス。このプレーに対して当初はダビド・アラバがハフェルツのマークについていたが、カマヴィンガも食いついてしまったため大外のリース・ジェームズがフリーになった。

 そして11分のシーンのようにグラウンダーのクロスを送ると、ボールは左WBのククレジャへと渡った。ダイレクトで流し込むことができていれば、マドリーの守備陣の対応が遅れていたためゴールとなっていたかもしれないが、ククレジャはボールをトラップしてからシュートを放った。このわずかな時間で守護神クルトワにコースを限定されてしまい、ゴールを決めることができなかった。

 この2つのシーンのようにチェルシーはビッグチャンスを作れていた。それでもゴールを決めきれなかったのはストライカーの不在と欠場者の影響が大きかった。

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