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Jリーグ 7か月前

「そこしかない」ヴァンフォーレ甲府の決勝ゴール。ACLで繋がった3人のビジョンとは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

ヴァンフォーレ甲府が負うハンデの大きさとは



「J2のクラブがACLに出るためには、天皇杯で優勝しなければいけない。なかなか実現しないことだと思いますし、だからこそ僕たちはJ2の代表として誇りを持って戦っています。J1を含めても限られたクラブが出場するなかで、甲府が1勝することとJ1のクラブが1勝することはやっぱり価値が変わってくると思う。グループリーグはあと4試合ありますけど、もちろんすべて勝つつもりでいますし、グループリーグを突破できたらまた新たな歴史が生まれますよね」

 ACLを戦っていく上で、J2のクラブはさまざまなハンデを背負うと言っていい。

 まずは戦力。J1の上位クラブと比べるとトータルでどうしても劣る上、甲府の場合は今シーズンからキャプテンを務め、開幕からリーグ戦で全試合に先発出場していた左サイドバックの須貝英大が、夏の移籍市場で鹿島アントラーズへ移籍。7月下旬に関口が新キャプテンに就任していた。

 過密日程にも拍車がかかる。年間42試合を戦うJ2リーグは、J1リーグよりも8試合多い。さらに3位から6位に入ればJ1昇格がかかったJ1参入プレーオフに進出し、ACLグループリーグの後半戦と重複する。甲府は残り5試合となったJ2リーグで6位と、プレーオフ進出圏内につけている。

 アウェイ戦の遠征費などを捻出していく上で、クラブの財力も問われてくる。Jリーグが毎年公表しているクラブ決算の2022年度版損益計算書を見ると、甲府の売上高15億6400万円はJ2平均の17億2800万円を下回り、J2の計22クラブのなかでも中位に甘んじている。

 対照的にともにACLに出場している浦和レッズ、川崎フロンターレ、横浜F・マリノスの売上高は順に81億2700万円、69億7900万円、64億8100万円でJ1の上位3位を占める。ACL出場クラブにはJリーグからACLサポート分配金1億円が支給されるが、それでも厳しい状況に変わりはない。

 さらに甲府の場合、本拠地のJITリサイクルインク・スタジアムが、背もたれ付きの観客席5000席以上などのACL開催要件を満たしていないため、ホーム戦の試合会場として使用できない難題にも直面した。クラブ側は熟慮を重ねた末に、東京・国立競技場の使用を申請して承認されている。

 旧国立競技場でJリーグの試合を開催する場合、使用料として1000万円から1500万円が設定されていた。新国立競技場のそれは旧来の金額をはるかに上回っているとされるなかで、独特のアフロヘアをトレードマークにする35歳のFW三平和司は、東京の中心でACLを戦う意義をこう語っていた。

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