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サッカー日本代表は「SBの優先順位があやふや…」スペイン人指導者が苦戦するサイドバックに提言【アジアカップ2023】

シリーズ:スペイン人指導者の視点 text by 川原宏樹 photo by AFC

指導者ならではの指摘「具体的な選手起用に関する明言は…」


【写真:2024 Asian Football Confederation (AFC)】



「日本にはサイドライン際でのプレーを得意とする純粋なウイングは少ないですよね。伊東純也や負傷している三笘薫は比較的に外でプレーするウイングといえます。彼らのようにサイドライン際に張ったポジショニングをするウイングが出場している場合には、内側へ入っていけるような特徴を持つサイドバックのほうが相応しいでしょう。いずれにしても誰が外側へ広げるようなポジショニングをするのかをマネジメントすることが大切です」

 攻撃をよりスムーズに潤滑させるために、サイドバックが取るポジションの重要性を説いた。そのポジショニングはときに相手のディフェンスラインと並ぶくらいの高い位置を取るべきだと付け加えている。

 起用する選手によってポジショニングを変更しなければならないと説明したアレックスは、ここで代表チームならではの難しさについて言及している。ベトナム戦やイラク戦では試合中に伊東が右から左へポジションチェンジした。そのことでサイドバックの役割も試合中に変わるということが起こる。こういったことは代表チームではめずらしくないという。

「代表チームはクラブチームに比べて活動時間が短くなるのは、周知の事実として認識されていることでしょう。それは日本にかぎらず、どの国の代表チームでも同じ。そういった活動時間の短い代表チームの特徴として、戦術を変更するときは選手交代に頼る傾向にあります。極端にいえば、出場する選手によって戦術は変わってしまいます」

「特長の違う選手を起用することで戦術を変えることになるのですが、活動時間も短いなかでの組み合わせにはどうしても即興性がつきまといます。その即興性がうまく働くこともあれば、そうならないことも多々あります。長く一緒に活動しているとはいえ、代表チームは年間で10数試合しか行いません。だから、代表チームには必ずといっていいほど即興性がつきまとい、成否両方の可能性を秘めているのです」

 そういった即興性がつきまとう代表チームだからこそ、さまざまな選手の起用法があると持論を展開した。

「具体的な選手起用に関する明言は避けるべきです。なぜなら、チームの外側にいる私たちよりも内側にいる森保一監督のほうが選手らのことを理解しているからです」

「監督はコンディションなどさまざまな事情を加味して選手を起用しています。たとえば、グループステージでは多くの選手を起用しました。決勝までを見据えてのことだと思われますが、単に疲労を考慮しただけでなく即興性によるマイナス要素を軽減したかったのかもしれません。このようにさまざまな思惑があってのことだと思うので、そういった起用が今後の戦いでうまく作用することを祈るばかりです」

 修正ポイントとは話がずれてしまったが、代表チームの本質を理解するうえでは欠かせないファクターについて、アレックスは言及した。

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