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Jリーグ 7か月前

「そこしかない」ヴァンフォーレ甲府の決勝ゴール。ACLで繋がった3人のビジョンとは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

勇気ある決断とJ2勢初の快挙

AFCチャンピオンズリーグで初勝利を収めたヴァンフォーレ甲府
【写真:Getty Images】



 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)にJ2に所属するクラブが臨むのは、甲府が史上2チーム目となる。2004年度の天皇杯をJ1クラブとして制し、出場権を獲得した東京ヴェルディはJ2に降格した2006シーズンのACLに出場。申請書類の提出が遅れたインドネシアとタイのクラブが失格になる異例の事態のなかで、蔚山現代(韓国)との一騎打ちとなるグループFに臨んだ。

 しかし、ヴェルディはホームとなる旧国立競技場での初戦を0-2で、敵地での第2戦を0-1でともに落として敗退している。つまり、長谷川の一発はACLでJ2勢が決めた初めてのゴールであり、値千金の一発を守り切った甲府はJ2勢で初めての勝利クラブになった。

 甲府もまた、3回戦から5試合連続でJ1勢を撃破する世紀の番狂わせの末に、昨シーズンの天皇杯を制して今シーズンのACL出場権を獲得。敵地に乗り込んだ9月20日のグループリーグ初戦では、メルボルン・シティ(オーストラリア)と0-0で引き分け、J2勢による初の勝ち点を獲得した。

 迎えたホームでの初戦で、2シーズン連続でタイの国内三冠を独占しているブリーラムからゴールと勝利をもぎ取った。マン・オブ・ザ・マッチとして臨んだ会見で、「歴史的な1勝につながるゴールを決められてすごく嬉しい」と声を弾ませた長谷川も、実はJ2勢による初ゴールだったとは知らなかった。

 何よりも長谷川自身が、58分から途中出場したブリーラム戦でACLデビューを果たしていた。J1昇格争いが佳境を迎えているJ2リーグ戦と並行して戦うACLへ、篠田監督は過密日程のなかでターンオーバーを図りながら、ACLではリーグ戦の出場機会が少ない選手たちを中心に先発させている。

 左サイドハーフの主軸を担う長谷川も南半球への遠征には帯同せず、甲府に残ってエールを送った。

「もちろん(メルボルンに)行きたい思いはありましたけど、そこは監督と話し合って、リーグ戦もすごく大事なので帯同しない形になりました。それでもチームのみんなが頑張ってくれると信じていたし、アウェイの地であれだけ激しく戦って、勝ち点1を持って帰ってきてくれたのは僕としてもすごく嬉しかったですし、チームとしても大きな自信になったと思います」

 メルボルン・シティ戦が甲府にもたらした効果を振り返った長谷川は、ともに途中出場したクリスティアーノとホットラインを開通させ、手にした勝ち点3の価値に思わず表情を綻ばせた。2試合を終えて勝ち点4の甲府は、メルボルン・シティと並んでグループHの首位に立っている。

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