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「アルテタはヴェンゲルに近過ぎる」“監督”アルテタのルーツを探る。「指導者としての資質は、当時から感じさせていたよ」

シリーズ:フットボール批評オンライン text by 結城康平 photo by Getty Images

アルテタが仕えた3人の名将

デイヴィッド・モイーズとミケル・アルテタ
【写真:Getty Images】



「モイーズ監督を人間的に尊敬しており、彼の価値観や選手の扱い方は素晴らしかった。彼はチームに文化を醸成し、選手間の化学反応を促進していく。それによってエヴァートンは、チームとして闘えるという確信を得ることになった。彼はハードワーカーとしても知られており、チームに常に100%を求めた。個人的には彼のチームでプレーするのは、とても楽しかったよ」

 2011年にはエヴァートンからアーセナルに移籍し、アルセーヌ・ヴェンゲルのチームでも中核として活躍することになる。ピッチ上の副官として的確なポジショニングでゲームをコントロールしたMFは、聡明な頭脳を評価されて引退後にマンチェスター・シティに加入する。ペップ・グアルディオラのコーチングスタッフとして最先端のフットボールを吸収すると、実力を認められて彼の右腕という大役を与えられることになる。特に個人選手の指導に定評があり、アタッカーがボールを受ける向きなどを熱心に指導し、効果的なプレーを習得させていた。

 選手としても監督としても常に深い思索によってキャリアを積み上げてきた男は、2019年12月20日に古巣アーセナルFCの監督に就任する。ヴェンゲル引退後にウナイ・エメリを就任させるも、チームのアイデンティティを確立することが出来なかったアーセナルの混乱を断ち切るべく、フロントはチームを知り尽くしたアルテタに白羽の矢を立てたのだ。

 フランク・ランパードやオーレ・グンナー・スールシャールのように、近年はプレミアリーグの強豪でも若手指揮官にチームを託すチームは多い。アーセナルのフロントの思い切った決断によって、38歳の青年監督が誕生した。

(文:結城康平)

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